『空中ブランコ』　奥田英朗

2005.07.27

カテゴリ：本

「空中ブランコ」奥田英朗（著）『空中ブランコ』　著：奥田英朗

テレビドラマは、見てないのですが。
『イン・ザ・プール』という作品の続編らしいですが、
これもまだ読んでいませんが。

でも、楽しかった！
馬鹿馬鹿しくって。

精神科医、伊良部一郎のもとには、色んな患者がやってくる。
飛べなくなった空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のヤクザ、
義父である教授のカツラを取りたくてたまらない医者、
スローイングのできなくなったプロ野球選手、
書こうとすると強迫観念に囚われてしまう、女流作家。

彼らは、治して欲しい…！と伊良部の元を訪れるのだが
（「精神科」を訪ねる、というだけでも、かなりの勇気なのに）、
一番ヤバいのは、伊良部本人だった！

カバのような巨体を揺らし、お色気ムンムンの看護婦に指示して、
怪しいビタミン注射をするだけ。

空中ブランコに乗りたいとせがみ、果てはサーカスにまで出てしまう。
「取っちゃえばいいじゃん」と、昼寝中の教授のヅラを取ってしまう。
「印税生活がしたい」と、自作のハチャメチャ小説を押し付ける。

でもなぜか、患者たちはそんな子供みたいな伊良部を、
拒絶することができず、イライラしながらも、しぶしぶ付き合ってしまう。

なぜ？
彼のあけすけな性格のせい？
子供のような無警戒さのせい？

そんな伊良部に振り回されていくうち、
何かが引っかかって神経症になっていた患者たちも、
なんとなくフっきれたような気になっていく。

それでいいのか…？
治ったんだから、ま、いっか。

しかしほんとに、伊良部のような医者がいたら、困るけど。
ろくすっぽ話も聞かず、いきなり大きな注射をぶすっ！
だもん。

もし私が行ったら、何がしたいって駄々こねられるだろう…？