PLANET EXPERIENCE! BY Records-Records

　どうもこんにちわ　ブレイキー朝田です。”朝田”と名乗ってますが、実は低血圧なもので、朝は滅法弱いです。おかげで早番の時なんか、何度遅刻したことか・・・・あ、ウチの社長には内緒にしといて下さいね。

　さて今年はビル・エヴァンスの没後25周年ということで、メモリアルCDなんかもリリースされたり、音楽雑誌でも特集記事が組まれたりと、盛り上がる気配を見せております。そんな影響もあってか当店でも最近は、ビル・エヴァンス関係のCDやLPが品薄状態になっており、以前は「決して在庫のなくならないアルバム」であったリバーサイドのportrait in Jazzやwaltz for Debbyなんかの国内盤LPも、ちょっと品切れしている状態です。今でしたら高価で買取りしますよ？（ちょっと宣伝　その１）。

　ちょっと中古レコード屋らしく、あまり知られていないビル・エヴァンスのアルバムをここで紹介してみようと思ったんですが・・・そこでハタと困ってしまいまして・・・・。最初にアタマに浮かんだのはPOP+JAZZ=SWINGというAudio Fedelity社のアルバムなんですが・・・・珍盤ではあるけれど、これを名盤と言ってしまうのはどうも・・・・。これは右チャンネルだけで聴くとポピュラー・ミュージック、左チャンネルだけで聴くとモダン・ジャズ、そして両チャンネル（つまりステレオ）で聴くとスイング・ジャズに聴こえるという、まあステレオ録音のプロモーション的アルバムでして、内容云々とかいうレベルのアルバムではございません（ビル・エヴァンスとW.ショーターが共演してたりするんで、個人的には興味深いのですが）。この他所謂プライベート盤の類いなんかもアタマには浮かんだのですが、ここで紹介するのもちょっと憚られるしなぁ・・・等といろいろ考えた結果、デイヴ・パイクのPike's Peakにすることにしました。全然”隠れ”じゃないって話もありますが・・・・。

　後にポピュラー寄りの作品を数多くリリースするD.パイクと、硬派なジャズ・ピアニストであるビル・エヴァンスの共演と聞くと、一見ミスマッチの様に思われるかも知れませんが、本作では各々の個性がある種のコントラストを感じさせ、大変に素晴らしい作品に仕上がっています。録音時期は62年2月で、S.ラファロ亡き後、前年の12月にC.イスラエルを新たなトリオ・メンバーとして迎え再出発した2ヶ月後にあたります。全体的にはエヴァンスがリードしているかの様な演奏ですが、パイクの陽とエヴァンスの陰というか、パイクのエモーショナルな演奏とエヴァンスの耽美的な演奏が、非常に上手く楽曲の中に溶け込んでいると思います。表記の通りD.パイクのリーダー作ではありますが、ある意味ビル・エヴァンスのリーダー作として聴いても十分楽しめるんじゃないでしょうか。演奏中、B.パウエルよろしく呻き声を発しているパイクと、いつもの様にリリカルなフレーズを紡ぎだすエヴァンス・・・・特に１曲目のWhy Not（ライナーには「M．デイヴィスの”So　What”に対する答えである」とコメントがありますが、実はコルトレーンの”インプレッションズ”だったりします）や、ラテン曲として有名なベサメ・ムーチョ等の楽曲は、この作品のハイライトとでもいうべき、名演奏だと思います。特にベサメ・ムーチョは、多くの場合その甘美なメロディ・ラインの故にか、劣情的（？）な演奏が多いんですが、本作で聴けるそれは甘美な中にもクールネスが漂っていて、なんというか”ワサビがピリリと効いた”演奏です。

　CDでもフツーにリリースされている作品ですから、すでにご存知の方も多いとは思いますが、まだ聴いたことの無い方は、１度聴いてみても損はない作品だと思います。

　あ、ただいま当店では、本アルバムの重量盤LP（輸入再発盤　新品）を販売中ですんで、是非宜しくです（さり気なく宣伝　その２）。