テーマ:海外生活(7787)
カテゴリ:我が社のないしょ話
7月17日(日)
この日わたしたちは名残惜しかったが、リミニから旅立たなければならなかった。 おっとは月曜日から出勤であることをひどく気にして「早朝に立とう。」という。 えええええ~~~。。。。 だったら、結婚式が終わって自腹でもう1泊した意味がないじゃん。 夏になると毎週末はミラノ⇔リミニの道が混雑する。 金曜の夜は都会から海に行くクルマで溢れ返り、日曜は帰るクルマの波というわけだ。 わたしは日曜日は夜遅くまでリミニに居て、渋滞が減ったのを見計らってミラノに深夜に帰りたかった。そうすればこの日はまるまる夢のようなリミニで過ごせる。 しかし、唯一の運転手のおっとは渋滞が始まる前にさっさとミラノに帰って家で次の日までに休憩を取りたかったらしい。 こういう場合は悔しいが、運転手の意見が重視されるのだ。 わたしはしぶしぶ、おっとは早く出発したい一心でアセアセしながら、チェックアウトをしたのだった。 チェックアウトカウンターでキャッシュカードを出す。 チェックアウトカウンター「すみません、うちは現金のみになります。」(←ちなみに3つ星ホテル) げ?なけなしの現金を財布をはたいて払った。 これで手持ちの現金はなくなった。で、しかたなしに銀行にお金を出金しにいくはめになったのであった。 まだ日差しのきつくない商店街を歩くと、前日結婚式で一緒になったアンナの親戚たちが優雅に道路沿いのカフェの外のテーブルで朝食をとっている。彼らはここからさらに2週間リミニに滞在するのだ。 いいなあ。。。 挨拶を交わして、さらに歩くとやっと1つ銀行が見つかった。 キャッシュコーナーに並んでいると「いくきーと!」とミリアム家族がやってきた。 彼女は我々とは別のホテルに泊まっていた。 実を明かすと彼女は「招かれざる客」だったのである! 去年のあの事件以来、わたしたちと彼女の距離は平常を装いつつも、やっぱりかなり離れてしまった。 しかも彼女が産休に入る直前にはペアを組んでいたアンナと仕事の引継ぎでかなり揉めたらしい。 それでアンナは結婚式前に「産後で大変だろうし、来れたら来てね。」と取り合えず社交辞令だけして正式に彼女を招待しなかった。 なので当日突然教会に現れた彼女を見て、アンナとラケーレとわたしでかなり驚いたのである。(彼女は式の前日の金曜日にミラノの会社を訪れて式場の情報をゲットしたらしい。この日はすでに旅立っていたわたしたちは知る由もなかった。) ミリアム「偶然ね!ちょっと聞いて、ひどいのよ。わたしたちが泊まったホテルったらキャッシュカードもクレジットカードも駄目で現金しか受け付けないのよ。まったくイタリアって不便よねえ。」 同じだ。どうやらリミニのホテルはみんな現金払いばっかりらしい。 ミリアム「これからどうするの?わたしたち、誰かと一緒に海に行こうと思ってさっきラケーレに電話したんだけどまだ寝てるみたいなのよ。ねえ、一緒に行かない?」 おっと「。。。悪いけど、もうミラノに帰らないと明日仕事だし。」 ミリアム「大変ねえ。うちはジョルジョ(旦那の名前)が2ヶ月休暇を取ったからこのあと、トスカーナの別荘に行くつもりなんだけどね。」 はああ、結構なことでございますなあ。わたしたち庶民はそんなことが出来ないんざますの。 わたしたちはそういうミリアムに少しの悪気もないことは百も承知なのだが(←彼女はドイツ貴族の末裔)、ちょっとムッとしながら彼らと別れたのであった。 ここからわたしはどうしてもすんなりミラノに帰りたくない。 そこで、「ガイコクに行こう!ガイコク!!」とおっとに提案する。 おっと「ガイコク~~ぅ?」 そうなのである。リミニからわずか15kmほどのところにイタリア半島にありながら、イタリアではない「サンマリノ共和国」があるのだ! サンマリノはローマのバチカンに次ぐ小さな共和国だ。ここの中心は大きな城壁に囲まれた要塞である。 国境には税関とかもあるし、タックスフリーの電気屋さんなんかもある。 サンマリノのクルマのバックナンバーは国旗同様、水色に冠と3つの塔のデザインが入っていてとても可愛い。 おっとは「じゃ、さっと見るだけね。」と言って、国の中心の観光地化された要塞に向かったのだった。 城門をくぐる。要塞のてっぺんには3つの塔がそびえたっている。わたしたちはこれを目指してひたすら坂を登った。 おもしろいのはこんなおもちゃのような国なのに、ちゃんとパスポートにハンコを押してくれたりするところだ。 ここはパスポートなしでも入国できるのだが、観光客向けにこんなサービスもしているらしい。 サンマリノの名産は色とりどりの切手である。 こんな絵葉書みたいな切手もある。切手コレクターには楽しい国だろう。 わたしも数枚買って、家に帰ってからはがきに貼って日本の友達に送ろうとした。だが、イタリア国内からじゃ、送れないことにこの時はじめて気がついたのだった。アホである。 「さっと見るだけ」が、写真を撮ったり、お土産物屋を物色しているうちに時間があっという間に過ぎた。 わたしたちは急いでクルマに向かう。。。。 「いくきーと!!」 誰かが呼ぶ声にびっくりして振り返るとそこにはまたもやミリアム家族が立っていたのであった。 ミリアム「もう、なんて偶然なの!?わたしたちリミニで誰も一緒に海に行く人がいないからここに来たのよ!あなたたち、とっくにミラノに帰っちゃったと思ったわ。」 ふう、やれやれ。。。まったく偶然だ。 日本人とドイツ人はメンタリティが似ているとよく言われる。 どうやら、思考回路までが一緒だったようである。 