『資本論』学習9 第二編第三節「労働力」
新版『資本論』の第二分冊に入ります。
最初にある第二編は「貨幣の資本への転化」ですが、
その中の第三節「労働力の購買と販売」について。
マルクスが『資本論』で、それまでの経済学の理論を発展させたとれる点、その一つにこの「労働力」の概念を明確にした点があるかとおもいます。
私などが、最初に『資本論』を学ぼうとした頃、1970年前後の頃でしたが、「入門書」として文庫のマルクス著『賃労働と資本』が紹介されました。そこにはエンゲルスの序論(1891年)が添えられていました。
今の社会の経済活動の目的になっている前貸しされた貨幣を増やすこと、この増加分をマルクスは「剰余価値」と名付けていますが、これがどこから、どのように生ずるか、この問題です。
この「労働力」の概念を明確にしたこと、実際に働く行為としての労働と労働する能力をもつ人との違いを明確にしたこと、これが剰余価値を発生させる関係を明らかする上での試金石だったんですね。「搾取のしくみ」の問題です。
経済学にとっては認識せざるを得ない真実ですが、しかし経済学の本でこれを正面から論じているものはほとんどありませんね。それでも経済学の基本中の基本、要の問題の一つであるということです。
その基本点が、資本主義社会の経済的な発展にとってどのような形をとって現れてくるのか、この問題は『資本論』全体を通して明らかにしようとしているテーマですから、この第二編はこれから一歩一歩のぼっていく階段の、一つのステップだということです。
でも、この論点が、春闘での賃金要求にとっても、大事な基礎的な理論を提供してくれていることも明らかだと思うんです。
やはりこの問題を論じたマルクスの講演に『賃金、価格および利潤』があります。やはり文庫版(新日本文庫 服部文男訳)で出されていますが、これは1865年にロンドンでの国際労働者協会の中央評議会でおこなわれた講演だそうですが、この論点の一つをとったとしても、これが労働者の運動にとってもっている科学的で実践的な意義、役割の大切さが示されていると思います。かつてもそうだし、今日でも生きている事柄なんですね。
もう一つ、日本での学術史の点からですが、
河上肇の著作に『資本論入門』があります。昭和7年刊行ですから1932年に刊行された著作ですが、これは『資本論』第一巻についての解説ですが。私が持っているのは昭和26年に世界評論社から再刊されたものですが、河上肇は第三分冊で第二編「労働力の売買」で、労働力についてのしっかりとした解説を残しています。今見ても、しっかりした解説です。
1932年と言ったら、日本が満州国をつくったり、特高警察を配置したり、戦争体制への統制がされつつあった時ですよ。そうした野蛮な社会の中にあっても、学者・研究者は唯物論研究会がつくったりして、科学の声を、不屈の理性の声をあげていたんですね。
それからしたら、今日のまがりなりにも民主主義社会ですから、社会の姿を、その進路を解明する努力が、もっと活発におこなわれてもいいんじゃないかと思います。
まぁ、「労働力」論からだけから社会経済の全体像を見るわけにはいきませんが、しかしこれが一つのステップであることは確かだとおもいます。