カテゴリ:高速路線バス
高速ツアーバス各社の乗合移行の支援作業は、停留所をおおむね確保できそれを出発時刻単位で各社に割り振り終わったら私の手を離れるかなと勝手に考えていたのだが、結局巻き込まれっぱなし。この「放っておけない」というかおせっかいな性格のせいでずいぶん損な役回りを背負わされてきたような気がして反省。とはいえ放っておけないものは放っておけない…そういう性格でなければ、コンサルタントという影の役割ではなく自ら事業をやっていたに違いなく、そう考えると、つまりは一生治らない、ということだろう。
もっとも、道路占用許可等の各種申請作業や、停留所標柱そのものの発注やら表示内容のデザインやらといった実務(と、それら実務を進めていく上での関係者間の調整。そっちの方が実は何倍も時間とエネルギーが必要)については私は関わらずに済んだ。自社の移行準備を進めながら業界全体の調整役も引き受けイッパイイッパイになっている業界大手数社の担当者たちには申し訳ないが、ようやくこのブログも更新しようと思えたのだから、少しは余裕ができほっとしているというのが本音である。 さてこのところ、乗合許可(または管理受託の許可)を取得する事業者の数だけをもって、<高速ツアーバスが半減>などと伝える報道が続いているが、まあ間違いとは言えないものの本質とは少し違うなと感じている。営業主体(企画実施会社。移行後は乗合許可事業者)の数はほとんど減っていない。ただ停留所の問題や車両の要件などが理由で便数は減少の方向にあり、特に繁忙日の続行便も含めた台数が減少することは間違いない。多くの媒体のご取材が継続しており、真実を伝えていただけるよう、真摯に対応を続けたい。 話は変わって、先日このブログにひとしさんから幅運賃についてご質問をいただいた。また西武バス等の池袋~新潟線、南海バス等の大阪~立川線、そして九州各社の島内路線など「既存組」高速乗合バスでも新運賃の導入が続いている。ちなみに前の2つは「発車オーライネット」の新機能を活用したもの。九州は14社局いっせいに基幹システムを京王の「SRS」に切り替え、同システムの優位性を活かしたもの。ただいずれも以前の法令下でも対応できなかった内容ではなく、したがって法令改正自体というより「一本化」による競争環境変化が背中を押した新運賃というわけで、大きな一歩と評価をしつつも、各社がさらに踏み込んで新制度を活用してくれることを期待している。 何度も書いたことだが、価格について格段の法的縛りがない高速ツアーバス業態においても、わずか7~8年前までは、せいぜい「週末は500円アップ」というような設定が主流であった。それが、ウェブ化の進展により、カレンダー型の価格表示から空席検索(乗りたい日の価格がずばり表示される)にメイン動線が変わったことにより価格の幅(上限と下限)が大きく拡大した。さらに、一度価格設定を済ませ予約受付を開始した後でも、状況の変化により価格を変更する(同じ日の同じ便の乗客でも、予約日によって価格が異なる)ことが当たり前になった。その結果として、よりアグレッシブな価格設定が可能になり高速ツアーバス各社の収益性は一気に向上した。 これと同様に、予約受付開始後も運賃が変動すること(ダイナミックプライシング)が高速乗合バスでも可能になった点こそ、このたびの新制度のポイントであり、「既存組」高速乗合バス各社による積極的な活用が待たれる。 では高速ツアーバスの真似をすればいいのかというとそうでもない。高速ツアーバス各社は、ウェブ予約が定着して以降に誕生、成長したから、利用者の側もウェブ予約・決済が前提である。むしろ、ウェブ予約以外の利用者を(会社によってはTDRのパッケージなどの比率が大きいところもあるが)無視してきたと言ってよい(と言葉にすれば冷たいようだが、ターゲットを選定することは何も悪いことではない)。また法令の縛りがあり事前予約・決済が必須であったから、逆に言えば当日の飛び込み客のことは無視できた。 一方で「既存組」はそうもいかない。スタッフばかりか乗客まで慣れきっている従来のオペレーションと整合を図りながら、ダイナミックプライシングを実現せねばならないのだ。 また、「既存組」の中で、ダイナミックプライシングの対象を長距離路線に限定して考える傾向が見られる。おそらく、高速ツアーバスが(様々な理由から)まずは大都市間路線、次に大都市と地方を結ぶ長距離夜行路線においてライバルとして台頭してきたから、それらの路線を守りたい、という思いが先立つのだろう。しかし、短・中距離の多頻度路線を後回しにしていい理由もない。 また運賃変動というと、「値下げ」「割引(特に早期予約・早期購入割引)」と決めつける方も少なくないが、普通運賃の見直しや往復割引の廃止などで、便によっては単価を上げることも考えられる。また、運賃は繁閑(乗車率、人数)だけに連動するものではない。乗車率が低くても高単価に設定すべき路線や日、便もある。 ダイナミックプライシングを含むレベニューマネジメントとは、<値下げによる新規顧客開拓手法>ではなく、<収益を最大化するための手法>である。そしてそこで得た収益を、さらに事業を充実させるための施策(わかりやすい例で言えば新車の投入とか車内サービスの向上とかさらなるプロモーションとか)に再投資する仕組みを作ることである。<ツアーバスが同じ土俵に乗ってくるから>というような消極的な理由で取り組むべきものではない。各社の現実の事業内容と、新制度をうまく組み合わせることが肝要なのだ。「既存組」高速乗合バス各社が、「ツアーバスの亡霊」におびえる必要は一切ない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.06.26 19:54:22
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