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長押 綴

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2017.11.01
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カテゴリ:.1次題
首切り役人の所には、首を切る事が前提の人間がやってくる。

ただし、実情を聞き出して、本当は大きく情状酌量の余地があると分かる時もある。

そんな時は逃がしてやるのだ。

勿論首を切る相手にはそんなことを教えるわけもない。





わたしの夫は首切り役人だ。

若い子にはもう少し茶化した言い方で呼ばれているそうだが、似たようなものだろう。

本当は優しい人なのに、毎日ギロチンを首に降ろすぎりぎりの所で止めている。

本当は優しい人なのに、部下には拷問を楽しんでいると勘違いされているようだ。

本当は優しい人なのに、善意でやった行動も笑顔も全て裏があると思われているみたいだ。

本当は優しい人なのに。

だから私は今日も夫に優しくし続ける。
ここぐらいでは、本当の優しい夫を抱きしめるために。









彼は本当は優しい人。


私の浮気を疑うのは、自分に自信がないからだ。
それは優しさと繋がっている。だから仕方がない。

彼は本当は優しい人。

私に毎日心を壊すようなことを言ってくるのは、外の社会で私がくじけないようにするため。
外で私がなんとかやっていけるように敢えて心を鬼にしてるだけなんだ。
それは優しさだ。だから受け入れないといけない。

彼は本当は優しい人。

首を切る時に嗤っているのは、その切った相手がそれ以上社会に悪影響を及ぼさないようにするためだ。それは正しくて優しいはずだ。
切る理由を少し大げさに言っているのも、切った相手のした抗弁や善行を全て無視するのも、全部正しくて優しいのだ。


彼は正しくて優しい。


だからそんな風に彼を見る私も同様に、正しくて優しいはずなの。





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最終更新日  2018.11.10 06:15:38
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