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りらっくママの日々

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2009年12月08日
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今日の日記(「東京DOGS」「外事警察」感想とお歳暮?)




「ある女の話:カリナ36(彼の現実)」


もうオノダさんから電話はかかってこないだろうと思っていた。
私からも一切かける気はなかった。

最低な男だと思う。
大嫌いだって。
忘れようって。

なのに、心にぽっかりと穴が開いてしまったような空虚感があって、
独りになると淋しい気持ちになった。

「カリナ、何だか元気無い…?」

マッシーが心配したように私の顔を覗きこむ。

「ううん、大丈夫だよ。」

私は無理やり笑顔を作る。
でも、一瞬聞きたくなる。

マッシーはスギモト先生としてみてどうだった?
先生の態度、変わった?

でも、そんなの聞かなくてもわかるような気がした。
だって、二人は相変わらずのようだったから。

ホントは自分に起こったこと、全て話して楽になりたいけど、
言うことで同情されたりしたら、
自分が惨めになるようで嫌だった。

だから、オノダさんが言うように、
私が変なのかどうかも確認できなくて、
私を更に落ち込ませた。

それでもミキが言ってたことを思い出す。

「男なんて、やってみなくちゃわかんないわよ~。
変わるからね!
まあ、変わればそんな男はもう付き合わなきゃいいのよ。」

ホントだね…

私は軽く心の中で自嘲する。
それでもミキは付き合ってる。
きっと付き合わないって決めるのは自分で、
捨てられたワケじゃない。

私だって、
私だって、自分から捨ててやりたかった。
何であんな態度を取られなきゃいけないんだろう?

私は…

彼にとって何だったんだろう?


