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カテゴリ:日替わり日記
友人に誘われて、南信州奥地にあるどぶろくの里に行って、一晩を過ごしてきた。 どぶろくとは、日本酒の原酒にちかいもので、甘酒の甘みのもとになる糖分がアルコールに変わったものといった風味で、まだ米つぶがあるのでガブガブ飲めるようなしろものではない。 しかし朝起きてみたら、ひとりあたり4、5合ほどは飲んでいたようだから、口当たりが良かったということであろう。 ともかくも囲炉裏端で、6人の男が口角泡を飛ばしながら、飲み、食い、語らってきた。真ん中に火があると話題が盛り上がるのはにんげんの性か。 語らった内容についてはあらかた忘れたが、陶芸家、版画家、モノ書きなど芸術肌の輩。僕にとって半分が初対面、同年代の人たちだからかみ応えがあった。 男の議論というものは、女性の話しや下ネタ気味の柔らかい話題から入り、だんだん専門分野、哲学的な話題へとすすむのが礼儀というものである。メンバーによってはごく稀にこの逆もあるが、それはとことんの下品に堕ちやすい。 昨夜の飲み仲間の男たちは、いわゆる「硬派」のタイプだった。 口数多く喋るほうではないが、けじめを重んじ、いい意味で自分の「男」の部分に敏感であり、プライドの持ち方も、こまかいことにこだわらず、それでいてギリギリの一線を踏みこえてくる者には容赦なく反論を浴びせる。 僕は酒のつきあいはほどほど自信があるが、話題を仕切るタイプではない。人の話をねじ伏せて口だしするような度胸もない。といいながら、友人によると意地は強いという。 同席したうちのふたりは高校時代からの同級生ということであった。 ことにそのうちのひとりは鼻っ柱が強く、なかなか理屈っぽかった。 芸術の絶対性というような、他愛のない話題にいちゃもんをつけ、口喧嘩寸前となり、あっというまに肉体の勝負へ持ってゆきかねないかの勢いであった。ごちゃごちゃした理屈より、そのほうが手っ取り早く、あとくされがないという発想なのか。 しかし、さすが肉弾戦にまではいたらない。たがいに年相応にということであろう。 国と国との関係で、ときに戦争で決着をつけようとする短絡な指導者がいるが、これもオトコのバカさかげん、勢いというものかも知れない。 女性の大半は、暴力なんて、と眉をひそめるかもしれないけれど、女の感覚とは別なところで、そうした男たちは言葉であれ肉体であれ、暴力を欲するときがあるようだ(と、人ごとみたいだが…)。 この点、女とはしやべる性、ではあるまいか。 ある人間の行動の是非について、許す、許せないからはじまって、あれこれと推測を働かせ、自分たちなりの分析を試みる。 一応の結論を引きだし、またふりだしにもどって、その人間の評価をくだす。これを、えんえんとやって、最後にはこきおろす。自分への批判に対しては、すこぶる弱く、感情的に陥りやすか。 その点、男はせっかちともいえる。ゴメンと謝って素直に反省してしまうか、とことん突っぱねて肉弾戦にもちこむ。 言葉というもののむなしさを知っているのは、男のほうなのかもしれない。 励ましのクリックを お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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