カテゴリ:本の感想(海外の作家)
マリー・ダリュセック(高頭麻子訳)『めす豚ものがたり』
~河出書房新社、1997年~ (Marie Darrieussecq, Truismes, P.O.L, 1996) 著者のダリュセックは1969年、フランスのバイヨンヌ生まれ。文学の教授資格を持ち、現在はリール大学の文学部教授でいらっしゃるようです。 本書の存在を、Michel Pastoureau, Le Roi tue par un cochon, Paris, 2015 (記事未掲載), p.81で言及されていることで知り、手に取ってみました。 香水店で働く「私」が、アクアランドで知り合った恋人のオノレと暮らしながら、ときに風俗まがいの仕事もしながらひたむきに生きていました。しかし、ある時から体に異変が起き始めます。少しずつ様子が変わり、ついには雌豚となり、野の花やどんぐりを食べたりするようになります。しかしときには人間に戻り、なんとか雌豚にならないように努力を重ねるのですが……。という概要です。 正直、いまの私には理解できず、きちんと本書の紹介ができません。ただ面白かったのは、カフカ『変身』のグレーゴル・ザムザのように、ある日とつぜん変身してしまうのではなく、少しずつ体に異変が起きることや、人間にも戻れるという点です。 また、「私」の一人称で物語が進むのですが、ほぼ会話がないのも特徴です。そして一つの段落が非常に長く、一段落=一節となっています。というんで、正直読みづらい印象でした。 ・海外の作家一覧へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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タイトルからして、昨今の性差解消の社会的な動きからすれば怪しからん邦題をつけたのが女性の翻訳者と知って安堵?した次第です。
のぽねこさんの明晰な頭脳にして「読みづらい」という印象を与えたという本書、カフカよりも不条理よりもリアリティで勝っている、という訳ですね。 映像化、視覚化されたら面白い作品という意味では、昨今のライトノベルに通じるものもあるのかなと想像いたしました。 (2017.10.22 10:13:05)
コメントありがとうございます。
衝撃的な邦題ですよね。原題はtrui(雌豚)とtruisme(自明の理)をかけたタイトルということで、内容からいってもこの邦題は英断だったと思います。 購入履歴に残るのがややためらわれましたが(笑)、分からないなりにも挑戦してみて良かったと思います。 フランスでは、デビュー作にして、最大級の賛辞を次々と得たという、かなりセンセーショナルなデビューだったようです。 また、フランスで映画化の話もあったそうですが、結局断念されたとか。それだけ原作の持つすごさもあると思うのですが、もしも映像化されると、(うまくいけば)かなり衝撃的な作品になるのでは、と思います(失敗したら惨憺たる結果になるでしょう…)。 (2017.10.25 22:03:41) |
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