カテゴリ:青春時代「アメリカンシネマ」
100回を目指して始めた「お百度コラム」ラス前にたどり着きました。
今回は、僕の思い出深い「愛と青春の旅立ち」 思い出といっても、それは苦く辛いものなのですが。 ’82年暮れの公開でした。 アメリカンニューシネマ好きの僕としては、80年代になってから、何か物足りない、新鮮味の無い作品に少しせつなさを感じていました。 70年代の成功パターンが、情熱が薄まって繰り返されているような気がして。 新しいものと言えば、CGを使った、ありえないものをコンピューターで作ってしまうと言う方向のものだけ。 その頃は、まだどんなものになるか楽しみではあったのですが。 そんな中で、久々にいい映画を発見した喜びがありました。 鮮やかな新しさは感じませんが、しっかりした価値観が根底におさまった、完成度の高い作品だと思います。 リチャード・ギアは「天国の日々」「アメリカンジゴロ」と大作をこなし、順調に80年代のスター街道をまい進している時です。 でも、この作品をきりりと締めた存在は、海軍士官候補生リチャード・ギアをいじめのごとくしごきまくる、鬼軍曹ルイス・J・ゴセットでした。 一般に映画は、始まりと終わりで、主人公の成長が描けているものに、素晴らしいものが多いですが、まさにこの作品ははまりです。 リチャードを成長させるルイスは、悪魔のように登場して、天使の姿を仮面の奥に見せます。 卒業式での二人の短い会話、そして立場が変わったことを如実にしめす最敬礼にシーン。 原題「AN OFFICER AND A GENTLEMAN」を象徴するシーンです。 (日本でこの題名だったら当たらなかったでしょうね) 作品全体に、説明台詞が少なく、映像で伝えようとする意図があり、映画を高いレベルに上げています。 その、台詞なしシーンの最たるところはラストシーンです。 屈折した過去を持つ小悪党のリチャードが、成長して卒業していきます。 残った問題は、期間限定の彼女をどうするのか。 どうするかは、流れで見えていますから、どう表現するのか。 くさい台詞と芝居で台無しにしてしまいそうな展開です。 自分だったらどう撮るか。 僕と、テイラー・ハックフォード監督の密かな戦いが始まります。 結果は僕の惨敗。 台詞も、芝居も一切なしで、表現してしまいました。 海軍士官の白い制服の足元と、彼女の働く工場の同僚の視線だけで、すべてを語らせてしまいます。 見事です。 そして、言葉の無いままお姫さま抱っこの後姿でストップモーション。 止まる直前で、彼女がリチャードの制帽をかぶりますね。 言葉以上に大きいしぐさ。 素晴らしいです。 よかったよかった… という話をしたかったのですが、僕はひとりで見ていました。 一緒に見る約束していた相手にドタキャンされてしまったのですね。 その時お付き合いしていた彼女なんですが、映画のドタキャンどころか、その後会えなくなってしまいました。 急に故郷に呼び戻されて、戻ってこなかったのです。 最後に僕の職場に電話がありました。 帰ってみたら見合いが決まっていて、その人と結婚しなくてはならなくなっていたそうです。 早口でそう伝えて「ありがとうございました」と言って、切られてしまいました。 何がなんだかわからない別れでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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