ヤマトはアマゾンというババを引いた?
恐らく減益の大きな要素の一つであるアマゾンの仕事を引き受けたヤマト運輸は、ババを引いたのか? 最初からババではなかったと思う。 巨額の投資をした物流センターの稼働率を高め、償却を急ぐことも大事だった。 想定を超える成長振りをみせたアマゾン関連の物流業務は、機械化された物流センターの稼動率向上に貢献した。 だが、その先のセールスドラーバーが担う各戸への宅配業務を破綻させるほどの物量だった。 がんばれば凌げると思っていた業務量の増加は慢性化し、「今だけ」と考えていたサービス残業は恒常化し、労組が受入量削減を経営に申し入れるまでになった。 先の見えなかったヤマトHDの経営の不手際、あるいは不運。 ところで、記事を書いた山田氏は、佐川だけでなく、日通もヤマトも、市場の広がりの制約がみえる日本に見切りをつけ、海外事業展開に注力していることを知っているのだろうか? 佐川は企業間輸送が活発で、ヤマトは個人宅配に会社の方向性を変えて、「宅急便」に挑んだ経緯を知っての発言とは思えない。 ヤマトロジスティクス 海外展開でもヤマトは個人の小さな引越しに注力し、日通は通関業務、通運(異なる輸送手段を利用する一貫輸送)となる輸出入重視。 物を運ぶことにも、各々の得意領域がある。 SAGAWA が何でも解決してくれるわけではない。 ヤマト 業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき …佐川は放逐に成功 文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント 2017年3月8日 Business Journal …(略)… ヤマトの問題は実は上記のような総論での対策によるよりも、企業戦略的な選択で解決すると私は見ている。 それはずばり、顧客としてのアマゾンの放逐だ。 ●アマゾンというババをヤマトに引かせた佐川 ヤマトの「苦悩の元年」は2013年だった。 インターネット通販の市場規模は15年に約13.8兆円に達したのだが、12年には約9.5兆円だった(経済産業省調べ、以下同)。 10年からは年率10%程度伸びていたが、13年に約11.2兆円と対前年比で17%の伸張を果たし、「階段を上った」年となった。 ネット通販の雄といえばもちろんアマゾンだが、13年まではアマゾンの宅配は佐川急便1社のほぼ独占的な取り扱いだった。 しかし、アマゾンからの一個あたりの配送手数料の採算性が悪い状況を受け、あまりの宅配個数の伸張のために、佐川は手数料値上げの要請という交渉により、実質的に取り扱いを停止した。 宅配業界は、佐川のほかにはヤマトと日本郵便が大手3社を形成している。 15年の宅配便シェアはヤマトが46.7%、佐川が32.3%、日本郵便が13.8%と3社で90%を超えている(国土交通省調べ)。 佐川がアマゾンから撤退したのを潮時にヤマトと、一部日本郵便がアマゾンの宅配を受任して現在に至っている。 売上シェアを追ったヤマトと、利益を尊重した佐川、どちらが戦略的に賢い選択をしたのか。 ●賢かった佐川急便、ぬか喜びしたヤマト アマゾンと取引した最終年に当たる12年3月期の佐川のデリバリー事業は、売上が7,664億円だった。 アマゾンとの取引を中止したことで、14年同期の売上は7,094億円へと7.5%減衰し、16年3月期に至っても7,215億円とアマゾン時代まで回復していない。 ところが、佐川のデリバリー事業の営業利益は、12年の253億円から14年には363億円へと急伸張し、16年3月期は384億円と、対売上営業利益率5.3%で着地している。 アマゾンを手放したことにより、収益が大いに改善した。 佐川の場合は、「儲からない最大顧客」を果敢に放逐し、獲得した余剰経営資源で新しいビジネスセグメントに打って出た。 すなわち、企業間物流であり、国際物流だ。 …(略)… ヤマトのデリバリー事業の営業利益に目を移すと、12年の410億円から、アマゾンとの取引が開始された14年には359億円へと急落し、16年3月期は382億円程度と推定されている(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/2017年3月4日号>)。 トップが伸びたのにボトムが悪化する、このような状態を「悪手の経営」と呼ぶことができる。 ●ヤマトの取り扱い個数の2割がアマゾン ヤマトのデリバリー事業のなかで、アマゾンがどれだけの企業内シェアをもっているのか。 13年にアマゾンとの取引を開始した時の売上伸張が、当時の年商の4.2%程度だった。 これが、そのまま当時の「ヤマト内アマゾンシェア」とみることができる。 …(略)… 問題は、その最大顧客の単価が群を抜いて安い、ということだ。 ヤマトの平均運賃単価である570円台と比べると、アマゾンのそれは約250円と、半額以下とされる(横田増生氏)。 もちろんこれより安い大口顧客はいないとみられる。 ヤマトの顧客シェアとして、個数ベースで約2割、単価が平均の半額なので金額ベースでは約1割となるというのは整合性があるので、両方とも信じられる。 …(略)… ヤマトが手を引けば日本郵便が伸びるかと思ったら、日本郵便も単価の安さに辟易していたようだ。 アマゾン関連の宅配比率が低いので深刻な打撃とならなかったようだが、取扱量が増えれば、マイナス要因は大きく影響する。 日本の郵便が宅配料金値上げの検討に入ったとの報道があった。 日本郵便は大口料金をちゃあんと値上げしないと、ヤマト以上に深刻な収益の悪化、「規模の利益」の逆、全体収支に影響する程の「規模の損益」に見舞われるはず。 日本郵便も宅配料金値上げ要請検討 …通販大手に 2017年3月8日 読売新聞 インターネット通販の急増で配送や人材確保の負担が増すなか、宅配各社が対応に迫られている。 宅配便最大手のヤマト運輸は、今秋にも、個人を含めた荷物の宅配料金を全面的に値上げする方針を明らかにした。 消費増税時を除くと1990年以来、27年ぶりだ。 3位の日本郵便も、アマゾンジャパンなどのインターネット通販大手に対し、宅配料金の値上げを要請する検討に入った。 …(略)…