今年注目したい国(3)…(1/11)
悲劇から復興中のルワンダ共和国 ルワンダ共和国は面積26,338平方Km、人口約1,000万人の小国である。映画「ホテル・ルワンダ」や「ルワンダの涙」で取り上げられた「ルワンダ大虐殺」で有名になった。「ルワンダ共和国の位置」(コンゴ盆地とビクトリア湖の間にある小国~中学校社会科地図:帝国書院 H23より) 大虐殺の遠因はオランダ植民地時代にさかのぼる。オランダは少数派のツチ族を優遇して支配層にすえた。その後1962年にオランダから独立したが、選挙の結果人口の8割を占める多数派フツ族による政権ができた。このとき多くのツチ族の人々が国外へ逃れた。 1990年、ウガンダに逃れたツチ族が結成したルワンダ愛国戦線が侵攻してルワンダ政府との内線が始まった。1994年、フツ族の急進派はツチ族やフツ族の穏健派約80~100万人を虐殺した。このときの犠牲者数は当時のルワンダの人口の10%以上にのぼる。この大虐殺を機に、ルワンダ愛国戦線が首都キガリを制圧して内戦に終止符がうたれた。 映画「ホテル・ルワンダ」(2004年:英・伊・南ア合作)は、虐殺の危険から逃れてきた人たち1,268人を救ったホテルマンを描いている。戦乱の中のヒューマニズムを描いたこの映画はアカデミー賞候補にもなった。そして今、この悲劇の舞台だったルワンダが、「アフリカの奇跡」と呼ばれるまでに復興している。 内戦によって4割以上も減少したGDPは5年で回復。さらに2004年からのGDP成長率は平均8%以上を記録し、世界銀行が発表した2010年の「ビジネス環境の世界ランキング」では第143位から第67位と順位を押し上げている。 この経済発展はディアスポラ(離散者)と呼ばれる海外在住のルワンダ出身者による協力も大きい。迫害によって逃亡した200万人のルワンダ人が、祖国の復興のために巨額の投資を行い、さらには内需の充実のために次々と帰還しているのだ。政界においても、世界初の女性国会議員が5割超えを果たすなど、民主化が確実に進んでいる。 「日本人が知っておきたいアフリカ53ヶ国のすべて」(平野克己監修:PHP文庫 2011年) ※2011年7月「南スーダン」の独立でアフリカの国は54ヶ国になった。 2000年にツチ族として初の大統領となったカガメ大統領は2歳の時に隣国ウガンダに逃れた。大統領自身もディアスポラなのだ。現在、様々な改革で国の復興を進めている。 (カガメ大統領の)経済政策の柱のひとつが、ディアスポラの力を最大限に活かす政策だ。ディアスポラの帰国を促進するため、税金の優遇策を導入し、二重国籍を認めるなどの特例も設けてきた。こうした政策もあいまって、大虐殺のあと帰国したディアスポラは100万人にのぼるという。そしてディアスポラの能力と巨額の投資が、急速な復興の原動力となっている。特に伸びているのが、コーヒーなどの輸出用農作物。マウンテンゴリラなどの外国人をターゲットとした観光産業。また住宅やホテルなどの不動産開発も進んでいる。 「アフリカ~資本主義最後のフロンティア」(NHKスペシャル取材班:新潮新書 2011年)「少ないアフリカ関係の情報」(全国紙でも、中南部アフリカを南ア駐在の特派員1名でカバーしている程度なのだ) カガメ大統領は「ルワンダはアフリカのシンガポールになる」と豪語し、首都キガリは建設ラッシュとなっている。だが、その工事現場には地方から出稼ぎに来たフツ族の農民が多いという。民族対立は解決していないのだ。ツチ族政権になって250万ほどのフツ族がコンゴなどに逃れたという。今は帰国者が増えているが民族和解への道はまだ遠い。 ルワンダの経済成長は著しいが、数値的にはまだアフリカ諸国の平均より下である。しかし、アフリカの貧困からの脱却のモデルとなりつつあるのは間違いない。ただ、「資本主義最後のフロンティア」という本のサブタイトルからは、「経済成長=貧困からの脱却」という公式がうかがえるが、それは富の分配がうまく行われていった場合である。 ルワンダが真の意味での「アフリカの奇跡」となっていくか、今後に注目したい。