果物と健康(5)
今日は「骨」の話題です。小泉内閣の構造改革、キャッチフレーズは「骨太の改革」なんて言ってますが、いくら骨が太くても中身がスカスカの「骨粗しょう症」ではねぇ・・・あっ、思わず関係ないことをぼやいてしまいました(ゴメンナサイ)・・・さっそくクイズといきましょう。●骨を作るのに必要な栄養素は?と訊かれれば、10人が10人「カルシウム」と答えるでしょう。そして、カルシウムを摂るための代表的な食べ物は「牛乳」ですよね。ところが、「牛乳」に関してこんな驚くべき事件があったのを存知でしょうか?牛乳を世界で一番飲むノルウェーの骨折率は日本の約5倍!これは新潮社発行の月刊誌(新潮45)【平成13年6月号】に掲載された、「牛乳はこんなに身体に悪い」の記事の一部です。このとき、農水省は怒り心頭に達したらしく、--「牛乳はこんなに身体に悪い」(新潮45 6月号)に対する農林水産省の申し入れについて--の中で、「これは事実ではない」と以下のように抗議しています。そして、pdfファイルで新潮の記事の全文をそのまま公開しています。参照URL:http://www.maff.go.jp/www/houdo/houdo/sincho45.pdf--------------------------------「牛乳を飲みすぎることが、逆に骨をもろくし、骨折を招いているのです。それが証拠に、世界中で最も牛乳を飲んでいるノルウェー人の骨折率は日本人の5倍」(244頁中段5~10行目)の記載について (事実) 主要国の中で、最も飲用等向けの生乳供給量の多い国はフィンランド(1998年)であり、記事の内容は誤っている。 また、牛乳の飲用量と骨折率の関連については、全く関連性のない独立したデータを基に両者の相関関係を述べたものであるが、骨折の発生については、人種、体格や骨の形態、生活様式など多くの因子が背景に存在すると考えられていることから、牛乳の飲用量の多いことが骨折の発生率の高い原因と結論付けた記載は不正確で誤解を与えるものである。--------------------------------この騒動は新潮社が農水省の申し入れを突っぱねた形で終わったようなのですが、詳しいことは知りません。さて、ちょっと物事をナナメから見る癖のあるtetywestはこの申し入れを読んで、「フィンランド 骨粗しょう症 牛乳 骨折」とキーワードを入力してyahoo!で検索してみました。すると、「牛乳は骨粗鬆症の予防になるか」というURLを発見したのです。参照URL:http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/lifestyle2/osteoporosis.htmlこのURLは、山梨医科大学名誉教授 佐藤章夫氏の「生活習慣病を予防する食生活」というHPの中にありますので、決していい加減なデータではありません。--------------------------------フィンランドは世界一の牛乳消費国である(表1)。フィンランドは人口がおよそ500万という人口小国であるから、全国規模で疾病統計が入手できる。男性の心筋梗塞発生率は世界1位の地位を確立している(5)。このフィンランドでタンペレのUKK健康増進研究所のカンヌス(Kannus)らはフィンランドにおける骨粗鬆症関連の転倒骨折についていくつかの研究を報告している。それによると、60歳以上の骨粗鬆症に起因する大腿骨頚部骨折は1970年から1998年の29年間で驚異的に増加した。年齢調整を行ったうえで比較すると骨折発生率(人口10万対)は女性で50から133に(2.7倍)、男性で14から49に増えた(3.5倍)。この発生率は年齢調整したものである。したがって、高齢者が増えたから骨折が増えたわけではなく、実際に骨粗鬆症が誘因となった転倒骨折を起こすお年寄りが増えたことを示している(6)。さらに、骨粗鬆症関連の転倒による脊椎骨骨折によって起こった50歳以上の脊髄損傷の年齢調整発生率(人口10万対)は1970年1月から1995年12月までの26年間に女性で5.8倍(5から29)、男性で2.4倍(7から17)に増えた(7)。さらに、カンヌスらは骨粗鬆症関連の骨折に遺伝的要因がどの程度関与しているかを検討するために双生児研究を行っている。1946年より前にフィンランドで生まれた1卵性双生児2,308組と2卵性双生児5,241組の計7549組(15,098人)を追跡調査した。これらの双生児において1972年から1996年の25年間に起こった転倒骨折を調べ上げたのである。このような研究ができるのは総人口500万という人口小国ならではのことである。女性で双生児の両方が転倒骨折を起こした割合は1卵性双生児で9.5%、2卵性双生児で7.9%であった。男性では9.9%と2.3%であった。この結果をみると、男性では遺伝的要因が骨粗鬆症関連の転倒骨折に関与している可能性があるが、女性ではその可能性は少ない(8)。上述の牛乳消費大国フィンランドにおける骨粗鬆症の増加は牛乳の飲める西洋人(ラクターゼ活性持続症)においても、牛乳が骨粗鬆症を予防できないことを示している。--------------------------------これを読むと、「新潮社に対する農水省の抗議の方がおかしいんじゃないの?」と思えるのはtetywestだけでしょうか?(特にアンダーラインの部分です)字数が多くなり過ぎましたので、今日はこの辺で・・・また明日。「果物と健康」についてもっと知りたい方は、ぜひ「毎日くだもの200グラム!」のホームページへ。