南紀への旅(16)
フリータイムといっても、ほとんどの人は青岸渡寺と那智大社へ向かう。土産物屋「蓬莱閣」の店先では青竹で作った杖を無料で貸し出してくれる。「参拝が済んだらうちの店でお土産物を買ってね」というわけだ。杖には店ごとに違った色のテープが巻かれていたり、ペンキが塗ってある。これは香川県の金毘羅さんと全く同じシステムだ。tetywestは仕事柄、坂道を上るのは慣れっこになっている。それにメンバーの中で最年少なのだから、杖などは意地でも使わないのだ。ガイドさんが、「どちらへ行くにも、467段の石段を登らなくてはなりません」と脅しても、金毘羅さんの本宮まで785段、奥社までなら1368段の石段を、県外からの知人が来る度に案内しているtetywestにしてみれば、「たかだか金毘羅さんの半分じゃないの」くらいに軽く考えてしまう。参道の幅は金毘羅さんの半分くらいしかなく、狭い感じがする。金毘羅さんの石段は最初はなだらかで、上に行くにつれて次第に傾斜が急になるのだが、ここは最初から最後まで急傾斜だった。参道の両脇には土産物屋が並んでいる。しかし急傾斜に家を建てなければならないという制約上、間口はどうしても狭くなる。そうすると陳列できる品数も限られる。那智黒石を使った縁起物の彫刻や饅頭などが置いてあるのだが、どの店も何となく風雪に耐え忍んだ年月を感じさせる。というか、あからさまに言ってしまうとあまり商売が繁盛しているようには見えないのだ。そうするとなおさら購買意欲が湧いて来ない。それに金毘羅さんでも同じだが、土産を買うのは上りではなく下りの時と相場が決まっている。わざわざ荷物になる土産物を持っての山登りは誰だってやりたくない。しかし、下るにしてもこの石段はかなり厳しい。結局、杖の無料サービスと無料駐車場を提供できる、広い道路に面した土産物屋がお客を囲い込んでいるのだろう。4分の3ほど上って来た所で、石段が二又に別れている。左へ行けば那智大社、右へ行けば青岸渡寺となる。tetywestは那智大社へ向かった。那智大社の境内に入ったとたん、どういう訳か参道の幅が倍くらいに広くなった。真っ直ぐに赤い鳥居まで続いている最後の石段を上り切ると、そこに那智大社の拝殿があった。那智大社への石段「那智」とは、「河・江」という意味のサンスクリット語に由来するのだそうだ。拝殿はそれほど古くはなさそうだった。神社なので、二礼二拍一礼でお参りする。(※那智大社の詳しい説明は、「那智大社のHP」にあります。興味のある方はどうぞ)那智大社の拝殿