兵庫県職員への調査報道
第一次斎藤県政を体験した「兵庫県職員への調査報道」を題材にした水島宏明の文章が文春のオンラインで配信されていました。 https://bunshun.jp/articles/-/75802 https://bunshun.jp/articles/-/75803 題材となった番組(クローズアップ現代)も含めて、重要な問題提起になっていると考えますので、内容を要約・紹介します。〔前編〕再選後に「“もう辞めたい”という声も」…職員30人が告白した斎藤元彦知事へ“もの言えぬ空気”とは「理不尽な異動が怖い」水島 宏明2024/12/2911月19日、出直し選挙当選後、斎藤元彦兵庫県知事が就任記者会見を開く。Q 斎藤氏の再選で再び彼の下で働くことになった兵庫県庁の職員(約4割が斎藤氏のパワハラを見聞きしたと回答)の心中は? Q この度の選挙に対する現役兵庫県職員の話は? 「SNSを駆使するやり方は構わないが、伝える中身が問題。人のプライベートを晒す。あるいは嘘を言う。個人的には残念。知り合いの職員でも“もう辞めたい”という声も聞こえてくる」(TBS「THE TIME,」11月18日放送より) 斎藤県政での「もの言えぬ空気」10月2日の「クローズアップ現代」では、「もの言えぬ空気」が第一次斎藤県政では職場に蔓延していたとして、その実態を詳しく伝えている。Q 「もの言えぬ空気に」なってしまった経過・背景は? 第一次斎藤県政で改革の司令塔として作ったのが、10人程度の幹部ら職員で構成される「新県政推進室」。知事と各部局が個別に議論を重ねていた政策形成のプロセスを簡素化。迅速な意思決定を行えるようにしたが、その後この「新県政推進室」も形式化。“側近”と呼ばれる少数のメンバーで物事を決めていくようになったという。・「密室で取り巻きだけで決めて、どんどん進めていく」(OB職員=幹部)・「異論とか、多様な意見を別に求めているわけじゃない」(現役職員) このことが“組織の健全さを欠く事態”を招くことになった、と複数の職員。「敵か味方か。賛成か反対か。白黒をはっきりさせて、賛成のチームと反対に回るチームを分ける傾向があった。そうすると、いろんな意見が言いにくくなって声が届かなくなる」(OB職員=部長級) さらに、知事が打ち出した政策に意見を述べたOB職員は、後日、県幹部から「斎藤県政に刃向かうんだったら辞表を書け。さもなくば服従しろ」と迫られた。異論を言うと排除、異動させられる。自然に知事の周囲にはイエスマンしかいなくなってしまう。知事は“裸の王様”のような立場になってしまったとOB職員(幹部)は証言。「人間の心の弱さ。理不尽に異動させられることが怖い。・・・幹部が意見を言えなくなると、その部下もさらに言えなくなる。こんなに危ういとは思わなかった。」(現役幹部職員)(NHK「クローズアップ現代」10月2日放送より)Q 番組が伝えていたのは?人事権を握る行政トップが自分の考えを押しつけるばかりで異論を許さない恐怖政治。〔後編〕「内部告発の“犯人探し”を徹底」兵庫県庁の職員は“特定”を恐れて顔も手も隠し…それでも「クロ現」に証言した“壮絶な背景”「特定」を職員たちが恐れている 登場する職員らはみな匿名で声もボイスチェンジャーといって元の声を変質させて誰かわからないような形で証言。「手」さえも手袋をはめるなどして通常の何倍も気をつかい、体型などもわからないように、上着などを着て証言。それだけ「特定」されることを本人たちが恐れているという証左だろう。(NHK「クローズアップ現代」10月2日放送より) 斎藤知事の“側近”たちは2024年3月の内部告発にあたっての犯人探しを徹底して行い、亡くなった元県民局長に対しても「誰がどういうことを言っているのか」について、執拗に追及し、同調する人間が誰なのかを聞き出そうとしていたという。Q 職員が目にした「問題がありすぎて、問題しかない調査」とは?かつて人事課にいた職員は幹部たちの対応に違和感があったと証言した。「書かれていることが事実かどうかをまず調べるのが通常だが、『誰が書いたんだ』『誰が情報を与えたんだ』という調査方法はやっぱり異様というか、問題しかない調査」Q 告発文書は「噂話を集めただけの信頼性の低いもの」とされた理由は? 片山前副知事が元局長に聞き取り調査をした際の音声記録によると、「知事のパワハラ……」(片山前副知事)「でもそれは対外的に出てないじゃないですか」(元局長)「出てへんから、なんでそれを知っとるんやって聞きよるんやないか」(片山前副知事)「いや、噂……」(元局長)元局長は根拠をもって内部文書を作成していたが、この時に「噂」としか言えない事情があったと同僚職員は証言。「噂話を集めて(内部告発文書を)つくったわけではないのは事実。だが、情報を出した人間も処分しようとしていたのかもしれず、『名前は出さんといてくれということで、名前を出せないだけ』。私が聞いたので間違いないと思う」(元局長と親交のあった職員) だが、片山前副知事の調査の結果、元局長による告発文書は噂話を集めただけの信頼性の低いものと結論づけられた。かつて人事課にいた職員もこうした県の姿勢を批判。「真実相当性があたかもないかのようにした、非常に恣意的で言葉尻を捉えた調査、判断だったとしか思えない」 「死をもって抗議する」というメッセージ 調査の2日後、斎藤知事は記者会見で「事実無根の内容が多々含まれている」「うそ八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格」と元局長を批判。県は元局長が「誹謗中傷性の高い文書を流出させた」として停職3か月の懲戒処分を下した。元局長は2か月後に「死をもって抗議する」というメッセージを残して亡くなった。 その後、兵庫県の県議会が設置した百条委員会で知事らのふるまいは公益通報者保護法に違反していると指摘されている。〔まとめ〕 水島宏明もいうように、多くの職員たちに取材して、第一次斎藤県政をしっかりと検証した報道番組(10月2日「 クロ現」)は貴重です。30人もの職員に聞き取りをしていく根気のいる報道は組織的取材力も一定の信頼性もあるテレビなどの媒体でこそ実現可能といえるでしょう。事実上「言ったもの勝ち」のSNS発信に大きく影響された兵庫県知事選になってしまったわけですが、TVをはじめとする報道機関には第一次斎藤県政のみならず、兵庫県知事選挙の総体、さらには第二次斎藤県政のありかたまでしっかり検証していく調査報道を期待します。 にほんブログ村 ← よろしければ一押しお願いします。一日一回が有効教育問題に関する特集も含めてHPしょうのページに (yahoo geocitiesの終了に伴ってHPのアドレスを変更しています。)「しょう」のブログ(2) もよろしくお願いします。生活指導の歩みと吉田和子に学ぶ、『綴方教師の誕生』から・・・ (生活指導と学校の力 、教育をつくりかえる道すじ 教育評価1 など