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カテゴリ:わくわく児童文学
小野不由美の幻の作品と言われていた〈悪霊シリーズ〉のリニューアル版第1巻を読んだ。
○ストーリー 麻衣が通う高校には,解体工事を始めると必ず事故や事件が起きるために,空っぽのまま残されているとされる木造の旧校舎があった。そこの調査をしていた〈渋谷サイキックリサーチ〉の機材を,麻衣は偶然壊してしまったために,所長の渋谷を手伝って,旧校舎の謎を探ることになる。だが早々に怪事件が発生し,彼らは・・・ ------------ 小野不由美と言えば,しばらく前は〈十二国記〉,最近では「屍鬼」が話題のファンタジー,ホラー系の人気作家だ。彼女がデビュー直後,文庫本で出版した〈悪霊シリーズ〉は,そのジャンルでは人気が出たものの,長い間絶版だった。 今回,メディアファクトリーから復刊される際には「20年ぶりのリニューアル復刊」として一部で話題となった。 ------------ さて,ほとんど事前の知識を入れずにこの作品を読んでみたが,女子高生の一人称で物語が進み,美形の青年と出会い,会話が主体でどんどんと進む,という構成は,まさにヤング・アダルト向け小説そのままだ。 ただ面白いのは,ホラー作品なのに,登場人物たちがひじょうにロジカルな考え方や鋭い観察力を発揮して,どんなに怪しい事体でも超常現象的を否定する方向にあることだ。 怪談のオリジンを探るために昔の新聞記事をあたったり,ビデオとマイクで現象を記録したりと,なかなか合理的な〈ゴーストハント〉を行うのだ。 なるほど確かに変わっている。この不思議なバランスがこのシリーズの特徴なのだろうか? ------------ 女子高生・麻衣の一人称で語られるために,渋谷はナルシストの〈ナル〉,坊主の滝川は〈ぼーさん〉,祈祷師の松崎は〈巫女さん〉と呼ばれている。分かりやすいのは確かなのだが,どうしても文章が軽くなってしまう。 それと隣り合わせに,怪現象の描写が妙に冷静で克明な文章で表現されているのが,やや違和感がある。小野不由美の文体は,本来こちらなんだろうけど。 ------------ 残念ながら,それほど大人気になるほどの魅力は,今のところ感じられなかった。とは言え,続けてシリーズを読んでみようと思わせる何かはあった。 今後に期待だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.08.26 12:04:39
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