おっと「。。。今度こそミラノに帰らなくちゃ。」 とみんなで記念写真だけ撮って、(ミリアムはずっと一緒に行動したかったみたいだけど)早々に立ち去ったのであった。 こんな寄り道をしてもまだ午前だったので、ちっとも渋滞どころかクルマがまったく走っていない高速道路をリミニからボローニャへと駆け抜ける。 「あ~あ、こんなに渋滞がないならもうちょっとゆっくり出来たのに。。。」とブツブツいうわたしにおかまいなくおっとはさらにボローニャからミラノへの高速に入った。 ボローニャからはさすがに各地からのクルマが集まってくるだけあって少しクルマが増えてきた。 おっとはガソリン代の節約と、少しでも早く走るためにかんかん照りだというのに冷房のスイッチを切ったので2人で汗だくである。 わたし「ちょっと一回休憩しない?トイレに行きたいよう。」 おっとはため息をついてサービスエリアに進入する。おっとは何がいったいそうさせるのか、がむしゃらに早く帰りたくてたまらないらしい。 わたしが用を済ませ、冷たいジュースを買ってクルマに戻るとうちのもんで男くんのそばには立派なシャコタンのBMWのオープンカーが留まっていた。 わたし「ステキねえ。。。誰かあんなオープンカーでデートしてくれないだろうか?」とおっとにボケてみる。 さすがに南米人のおっとは関西人のように突っ込んではくれず、チッと舌打ちして「何言ってるんだよ、早く行こう!」とクルマに乗り込んだ。 関西人をおっとに持たない妻は物足りなさを感じるひとときであった。 再びクルマがスタートした。 ボローニャ、ミラノ間の高速道は広く3車線あり、わたしたちは一番速い車線を時速150kmほどでひたすらまっすぐ駆けていた。 と、後ろの真ん中の車線から近づく影に気がついた。 あ、あのサービスエリアにいたBMWだ!と思ったときにはすでに遅し!! ガガガガガガガガガガガガガガガガギギギギギギギギギギーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!! 完全な自殺行為である。まるでわたしたちが見えないかのようにわたしたちの車線に、わたしたちのクルマに、すごいスピードで突っ込んできたのである!!! そのときのビジョンはまるでBMWがコマ送りにゆっくりとわたしの肩にしなだれかかってきたような感覚だった。そしてゴムの焦げるすごい臭いですぐに我に返ったのだ。 おっと「だ、大丈夫、いくきーと!!??」 速度を落として、というより速度が急に落ちてもんで男くんとBMWが道路わきに留まった。 あのBMWからはサングラスをかけたどこぞの坊ちゃん風のおっさんが颯爽と降りてきた。 おっともすぐにクルマから降りる。わたしは降りようとしたが、助手席のドアがへこんで開かない。 バンッ!と思いっきり蹴ると「ゴギッ」と大きな音がしてやっとドアが開いた。 おっさん「。。。あんたら、ぼくのクルマにいったい何をするんだよ?!」 はあ?おっさん、熱射病かい!?どう見てもあんたから勝手に突っ込んできたんだろうが!!?? わたしとおっと「あなたこそ、どこ見て運転してるんですか?いったいわたしたちを殺す気だったんですかっ!?」 おっさんはどうやら、ガイジンの若造カップルだと見て試したらしいが、わたしたちが口から炎を出しているのを見て簡単に観念した。 おっと「。。。示談にしましょう。」 おっさんはため息をついて胸のポケットから立派なモンブランの万年筆を取り出して書類に書き込み始めた。 おっとは鬼のような目で見守っている。ヘタすると我々が加害者のように書かれるかもしれないからだ。 おっさんが書き終わって「もう行ってもいいだろう?」と聞くのだが、「ちょっと書類をコントロールする間、待ってください。」と目を皿のようにしてチェックするおっと。 その間、自分のBMWの傷を確かめるおっさん。 おっさんのBMWの車体も派手にへこんでいた。 わたしは真昼間に高速道路のど真ん中で汗をだらだらかきながら見守るだけである。 おっと「。。。いいでしょう。行ってください。」 おっさんはうやうやしく我々と握手を交わし、クルマに乗り込んだかと思うとあっという間にすごいスピードで走り去ったのであった。懲りないやつである。 おっとは傷の具合をチェックする。そして哀しそうにクルマをスタートさせたのだった。 いろいろ走りながらどこか他にも壊れてないか試したのだが、幸いにもおっさんがぶつかってきた助手席のドアだけで被害が済んだようである。 わたし「もちろん、これっておっさんの保険でカバーされるんでしょ?」 おっと「。。。。わからない。」 ええ?どういうこと?? おっと「たぶん大丈夫だと思うんだけど、書類に記載されてることでよくわからない項目が何個かあるんだよね。。。」 あああ~、そうなんだよ、そうなんだよ!! いくらイタリア語が上手になっても普段使わないボキャブラリーが出てくるとお手上げ、ってことがどうしたってあるのが、ガイコク暮らしの外国人の哀しいさだめだ。 せっかく今までうまく行っていたリミニ旅行のるんるん気分が一気に害された帰宅となったのであった。 いやしかし、あのとき、わたしたちの後ろに後続車がいなかっただけでも連発事故が防げて「不幸中の幸い」だったか?? とんだハプニングで幕を閉じたリミニ旅行だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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