寝る間際に携帯が震えた。
妹がもう寝ていたので、ベッドの中で表示を見る。

見て固まった。
オノダさんからだった。

「はい…」

自然と声が冷たくなっていた。

「俺…」

「うん。」

私はあの態度から、別れの電話だろうと察した。
とどめを刺さなくてもいいのに…って思った。

「何?」

しばらく間があった。

「ごめん…
怒ってる?」

意外な言葉だったので、気がゆるんだ。
自分でも意外なことに、涙が出てきた。

「うん…」

涙が止まらない。

どうして今更謝ったりするのかな…

あんなに酷くて冷たい仕打ちをされたのに、
私の中のどこかが、
捨てられることを恐れていたんだと思い知った。

「泣いてる…?」

「ううん…」

「嘘だ…。」

無言でいるオノダさんの後ろ側で、
車が通るような音が聞こえた。

「今…どこ?」

「…オマエの家の近くのコンビニ。
会いたくなって…」

「すぐ行く。」

「うん…」

私が外の明かりを頼りに、
急いでセーターとジーンズに着替えて上着を着ると、
暗がりから「おねえちゃん出かけるの?」と妹の声が聞こえた。

「うん…」って言ったら、
「バレないようにね」って小さな声がした。

お父さんや弟のいびきが聞こえる。
私はそっと家を出た。

コンビニの前にオノダさんの車が止まってるのが見えて、
私が中に乗り込むと、
オノダさんが私をいきなり強く抱きしめてきた。

「ゴメン…。
俺、ホント、ゴメン…。」

私は返事をする代わりに、
抵抗しないですっぽりと抱きしめられていた。
目から涙が出てた。

あんなに悔しいと思ってたのに、
連絡が来たことが嬉しいなんて…。

自分で自分をどうしていいのかわからない。

「もう、俺のこと嫌いになった?」

「うん…。」

オノダさんは困ったような顔をして私を見た。

「やっぱ俺、オマエのこと好き…
好きだから…」

何で「やっぱ」って言葉が出てくるんだろ…
こんな人、大嫌い。

そう思うのに、抱きしめられた腕にホッとする。
自分をマゾじゃないかと思った。

コレがきっと、理想じゃなくて現実と付き合うことなんだって思った。


それがまず始まりだったと思う。
現実の付き合いは、
少しずつ甘い気持ちを私から奪って行った。

「実はさ…
俺、金使い過ぎちゃって…。
今日、うちで飯でもいい?
映画借りてさ。」

「うん、いいよ。」

今まで私としょっちゅう出かけていて、
ほとんどオノダさんが奢っていたツケがまわってきたことに、
ようやく私は気付いた。

そうして、会えば外食じゃなくて、
オノダさんの家でお弁当を食べるようになり、
そのうち、私がご飯を作っていっしょに食べることが多くなった。

「これ…
何か柔らか過ぎるんだけど。
茹ですぎじゃねーか?」

私が作ったミートソーススパゲティを食べて、
顔を不味そうにしかめたオノダさんが言う。

この前はヤキソバだった。
ヤキソバに水を入れたら、
水を入れたせいでヘニャヘニャだとか言って、
すごい不味そうな顔をされた。

その顔を見る度に、
何だか料理を作ったりするのが嫌になる。

「そう?
うちのスパゲティはこれ位の柔らかさなんだけど…」

ホントにそうだからしょうがない。
ヤキソバもそう。
うちは蒸すから水を少し入れる。
オノダさんちは入れないんだろうか…

「かかってるソースは美味いんだけどな…
もうちょっと固めにしてよ。」

そう言いながらも全部食べてくれるので、
まあいいか…と思う。

私が料理下手なのがいけないんだし、
しょうがない。

別に作らなくてもいいかもしれないけど、
お金に無理してたことを打ち明けられて以来、
オノダさんが自分の家に行きたがるから、
必然的にお弁当かお惣菜か自炊になる。

夕飯を食べて、
テレビをいっしょに観る。
そうするとすぐ、服を脱がされるようになった。

この前は、
「新しい服なの?」
って言うから、うん。って頷いたら、
「カワイイね。」
って即脱がそうとした。

抵抗したら、
まるでネズミをいたぶる猫みたいに、
すごく楽しそうな顔をして、
どんどん新しい服が剥ぎ取られた。

私は本気で抵抗してるのに、
男の力にはかなわないし、
アッと言う間に裸にされた。

悲しかったし、すごくムカついたから、
無表情で終わるのを待ってた。
終わってからもオノダさんは、
「そんなに怒るなよ~」とか言って、
怒った私を子どもみたいになだめて相手をしない。

もう、私が何をされても大丈夫だと思ってるんだろうか?
一度関係を持ったらこんなもの?

「もうヤダ。別れる。」

「ヤダね。絶対別れない。」

冗談を言ってるんだと思ってるみたいに、
オノダさんが背を向けた私の体を後ろから抱きしめる。

「オマエがカワイイ服なんか着てくるのがいけないんじゃん。」

オノダさんのこういうところに弱いんだと思う。
甘い言葉で機嫌を取るのが本当に上手い。

そんな言葉に誤魔化されるもんかって、
私は小声でヒドイ、バカ、嫌い…って呟いた。

私がこう言っても彼は絶対別れないだろうって、
私も心のどこかで安心してる。

「今日も帰っちゃうの?」

服を着る私にオノダさんが淋しそうに言う。

「うん…」

私は捨て犬を拾わずに残していくような、
後ろ髪を引かれるような気持ちで言う。

「泊まってけよ…。」

「無理だよ…。」

もう一緒にいるのが当たり前って思ってるらしいオノダさんが、
淋しそうな顔を一瞬見せるので、胸がチクリと痛む。

オノダさんは渋々私を家まで送ってくれた。

いつもなら、私を送ってから、
家に着いたって電話が夜かかってきて、
安心して眠ることになってた。

だけど、

その日はなかなか電話が来なくて、
気付いたらベッドで携帯を持ったまま眠っていて、
目覚ましの音で目が覚めた。

慌ててオノダさんに電話をかけるけど、
何度コール音が鳴っても出ない。

嫌な予感がした。




前の話を読む

続きはまた明日

目次





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最終更新日  2009年12月08日 18時53分57秒
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