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カテゴリ:科学本
「量子コンピュータとは何か」ジョージ・ジョンソン(水谷 淳訳)(早川書房)
P87 量子チューリング・マシンは上下のスピンを持つ原子列で実現できる。古典的コンピュータでは百五十五桁の数の計算に「何十台ものコンピュータが何ヶ月もかけて処理しなければならず、数百桁の数の場合、何十億年もかけて、あるいは何十億台ものチューリング・マシンを使って計算しなければならなかった。」量子コンピュータの場合には単に原子列にキュビットを何個か追加して同時に処理をすればよいだけ。「量子力学はコンピュータに、時間的な近道を提供しているのだ。」ただし現段階で分かっている限りにおいて量子チューリング・マシンも「計算可能性」という点においては古典的なものと変わらないそうだ。 P91 セルラー・オートマトンをコンピュータとして使う例、例えば足し算をする機械として使う例が示されている。 P102 因数分解を行うためのショアのアルゴリズムの説明が簡単な例で解説されている。モジュラ算術を使う所まではよいが、そこにフーリエ変換のアイデアが入ってくる所がすごい。 P117 因数分解の困難さを利用した公開鍵の作り方、RSA暗号の話。実はこの分野にはとても疎いので「へぇ」という感じ。 P162 キュビット列を実現し、かつその各々のキュビットに演算を施すことを可能とするひとつの方法としてNMRが挙げられている。この辺はプローブ顕微鏡の世界で最先端の話題であるMRFMにも関係することなんだろう。 P167 スタンフォード大とIBMアルマーデンのグループが実現した実際の事例。7つの原子をもつ分子を合成し、それを用いて15という数の因数分解をショアのアルゴリズムに基づいて実際に計算させたということ。もちろんNMRを使って。そうか、知らなかったんだが世の中そこまでいってるんだ・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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はじめまして。OBネットから飛んできました。
量子コンピュータは、時間があれば本を読んでみたいと思っています。 分子に計算させるとは、相当難しいことをやっていますね。NMRと聞いて、昔いた研究室の隣の研究室を思い出しました。 量子コンピュータで因数分解できることを考えると、なぜ人間が因数分解できるのか、という問題を解く鍵にまで発展しそうで、面白そうですね。(^^) (2005年09月30日 00時13分18秒)
山下さん
>はじめまして。OBネットから飛んできました。 はじめまして。書き込みありがとうございます。 >なぜ人間が因数分解できるのか、という問題を解く鍵にまで発展しそうで、面白そうですね。(^^) その通りです。おそらくノイマン型コンピューティングの呪縛を逃れないとダメなんでしょう。DNAコンピュータもそういうノリです。ただ現在解けない問題をそれらの新しいコンピュータが本当に解けるのかという問題自身が大問題のようで・・・難しいです。 (2005年09月30日 17時42分49秒)
>謎様さん
それはそうと、OBネットのプロフィールを見ると、私と同じ年に学部に入学されているのですね。博士課程の方ですか?私は、修士課程中退です。 >その通りです。おそらくノイマン型コンピューティングの呪縛を逃れないとダメなんでしょう。DNAコンピュータもそういうノリです。ただ現在解けない問題をそれらの新しいコンピュータが本当に解けるのかという問題自身が大問題のようで・・・難しいです。 その辺の難しいことは、大学院の勉強を放り出してしまった(^^;)ものとしては難しいことです。DNAコンピュータは、量子力学も織り込んださらに高度な要素を用いたシステムである、と解釈すればよいのでしょうか? ちなみに、研究室では、DNAを含む、水素結合を持つ分子の量子力学的効果を考慮したダイナミクスの研究をしていました。(あんまり難しいことはわからないのでその辺はご容赦を(^^A;;)) (2005年10月02日 00時21分26秒)
山下さん
>それはそうと、OBネットのプロフィールを見ると、私と同じ年に学部に入学されているのですね。博士課程の方ですか? 私は88入学、97博士修了です。物理工学科です。 >ちなみに、研究室では、DNAを含む、水素結合を持つ分子の量子力学的効果を考慮したダイナミクスの研究をしていました。 面白いですね。私はナノメートルの世界のいろいろなことをやっていますがついぞ「量子力学」が必要な現象にであったことがありません。とっても古典的です。DNAコンピュータは私も詳しくありません。誰か詳しい人が書き込んでくれると嬉しいな、と。 (2005年10月03日 16時05分14秒)
>>ちなみに、研究室では、DNAを含む、水素結合を持つ分子の量子力学的効果を考慮したダイナミクスの研究をしていました。
> >面白いですね。私はナノメートルの世界のいろいろなことをやっていますがついぞ「量子力学」が必要な現象にであったことがありません。とっても古典的です。DNAコンピュータは私も詳しくありません。誰か詳しい人が書き込んでくれると嬉しいな、と。 実は大学院修士課程中退なので、量子力学もJJサクライくらいしかやってなくて、全然詳しくないです。元いた研究室の人たちなら凄く詳しいと思いますが‥‥。申し訳ありません。(--;) ナノの世界は、古典と量子の入り混じった世界ですね。元の研究室は、ナノレベルの理論物理学の研究をしているところで、半古典力学を研究している人もいます。要は、古典力学と量子力学の整合性と相違の混ざった理論ということだと思います。(すみません、このあたりはかなり理解不足なので、意味不明な文で申し訳ありません。) ナノレベルで古典的なアプローチの研究とは、どのような現象を対象にされているのでしょうか?よろしければ、研究室オフィシャルHPのアドレスなどを教えていただければ嬉しいです。 (2005年10月09日 20時05分21秒)
山下さん
> 要は、古典力学と量子力学の整合性と相違の混ざった理論ということだと思います。 そうですよね。ただし量子的コヒーレンスが失われないような状態にしてやれば、少し大きくてもなんとか見えるんですが・・・まあ室温じゃダメですね。 > ナノレベルで古典的なアプローチの研究とは、どのような現象を対象にされているのでしょうか? いやぁ、研究室では高分子をやっていておそらくお求めの内容にはなってないなと。たとえば高分子の一本鎖の両側を持って引っ張ったりしています。高分子は一本鎖で既に多数の原子の集合なので統計力学的対象物ですが、サイズはナノスケールで何か考えれば量子効果も出てくるんではないかと期待しているのですが・・・。学生が作っているページがありますが、研究の内容はほとんど載ってませんね~(汗) http://west.polymer.titech.ac.jp/ (2005年10月11日 10時14分23秒) |
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