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長押 綴

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2011.11.11
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カテゴリ:🌾7種2次裏
煉獄の中で息をしている。








「しかし残念だよなあ、今から生まれる子は大人まで生きられないんだから」

シェルターに入れると思っていなかった。
娘をカプセルに入れられると思っていなかった。


だからといって言い訳するのはやめておこう。
何故なら僕は憎まれ役だから。

憎め、恨め、どうせ全て背負って死んでいく。


そうやって酔わないとやっていられなかった。


「なんでこんな時代に生まれてしまったのか」
「どうしてこんな世界に送り出さねばいけないのか」


その言葉はあっという間に僕の頭を蝕んだ。

美帆を愛おしむ気持ちも裏返った。
日に日に膨らむ名もなきその存在もー
どうして、と。
もっと生きる筈だったろう、と思わずには居られなかった。

いっそ何も知らなかったら幸せだったのだろうか。

いっそ何も知らなければ誰も殺さず誰も憎まずに居られたのか。


コールドスリープ。
選ばれた人だけを凍らせるその機械を全て燃やし尽くして回したい衝動に何度駆られたか。


「どうせ世界に殺されるんだ」
「それならその前に殺して食べさせて未来に繋ぐことは何ら不幸じゃない」

目の前にはラッキーが走り回っている。

ああ本当に……きれいに輝いているじゃないか。
僕達の気持ちなど知らずに。

世界のほうが間違っているなら、僕が間違うことだって何らおかしくないじゃないか。


「へええ…いいですね。

 幸 せ そ う で」



その時に実感した。


世界の黒幕というものなど実はないのだと。
あるとしたらそれは、人間の悪意だ。

「……安居。最終試験、注意力がテーマだ」



そうだ、間違うな。

「僕を殺せ」

そうだ、信じすぎるな。

「殺さないとまた襲う」

そうだ、一度でも何度でも汚れてそれでも這いずり回って生きればいい。

「未来に行ったらそういう判断を間違うなよ」


君たちはラッキーなんだから。



そう教えたことは優しさかーそれとも、知識を与えることであの後輩のように、白い子供を自分に近い色に染めようとする行為か。

それとも、一片でも未来に己たちの言葉を、想いを持って行かせたい願望か。








殺した、殺した。


茂を誰が殺した?


僕が殺した、7人にする為に殺した。

涼が殺した、安居を助けるために殺した。

安居が殺した、心配と傲慢と依存で殺した。

鵜飼が殺した、安居を憎むあまりに殺した。

狂犬が殺した、わけのわからぬままに殺した。

四銃士が殺した、引きずりおろして殺した。

源五郎が殺した、背中と綺麗な景色で殺した。

要が殺した、生き残った者に喰わせる為に殺した。






上げていけばきりがない。

さて、未来で君たちは誰を恨む。何を恨み、何を糧にする。


殺された子供の分を、大人になった君たちはどうやって生きる。





夏Bを、秋を、冬を、春を見てどう思う。




あの夏の炎天下の中。


あの夏が終わらない世界の中。





地獄に至る道を炙られながら落ち続けなお、思い返し続ける。





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最終更新日  2017.06.13 02:23:28
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