2912727 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

イルカみたいに生きてみよう~心の力を抜いて楽しく生きていきませんか

イルカみたいに生きてみよう~心の力を抜いて楽しく生きていきませんか

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2020年07月10日
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
昨日の続きです。

バスで伊豆急下田駅に向かう途中、
豪雨でがけ崩れ。
前方も後方も道路が埋まってしまった。

さらに、突然崖が崩れて、バスを直撃。
あわや川に転落! という危機に立たされた。

崖に目をやると、
泥水が滝のように流れている。
川を見ると猛烈な勢いの濁流。
バスの運転手と乗客12人はにっちもさっちもいかない状況に追いやられた。

このまま川に流されるか、
土砂に埋まって死んでしまうのか。
恐怖に体が揺さぶられる。

逃げようにもどこへ逃げていいかわからない。

じっとしていられなくなった乗客はバスの外へ出て、
右往左往している。
行き場所なんかどこにもないのに。

そんなとき、
運転手がすくっと立ち上がった。
「私はこのへんは地元です。地理はよくわかっています。
この山の向こうには稲梓という駅があります。
そこまで歩けば何とかなります」

山の向こう?
この雨だよ?
いつ崩れるかわからないのに?

バスの中に残っていた何人かは、どうしたものかと顔を見合わせた。

外は少しずつ暗くなっている。
このまま暗闇に置き去りにされたら気が狂ってしまう。

運転手はだまってバスを降りた。
そして、崖に沿って前の方へ進むと、
比較的なだらかな斜面を上り始めた。

ちょっと待ってよ。
一人で行くのかよ。

彼の背中を見ながら、ぼくは決断を迫られた気持ちになった。

「みなさん、運転手さんについていきませんか」
それしか選択肢はない。
ぼくは運転手に続いて斜面を上る。
乗客たちもあとに続いた。

運転手は黙々と歩いていく。
ぼくたちも必死で歩く。
草をかきわけ、
濡れた斜面に足を滑らせないようにしながら、
ゆっくりゆっくり進む。

体は、激しい雨に打たれ、水浸し、泥だらけだ。

ぼくの後ろは年配のおばさん。
膝が悪いそうだ。
ぼくは彼女の手を引き、「もう少しだから」「がんばるよ」と声をかけながら上った。

1時間くらいも歩いただろうか。
駅が見えてきた。
さすが運転手さんは地元の人。
迷わずに案内してくれた。

ほっとした。
だけど、ここからどうすればいいのか。
電車が走っているはずがない。

無口で愛想のない運転手だったけれども、
たぶん、無線で会社に連絡をしてあったのだと思う。
これから稲梓の駅へ向かうと伝えてあったのだろう。
しばらくすると、
何人かのレスキュー隊がやって来た。

足の悪いおばあちゃんは屈強な若者におんぶしてもらって、
線路に沿って、蓮台寺という隣の駅に向かった。
途中、トンネルがあったが、
入り口の部分が土砂で半分ほど埋まっている。
ひざくらいまで足が沈む。
レスキュー隊が張ってくれたロープを伝って、
何とかトンネルを抜けると、
もうそこは小雨しか降っていない、平穏な世界だった。

バス会社が用意してくれたバスの乗って、
近くの衣料品店へ行く。
下着や洋服を買い、
それから宿へ。そこもバス会社が用意してくれた。

お風呂へ入って、
おにぎりをいただき、
ビールを飲んだ。

最高だった。
生きている実感があった。
命が喜んだ。

ぼくたちが乗ったバスを中心に、
2平方キロほどの狭い範囲に猛烈に降った雨だった。

6人が亡くなったそうだ。

後日、おばさんたちから手紙をもらった。
稲梓駅で撮った「記念写真」も入っていた。

手紙には、
「あなたがいなかったら、私たちはどうなっていたかわかりません」
とうれしい言葉が書かれていた。

ぼくは、ただみんなの決断を促しただけ。
一刻も早く、四方を恐怖に囲まれた場所から逃げ出したかった。
ヒーローはあの運転手だ。

ぼくは、こうやって思い出話として語れるが、
今、豪雨の被害にあわれている方々は、
ぼくの比ではない恐怖や不安を抱えているはずだ。

まずは雨よ、早くおさまっておくれ。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2020年07月10日 07時54分01秒
コメント(2) | コメントを書く


PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

さそい水

さそい水

Calendar

Favorite Blog

土曜の朝が好き💕【… New! ハピハピハートさん

『インビジブル・フ… New! あんずの日記さん

きたやま展覧会 院長9988さん

コンクリートのお勉… kopanda06さん

さくらの中の神戸ハ… 47弦の詩人さん

Comments

さそい水@ Re:ありがとうの思いを現実化するのがお金の役割(12/12) 大谷君は、 野球が好きで好きでたまらなく…
ハピハピハート@ Re:娘の結婚式(03/12) 美しい花嫁さんですね🌸
さそい水@ Re:本当の自分?(12/27) いろいろな自分が同居しているんじゃない…
ハピハピハート@ Re:本当の自分?(12/27) 興味深いお話しですね✨ わたしは女を演じ…

Freepage List

Headline News


© Rakuten Group, Inc.