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カテゴリ:日替わり日記
今日の午前、借りていた本を返そうと図書館に行ってきました。 市立図書館の庭を抜けて建物に入ろうとしたときに、5歳くらいだろうか小さな女の子を連れたブラジル人らしい家族がいました。 用を足し帰ろうとするときも、その家族はまだその付近のベンチに腰掛けていました。庭の生け垣に囲まれた小春日和のなかで日向ぼっこをしていたのでしょうか。 当地もひと頃は日系ブラジル人が大勢いましたが、この不況でずいぶん少なくなりました。 この家族は平日の昼間にいるということは、仕事にあぶれているのでしょうか。 女の子は垣根の間と両親のあいだを行ったり来たりしながら、くったくなく遊んでいます。その仕草がとても愛らしくて、おもわずそこにたたずみ見つめていると僕の方を向いて、ニコッと笑いかけました。 僕は車に、人から貰ったリンゴがあることを思い出しました。 車からリンゴをもってきて、女の子に差し出しました。女の子はちょっと躊躇して、ベンチにいた両親のほうを振り向きました。 僕はリンゴを両親のところにもっていき、「おいしいと思いますからどうぞ」と押しつけるように手渡しました。 父親が「アリガトウゴザイマス」と言って受けとると、自分のズボンでぬぐい、女の子に食べなさいというように持たせました。 女の子はひと口囓ると「オイシイ」と微笑み、母親に差し出しました。 リンゴを受け取った母親はその上からやはりひと口囓り、女の子に返します。すると女の子はまたひと口囓ると父親に差し出し、父親もひと口囓って女の子に返すのです。 たったひとつのリンゴを分け合って食べている姿が微笑ましくて、なんだか胸が熱くなってくるものを感じ、車にのっていた全部のリンゴをもってきて、家族に渡してその場を離れました。 ほんとうはここで、経済の調整弁として使われている雇用ということについて語るべきでしょうが、それはここでは空々しく思えてしまいます。 社会の大きなうねりのなかで、吹きっさらしに追いやられても、愛情をわかちあって生きらる家族という支えがあるかぎり、この女の子も強く生きてゆくのではないかと願わずにいられませんでした。 励ましのクリックを お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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