JCS専門医試験ー2009-3
僧帽弁閉鎖不全について正しいのはどれか(2つ選択)1. 非リウマチ性のものが多い2. 逆流部位の判定には左室造影が優れている3. 前尖逸脱によるものは形成術の成功率が高い4. 代償期では左室拡張末期容積のみが増大する5. 虚血性心筋症において前壁梗塞例での合併が多い(解説)僧帽弁閉鎖不全症の原因としては、粘液腫様変性をきたす僧帽弁逸脱症候群が最も多く、日本では成人の4~5%である。僧帽弁逆流の判定には経食道エコーが最も優れており、とくに形成術を行う場合は必須である。僧帽弁形成術では、病変部位を切除、縫合するresection and suture法が最も使用頻度が高く、遠隔成績もよい。主に後尖逸脱例に施行される。前尖逸脱例にはPTFE sutureを用いた人工腱索が施行されることが多いが、技術的に難易度が高い。多くの症例で僧帽弁閉鎖不全は徐々に進行する。左室の前負荷が増大し、後負荷は不変かあるいは多くの場合低下する。容量負荷の代償機転として、左室拡張末期容量および左室心筋重量の増加が起こり、左室拡大は存在するが左室壁厚は正常に保たれる。虚血性僧帽弁閉鎖不全症は、1. 腱索断裂によるもの、2. 乳頭筋断裂によるもの、3. これらの断裂がみられないもの、の3種類がある。腱索断裂によるものは殆どなく、乳頭筋断裂は急性心筋梗塞に合併する。後乳頭筋は右冠動脈か回旋枝のどちらかによる単独支配のため後乳頭筋断裂が75%を占め、後下壁梗塞に多い。慢性の虚血性僧帽弁閉鎖不全ではこれらの断裂がみられず、左室拡大に伴い外側へ変位した乳頭筋が、僧帽弁尖を強く索引し、弁尖の可動性を低下させ、その閉鎖を妨げるために起こるとされる。正解1、4