ミルトン・エリクソン博士のこと
私の盟友の一人にカウンセリングのエキスパートがいて、彼の研究対象の一つが「無意識」と,もう一つがいわゆる「困ったちゃん」。数年前まで私の周りにもこのタイプの人がいて、「困ったなあ」と皆で言っていたのですけど、どうしたものか彼に相談したことがありました。いくつかの具体的な質問をするようにアドヴァイスされ、実際にしてみたら想定通りの答え。それを伝えると「見つけたー!!!」と無邪気に大喜び。収集家が「幻の****」といったものを発見したとき、こんな反応するんだろうなと思いました、はい。その困ったさんは離婚して子供を抱えていて、最初は同情され暖かくされるのですが、やがて周りがその親子に振り回され始めました。馴染んでくると場の空気を読まない、というレベルを超えて、もうその人の子供が世界の中心で、周りもそれに従うべきという考えが、「無意識の中」にドラゴンとして棲みついていたようでした。そして価値が異なったり、自分の考えに反する人や事態に遭遇すると、機嫌が悪くなり、時として人前で感情が爆発してしまうのも特徴。映画「ミザリー」ってご存知ですか?そんなことですので、人生でなんども転職する羽目に。そんな、精神病ではないけれども、問題のある人が最近増えてきているそうです。なんでこうなんだろう?と友人氏聞いてみましたところ、「生育環境」との明確な答え。私の関知しない私生活でもいろいトラブルを抱えているようで、あるとき、その人の知り合いという方から警告めいた匿名の電話が来たり・・まあ情緒も不安定気味で、突然笑い出したり、不機嫌になったりと、周りの人も「気味が悪い」と思い始め、エキスパートの友人に相談したというワケ。「んで、どうしたらいいの?」と聞いたら、「専門家に任せるしかないよね。治すのに数年かかるけど。」「・・・・・」「それか、係わらないこと!」自分で自覚がないだけに、難しいのだそうです。そうなのか、と思っていたら、あることがきっかけであちらのほうから去っていきました。一同ほっと胸をなでおろしたのを覚えています。なんでこんな話を書くのかというと、これをきっかけに「人の心」というものにとても興味を覚え、彼との個人レッスンを通して得た知識が、自分の診療スタイルに大きな影響を与えてくれたから。どう影響を与えたかって?ここからは友人氏から学んだ心理療法のお話の受け売り。人がどう育ってきたか?によって現在や未来が決まるという考えは一般的だし、過去の原因にフォーカスを当てたフロイト以来の、伝統的な精神医学の考えにも通じます。でもその友人が紹介してくれて、私も敬愛する精神科医ミルトン・エリクソン先生は、これとはまったく逆のアプローチで、心理療法の世界をひっくり返しました。それは「過去のことはどうでもいいから、未来を思い描いて、それにむかって患者さんが歩き出せるように、それを手助けしよう」というもの。Solution Focused Approachといいます。歯科医師をしていると伝統的西洋医学に従って、ついつい原因を探って、それを除去することにより治癒を目指しますが、エリクソン的な発想で治療を行ってもうまくいく患者さんがとても多いことに気づきました。私の診療室ではそれらの考え方がブラッシング指導などで発揮しています。参考エリクソンアプローチに興味がある方がいらっしゃったら、ぜひ下記のサイトに遊びに行ってみてください。http://dialogue-technology.com/