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カテゴリ:わくわく児童文学
今年知った作家の中で一番評価の高い三羽省吾の野球小説を読んだ。
○ストーリー 災害が理由で村全員で町での仮設住宅暮らしをしている蜷谷村の蜷谷高校・通称ニナ高野球部は部員たった9人で構成されている。だが彼らが仮住まいをしている町の私立圭真高校・通称K高こそは,選抜で甲子園に出場した野球の名門だった。ニナ高はK高のグラウンドを利用して,合同練習を始めるが,ニナ高のピッチャーは衝撃的な逸材だった。やがてライバル心をむき出しにしていた少年たちは・・・ ------------ 面白い! 出勤して定時前に会社の食堂で読んでいて,仕事を忘れて熱中して最後まで読んだ。 型破りなニナ高,完成度は高いが覇気が欠けているK高。たまたま知り合いだった2つの高校の監督は,互いのチームを成長させるために合同練習をさせる。 設定だけならば「どっかで読んだマンガに似てる」と思うのだけど,仮設住宅で暮らす蜷谷村の人々,ナンパもケンカもする現代的な高校球児,彼らが巻き込まれる事件など,世界観が広がり,それでも夢中に読ませてしまうのは,さすが三羽省吾だ。 ------------ 最初は,実際は野球の試合が描写されない,とかもっとひねった作品になるのかと思った。けれども1/3過ぎからはニナ高野球部も復活して,K高と共に甲子園を目指して練習を始める。 2つの野球部は,災害支援の特例としてグラウンドを共有する。ニナ高のバッテリー・コーキとモウは,K高の理にかなった鍛え方に,K高のバッテリー狭間と矢中は,ニナ高の瞬発力・破壊力に,それぞれ刺激を受ける。 蜷谷村,ニナ高とK高の野球部,これらの人々の数ヶ月が三羽省吾の筆で,コミカルに,そして立体的に描き出される。 ------------ 最後の事件の部分はホントどうなってしまうのか心配した。 ------------ 三羽省吾の作品の中では,まとまりがあり,エンターテインメントとして素直に楽しめる。若い読者も大丈夫だ。 オススメだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.12.08 15:06:37
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