Channel Shinzo しんぞうチャンネル

先々日は、福岡県の産業デザイン協議会主催のデザインセミナーをおこないました。
講師には、今年の春から北九州空港～羽田間の運行を始めたスターフライヤー社の堀高
明社長と武藤康史常務に加え、クリエーターの松井龍哉氏をお招きしてのセミナーです。

本社は東京ながら福岡からのローカル便でスタートしたスカイマークや、札幌本社のエ
アドウーに続いての、新規参入の地方航空会社である。

堀社長からのこれまでの会社の立ち上げのいきさつや、ライト兄弟が世界で初めて飛行
機を飛ばして１００年目の参入であり、国内他社には無いアイデンティティを持った企
業としてデザインの取り組みを考えたなどのお話の後に、
そのデザインを担当された松井龍哉氏の講演があった。

松井氏は元々は建築畑出身で、丹下健三設計事務所を経て、フランスの工業大学大学院
の留学後、ロボットデザインに関わるようになった経歴の方。

「PINO」や「SIG」などのロボットのデザイン開発が主なお仕事ですが、今回の北九州
市という地方発の航空会社のハンディを逆手にとったような総合デザインを成功に導い
た能力は大変評価されています。

「黒」という色を基本カラーとして、「白」と「銀」を組み合わせて、一見単調になり
がちなカラー計画が、ひとつの生き物のように航空機の機体となって表現されている。

この「黒」の色は、宇宙のコスモスのテーマカラーとして理論化されていましたが、現
実的な色指定の段階では「グランドピアノの色！」と関係各所のデザイン担当者に説明
されていたという。いわゆる漆黒の「黒」。これを云われると同じ黒でも「日本の黒」
と思えてくるから不思議なモノ。

今回のプロジェクトは、機体のデザインから、機内のインテリアから座席シートや多種
の備品、広告デザインに至るまで携われた総合プロデュース的な役割りを担われて、最
終的にすごくクオリティの高いデザインに仕上がっており、スターフライヤー社の企業
ブランドとして、また企業の戦略としてのデザインの活用の良い見本となっていると感
じた次第です。

このセミナー、最初は堀社長をお呼びしてはというところから始まったプランでしたが、
「じゃあ、ぜひデザインをされた松井龍哉さんもお呼びしてくださいよ」と福岡県の方
にお願いして実現した組み合わせでした。

ただし、この新規参入の航空業界も大変な状況であるのも現実です。
ブランドとしての立ち上がりの部分としてのデザインは好調にスタートしましたが、乗
客の安定した確保がなされないと本当の成功とはいえないので、継続的な努力が求めら
れています。

わたしの娘がニューヨークからイギリスへ渡った時に利用した「バージンエアライン」
のホスピタリティに大変喜んでいたのを思い出すと、そのブランド力の継続と維持は並
々ならぬ企業努力でなされているんだなあと思わずにはいられない。

そんな航空会社に成長していただきたいと願います。

パネルディスカッションのコーディネートをしていただきました森田教授、大変ご苦労
さまでした。