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成定 竜一~高速バス新時代~

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2013.06.30
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カテゴリ:メディア掲載情報
本日付の『産経新聞』朝刊の第一面、高速ツアーバスに関する記事でコメントを紹介いただいた。全国紙の一面、というのは初めての経験。ただできるなら、事故やら撤退やらといったネガティブな話題はもう卒業したいのだが。

なお先日も書いたが、本日の記事も含め各社の記事に書かれた事実は間違いとは言えないものの、少なくとも高速ツアーバスの運行にかかわる事業者数だけをもって高速ツアーバス事業全体がシュリンクするかのように紹介されるのは、ちょっと本質とは違う気もする。

今回の制度改正により、これまで貸切バス事業者として、高速ツアーバスの企画実施会社(旅行会社)から発注があれば高速ツアーバスの運行を担っていた会社の多くが、乗合バスの事業許可も貸切バス型管理受託の許可も得ず、結果として高速ツアーバスの運行から撤退することは一つの事実。しかし、それらの事業者の多くは、高速ツアーバスに限らず、観光つきのバスツアーや修学旅行、社員送迎など多様な貸切バスの仕事を請け負っていて、その一部が高速ツアーバスであったという会社が多い。特に、お盆や年末年始など高速バスの繁忙期は修学旅行や社員送迎などの仕事が少ない時期であり、ちょうどいい補完関係にあるということで、繁忙期のみ高速ツアーバスに顔を出す事業者が多かった。

今回の制度改正においては、貸切バス型管理受委託という新しい制度の下で同様の波動対応が可能になったはずであったが、関越道事故の後、制度の詳細を組み立てる際に、当初想定していた姿よりもかなり「硬い」運用となることが決まってしまった。一例を挙げれば、受託に使う車両にも乗合バス車両の要件(三方の行先表示、車内での次の停留所表示、降車ブザーなど)が求められる点。従来から、(「既存組」高速乗合バス事業者はおおむね乗合と貸切を兼業していたこともあり)自社内で貸切バス車両を高速バスの続行便として活用する際にはそれらの要件は求められていなかったから、この点は制度が後退したと言える。結果として、貸切バス型管理受委託は、波動対応が目的と言いながら、事実上、通年での委託が中心とならざるを得ない。

結果として、お盆などの繁忙期に続行便を手配することが困難になり(停留所のキャパシティなど別の要因もある)、これらの時期に高速ツアーバス(今夏からはそういう呼び名も使えなくなるのだが)を使ってくださっていた利用者にとっては、予約が取りづらい、早々に満席になっていた、ということが起こる。本日の産経でご紹介いただいたコメントはこの部分だ。

もっとも、常々述べているように、高速ツアーバスの年間利用者数は750万人(事故前年の数字)であるのに対し高速乗合バスは1億1000万人。わずか7%のシェアしかない。さらに首都圏~京阪神、名古屋、仙台を結ぶ大都市間路線においてこそ高速ツアーバスは高速乗合バスを逆転し大きなシェアを握るが、地方向け路線、特に短・中距離の昼行路線には高速ツアーバスはほとんど進出できていなかった。したがって、今回の制度改正で供給量が大きく減少するのは大都市間路線と、せいぜい、首都圏~青森県、北陸(富山県、石川県)などを結ぶ限られた長距離の夜行路線に限定される。

さらに大都市間路線とて、所定便は多少の減便はあるものの、普通の平日においてはもともと空席が残っていたのであり、乗車率が上がることはあっても「席が取れない」とまではいかない。結局、影響があるのは、繁忙期の大都市間路線に限定され、該当の利用者には心苦しいが、高速バス市場全体から言うと極めて軽微な影響である。

ただ、「需要量に合わせた柔軟な台数設定」が高速ツアーバスの長所であったことも事実であり、また貸切バス型管理受委託は「既存組」高速乗合バス事業者にとっても活用するメリットが大きい制度であるから、先に述べた車両要件の件も含め、今後はこれらの課題を乗り越える工夫が求められる。大学の学生向けシャトルバス(主に平日)に運用される貸切バスを高速バス仕様で導入し、週末は京王電鉄バスから貸切バス型管理受託を行なって新宿~松本線の続行便として運用している西東京バスの事例などは参考になろう。

また、高速ツアーバスからの「移行組」の顔ぶれを見ると、これまでの事業形態の違いなどから、今回の制度改正への対応には有利不利が見られる。安全意識の高低とは別の部分で、制度上、大きな変革を求められる会社はどうしても事業規模の縮小をいったん余儀なくされている。一方でさほど大きな変化なく新制度に対応できる会社は、事業規模を維持できそうだ。ついでに言うと、従来から高速乗合バス移行をコツコツと目指していた会社たちは、新制度への対応こそさほど苦労せず乗り切れるものの、停留所の確保が全体の枠組みの中に取り込まれてしまい目論み通りいかなかったりして、悲喜こもごも、横で見ていてかわいそうな例も少なくない。

とはいえ、ここで同業者にやっかみを言っていても何も進まない。一方で「既存組」高速乗合バス事業者も、記事を読んで、<そうか、ツアーバスは縮小するのか>と安堵している場合でもない。両者とも、真摯な姿勢でこの変革期を乗り切っていただきたい。特に高速ツアーバスからの「移行組」各社には、頼むから、せっかくここまで築き上げてきた移行スキームを壊すことのないよう、事故防止やルールの遵守、そして各種申請書類の早期完成を徹底してもらいたい。昨年の事故以来、文字通り寝る間もなく移行スキームの構築に関わってきた身としては、移行期限までひと月という最終局面を迎え、まさに祈るような気持ちである。





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Last updated  2013.06.30 17:05:11
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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