果樹部会中国へ行く(92)
李さんの論文(2)1.福建省果樹類品種分布の現状及び果樹産業が直面する問題1-1果樹類品種分布の現状福建省は我が国の南亜、中亜両気候地域にあり、東南は海で内陸部は山脈が東西に連なっている。その特殊な地理的環境が、福建省の果樹類の多様性(主に常緑、落葉果樹14品種)を作り出していて、我が国南方果樹の主要産地の一つである。1997年の果樹栽培面積は57.6万ヘクタール、生産量は334万トン、主要品種は、柑橘(柚)、バナナ、竜眼、レイシ等の常緑果樹で、面積の70%、生産量の80%を占める。スモモ、モモ、ナシなどの落葉果樹は補完的な品種であり、およそ「4帯3地域」の果樹類の品種分布に分類できる。福州以南:南亜熱帯の竜眼帯、レイシ帯、バナナ帯、ポンカン(柚)栽培地域省西北で、海抜の低い地帯:温州ミカンを主力とする寛皮柑類、甜橙栽培地域博平峰、戴雲山、鷲峰山系:モモ、スモモ、柿などの落葉果樹を中心とした、常緑・落葉果樹混栽地域武夷山系:ナシ、【木のしたに示】を中心とする落葉果樹帯福建省の果樹類の品種分布は建国後4つの発展段階に区分できる。①回復発展段階(1950~1959年)南部の歴史のある果樹生産地域から生産の回復が始まった。「果樹上山」の方針を策定し、柑橘など「6大名果」を確定した。②緩慢発展段階(1960~1978年)農村経済の停滞、農産品の需給体制の制約を受けて生産発展は緩慢だった。しかし農業部門の努力によって、柑橘栽培の模範園が推進された。省西北地域は特に推進に対して適応が早く、豊産性の温州ミカンが多く植えられた。③迅速発展段階(1979~1989年)国家が農村経済改革に着手し、果樹生産は迅速に発展した。発展の最初の速度は低かったが、市場の需要拡大が生産を強力に推し進める要因となった。発展は「量」の面で迅速に拡張した。80年代に福建省は果樹栽培の区域を策定していたが、市場の更なる需要のために経済栽培の分布は不適な地域までに広がった。④調整維持段階(1990年~)1991年の周期的な大凍寒害の影響で、果実市場は需給バランスに変調を起こした。優秀な品質の生産が重視し始められ、適地優勢、季節、等級などによる価格差が次第に拡大し、市場の「優勢淘汰」はますます強くなった。優品と劣品の品種発展と淘汰も同時に加速され、果樹類の発展はもはや「6大名果」ではなく、多様化の様相を示している。発展の速度は前年比+10%~-5%で推移し、「量」より「質」に重点が置かれる傾向にある。1-2果樹産業が直面する問題果物の価格が下がってきたことで、果樹産業に潜在していた問題点が顕著に現れている。その①果樹の品種構成の偏り80年代以降、国家の農業経済政策及び地方政府から促進されて、我が国の果樹産業は10数年間で急速に発展した。その後、国内果実市場への供給が速やかに整備されるに伴い、我が国は世界最大の果実生産国になった(1997年全国の果樹面積800万ヘクタール、生産量5200万トン)、しかし、1978年我が国1人あたり果実消費量は5.5kg以下という経済状況下では、市場は売り手主導で、生産は単一志向、果樹の品種は盲目的に植えられ、同一性が拡大した。それによって、当然起こるべきことなのだが、品種構成に極めてバランスを欠く結果になっている。柑橘を例にとれば、我が国の寛皮柑類のうち柑橘の占める割合は70%以上で、そのうち50%以上を中・晩熟の温州ミカンが占めている。また、柑橘の品種構成は11月~12月に成熟するものに集中している。福建省でも寛皮柑類のうち柑橘の占める割合は80%(ポンカン42%、中・晩熟温州ミカン33%、福桔5%)で、甜橙8%、柚類10%等の比率は低い。福建省はポンカンの品質は優れ、温州ミカンの栽培も我が国の主力産地となっているが、成熟期が集中している。また、省西北地域では中・晩熟温州ミカンの生産に偏りすぎて、甜橙が極めて少ないために問題はもっと深刻である。その②市場需給バランスの崩壊現在、果樹生産の生育期であることや資本循環の周期から見て、果樹面積の増加は飽和点に達している。80年代我が国の果実生産は年率17.6%で成長し、その間の地方農民の生活費は7.7%、1人あたり純年収は4.5%増加した。1979年~1996年の福建7大主要農産品の中で、果実生産量だけが年率20.3%という急成長を遂げ、1人あたり年収は平均17.0%増加した。その③加工業の発展の遅れ1997年我が国の1人あたり果実消費量は約42kgであるが、世界の平均は約70kgであり、まだまだその差は大きい。我が国の果実は50~60%を加工にまわせる能力があるのだが、加工業の発展は10%以下と停滞している。果実は生鮮消費が基本であるが、市場の季節的な需給調整余地が少ないために、市場では季節的な生果の過剰が発生している。果樹産業の発展は、まだ40%の園地が成園になっていないことを考えると、まだしばらく生産量は増加しつづけ、2000年には我が国の果実生産量は6200~6500万トンに達すると予想だれている。1人あたりにすれば50kgである。品種構成の調整がなかなか進まず、加工業の発展が停滞している中で、どうやったら我が国の果樹生産における過剰問題を解決し、将来へと繋げることができるのだろう。