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カテゴリ:日替わり日記
11月19日はボジョレヌーボーの解禁日ということですが、日本にもおいしいワインがあるのに、なぜわざわざフランスくんだりからワインを輸入しなければいれないんだ、と少しヘソを曲げていたんです。 ところが、息子が樽で発注してしまったもので、やむおえずワインパーティーを行いました。 いや、飲んでみると意外においしい。ぐびぐび飲みましたから、今日は少し体内に残り気味。 しかし若者を中心にしても10数人では18リットルのワインは飲みきれません。まだ半分ほど残っています、何ヶ月も置けるものではないのでこの暮れはワイン浸りの日々になりそうです。 ほとんどのメンバーはそのまま泊まり、今日の昼近くまでゆっくりして、現在は宴の後のしずけさ。 それでも、ぽつりぽつりと訪ねてくる人がいました。そのなかに、年に数回夫婦で食事に来ていた団塊世代の知人がいました。 定年を迎え、これからは旅行でもしながら悠々自適に過ごすよと話していた矢先に奥さんが脳梗塞で病院に運び込まれたのが、半年ほど前です。 その後、ご主人が一人だけで来たので、奥さんの様子を聞いたら、もうあまり病院に見舞いにも行ってないといいました。驚いて理由を聞いたら、「だって家内は植物人間です。私のことなど、まったくわからんのですから…」と言うのでした。 僕はちょっと衝撃を受けました。思わず強い口調で、 「奥さんは生きているんですよ。ながい夢を見ているはずですよ。子供のころのことや、あなたとの出会いのころのこと、そして子供さんのことなど、手を握って話しかけてみませんか。奥さんがよく口ずさんでいた歌などもあるでしょう。耳元で歌ってあげてみてください」 松本サリン事件の河野実さんの、妻への献身的な介護のことが頭にあったので、そのようなことを話しました。 これは河野さん夫婦の人生とくらべてもあまりにもむなしく感じて、とっさにでた一言でした。 そして今日のことでした。彼は僕をみるなり、前に立ち止まり、深々と頭を下げたのです。そして、「家内が、家内が……」と、言って次の言葉が出ないのです。 顔を見ると目を赤くはらして涙を溜めていました。 やがて喉からしぼり出すような声で、 「先ほどまで病院にいたんです。私が手を握り、話しかけますと、かすかにうなずいてくれました。植物人間じゃなくなったんです」 僕も胸が熱くなり、彼の手をしっかり握ってしまいました。男同士が手を握り合っているようすを、犬と山羊が不思議そうにみつめていました。 励ましのクリックを お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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