亜玖夢博士の経済入門
著者: 橘玲
出版社: 文藝春秋
サイズ: 単行本
ページ数: 281p
発行年月: 2007年11月
「笑ゥせぇるすまん」という漫画(アニメ)がありましたが、それに橘玲氏の金融知識と皮肉が込められたオムニバス小説です。1話は50ページぐらいなので、マンガのように読みやすいと思います。
難しい理論を現実の問題と絡めているところが面白いでした。その絡みにちょっと無理なところがありますが、理論を学ぼうとする諸学者にはいいのではないでしょうか。
- カーネマンの「行動経済学」 ⇔ 多重債務
- ノイマンの「ゲーム理論(囚人のジレンマ)」 ⇔ やくざの利権争い
- ワッツとストロガッツの「ネットワーク理論」 ⇔ いじめ
- チャルディーニの「社会心理学(コールドリーディング)」⇔ マルチ商法
- ゲーデルの「不完全性定理」⇔ 自分探し
2,3と5については知っていたところだったので、単純にストーリーがどう展開するかが興味を持てた。1と4はビジネス(金儲け)に直結しそうなので、まだまだ反芻しながら考えている。
本から抜き出そうと思っていたが、Amazonでのnanaruさんの書評がきっちりと書かれているのでそれを引用させていただく。
- われわれの脳は得するときのうれしさよりも損した時の悔しさをはるかに大きく感じる
- 目の前の出来事を過大に評価し、将来の出来事を過小評価する
- 価値は時間とともに一定の割合で減価する。行動経済のさまざまな知見は、この減価の割合が指数関数よりもはるかに大きい
- 目の前の現金のほうが、将来の返済金額よりはるかに価値が高いと思うから、一時に快楽のために喜んで高利の金を借りる
- 否定不可能な表現や肯定するしかない質問を巧みに組み合わせて、積み重ねることで、相手の潜在意識に「YES」の文字を埋め込んで行く
- 権威に対する服従
科学的証明 世界的機構 - 社会的証明
生物としてヒトの遺伝子には「長いものに巻かれろ」という指令が書き込まれている - 希少性の原理
希少なものは高価で価値が高いと無意識に刷り込まれている - コミットメントと一貫性
約束を守り主張を変えない生き方が信頼を得ると刷り込まれている
ロバート・チャルディーニ - 返報性
われわれは無意識に「贈り物にはお返しをする」という返報性のルールが深く埋め込まれている
ん~、意味深い。ここに人間の習慣における落とし穴(金儲け)が潜んでいる気がする。
私は悪夢じゃなかった、亜玖夢博士のように真実を探すことを目指していたんだ。橘さんもそうだったのかな。それともそれを冷ややかに見ているのかな。ちょっと気になった。