ユンディのオールショパン(2010年4月20日)@サントリー
[日時]2010年4月20日(火) 19時開演 サントリーホール 1列真ん中左方[出演] ユンディ・リ(李雲迪) Yundi Li (ピアノ / Piano)ショパン生誕200周年記念≪オール・ショパン・プログラム≫ All Chopin Program○前半夜想曲より第1番 変ロ短調 Op.9-1 No. 1 in B-flat minor, Op.9-1第2番 変ホ長調 Op.9-2 No. 2 in E-flat major, Op.9-2第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2 No. 5 in F-sharp major, Op.15-2第8番 変ニ長調 Op.27-2 No. 8 in D-flat major, Op.27-2第13番 ハ短調 Op.48-1 No. 13 in C minor, Op.48-1アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22○後半4つのマズルカ Op.33(第22~25番)ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」 ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53 「英雄」○アンコール中国民謡:サンフラワーショパン:夜想曲第2番変ホ長調☆レビュー☆前回の展覧会の絵では、二度とユンディを聴かないと誓ったのだが、ショパンイヤーのオールショパンプログラムなだけに今年は外せないと思い行くことにした。前々回の来日までは、ショパンが抜群に良かったことを記憶している。しかし前回の来日ではショパンも酷かったことにがっかりした。レパートリーはそれほど変わることなく、前回と同じマズルカ、アンダンテスピアナートが今回も演奏された。会場の95%は女性で昨日と打って変わって男性トイレはガラガラであった。また聴衆の多くはファンクラブに所属しているのだろうか、いたるところで挨拶が交わされているのをみかけた。前半のノクターン、出だしはいずれもしっかりした音。ピアノの調子が悪いのかやや尖った音で、いくつか金属的な痛い音を出すこともあった。(この点、休憩時間にユンディファンが調律師にしっかり指摘していた)当日のパンフレットにユンディのインテンポについての記載があったが、ノクターンではインテンポではなく、ややアンニュイなテンポ。音量は大きめでちょっと元気な音かなと感じたが、曲の終わり方が万全。美しく余韻を残しながら聴衆を魅了。アンダンテスピアナートは彼との相性がばっちりで、これはショパンコンクールの時から変わりない。欲を言うと、前々回までの来日の時は、もっと構成(特にアゴーギグ)が秀逸で、前回からはメリハリがかなり強調されている気がする。高音と低音のバスが打ちっ放しというか、力任せのような耳に痛い音を奏でてしまう。ただ、この曲の最後の5つの音の最中に拍手をしたくなる演奏であるのは、彼が汗だくで本気で演奏しているからであろう。後半のマズルカは、これまで感じていたのと同じく、彼は苦手なのかなぁと感じた。マズルカの4分の3拍子が一定ではなくテンポが勢いで変わり、かつ音量も思い付きと勢いにより大音量の爆音を奏でてしまう。前回ショパンコンクールのブレハッチが、見事な母国マズルカを演奏していたことと比べると、2000年の覇者はアンマッチなのかなと思ってしまう。パンフレットにヤシンスキ先生のコメントもあったが、ショパンの見直しをショパンコンクールにも反映させており、ショパンを弾くには大音量ではなくサロン音楽を意識せよ、というコメントがあった。それと照らしても、ちょっと頭が痛く、違和感が残った。反面、ソナタの1楽章は熱演で、私もここで拍手をしたくなったものだが、なるほど会場からは我慢ができずに拍手が沸き起こった。2~4楽章は無難な印象。彼の英雄ポロネーズ、なかなか面白いと感じた。揺ぎ無いテンポ、爆音過ぎず、彼の容姿もあり好感を持った。ラストの集中力が欠けたように感じたが、汗だくの好演である。ガチンコの演奏が彼の良い点の一つである。ぶっ放してしまうところを抑制し、テンポも自制できるなら、なるほど彼のショパンは一流なのだなと感じさせることができる。大行列のサイン会をこなすところも、彼の魅力の一つであろう。こういう言い方も失礼承知だが、ユンディ、なかなかやるな、と感じる一夜であった。