排出ガス ディフィートデバイス
そして触媒耐久走行距離
ディーゼルエンジンは、トルクがあって燃費が良くターボチャージャーとの相性も良い
ですが、ガソリンエンジンより高圧縮させるので拡散燃焼で一気に燃焼して燃焼温度が
高くなってNOx(窒素酸化物)が多くなり、NOxを減らす為に燃焼温度を低くすると
燃焼悪化でPM/Particulate Matter(粒子状物質)が多くなり
燃費も悪化(CO2(二酸化炭素)増)するDiesel Dilemma(ディーゼルジレンマ)がある
かと思います
今回、問題となっているDefeat Device(ディフィートデバイス・無効化機能)は
排出ガス低減性能を無効化する機能で、日本では2011年にいすゞ自動車がフォワードに
搭載するDPF/Diesel Particulate Filter(ディーゼル微粒子除去装置)の耐久性を確保する
為に、ディフィートデバイスを使用した事が問題になり
国土交通省と環境省は、オフサイクル(公的試験外)の排ガス低減対策に関する検討会を設置し
翌年にディーゼル重量車(トラック・バス)についてオフサイクルで
エンジンや車両の安全確保、エンジン始動、暖気過程時以外の1種類以上の排ガス成分を
増加(一定時間の走行で20%以上)させるエンジン制御(ディフィートストラテジー)を
禁止したと思います
米国では、1990年よりディフィートデバイス禁止規定を明文化したようですが
EPA/Environmental Protection Agency(連邦環境保護庁)は、70年代から
ディフィートデバイスを採用しているだろう日米欧韓の自動車や大型エンジンメーカーを
非難していたことがあったハズで罰金を払ったり、リコールをしているメーカーもあった
と思います
また
欧州では2001年頃に、EU加盟国に国内法への置き換えを指令するEC指令(2001/27/EC)
が出されたと思います
VWの問題となっているEA189エンジンは
VWが「Mach 18」(18年までに世界1位になれ)のスローガンを掲げた前年の
2007年頃に4気筒の1.6Lと2.0Lが採用され、09年に3気筒の1.2Lを追加したハズで
米国以外でも問題になっていますが
例えば、米国の場合
カリフォルニア州の独自排出ガス規制である
CARB/California Air Resources Board(カリフォルニア州大気資源局)の
LEV/Low Emission Vehicle2(全米50州の内、5州程度が採用)をクリアーすると
EPAのTier2 Bin5(LEV2と同レベル)もクリアーでき全米50州で販売が可能になるので
VWがNOxを低減する為に最も有効な方法として考えていた
EGR/Exhaust Gas Recirculationシステムや、その他にコモンレール燃料噴射、可変スワール
ブローバイガス吸気還元システム等のエンジン技術を投入し
VW ジェッタ 2.0 TDIなどの
LEV2/Tier2 Bin5用ATS/Aftertreatment Systems(排気後処理装置)の第一世代は
DOC/Diesel Oxidation Catalyst(酸化触媒)とDPFと
NSC/NOx Storage Catalyst(NOx吸蔵触媒・LNT/Lean NOx Trap)と
H2S Catalytic Converter(硫化水素遮断触媒)を採用したと思います
排ガス処理の流れは
DOCでHC(炭化水素)とCO(一酸化炭素)をH2O(水)とCO2に分解してDPFでPMを捕捉し
NSCでNOxを吸蔵しN2(窒素)に還元し、NSCをS(硫黄)被毒から再生する時に
H2SやSO2(二酸化硫黄)を形成するので、H2SやSO2から還元されたH2Sを
H2S Catalytic Converterで吸蔵させているかと思います
第二世代は
米国向けVW パサート 2.0 TDI(12年モデル)から
DOCとDPFとUrea SCR/Selective Catalytic Reduction(尿素SCR)を採用しUPグレードした
ようで、正常に排ガス処理させれば2007年のデトロイトショーでBMWが披露した
3.0L6気筒クリーンディーゼル可変ツインターボ(M57D30T2 US仕様)と同様かと
思います
ちなみに
問題の発端となった
ICCT/The International Council on Clean Transportation(国際環境交通会議)が依頼し
ウェストバージニア大学がテストしたVWも
第一世代のVW ジェッタ 2.0 TDIと第二世代のVW パサート 2.0 TDIだったと思います
今回のVWの排ガス規制違反は、ディフィートデバイスのようですが
本来の排気後処理装置は、機械的な損傷がなければ耐久走行距離まで性能を保つように
設計しているハズで、日本の排出ガス規制は自動車メーカーに対して排気後処理装置の
耐久性や品質のバラツキをチェックする意味で新車時の検査結果に加え
耐久走行距離(乗用車8万km、軽自動車6万km)を走った後の排ガス性能も基準値以下である
ことを求め、耐久走行試験や販売後の車検(継続検査)で規制物質を測定していて
継続検査の車検場では、自動車メーカーのような大掛りな設備がないので
アイドリング状態でHCとCOやPMの濃度を測るにとどまりますが
今後、国交省はVWの件もあって排ガス浄化性能を厳しく検査する為、使用条件、整備履歴が
千差万別の使用過程車から有意性のある測定値が得られるのか疑問がありますが
サーベライズ(車両抜取検査)制度を実施する方針のようです
ちなみに
外国でも自動車メーカーに対して、長期間の性能維持を求めていて
米国では
EPAのTier2規制だと10万マイル(約16万km)から12万マイル(約19万km)に変更された
ハズで、CARBのLEV2だと5万マイル(約8万km)/5年と12万マイル(約19万km)/11年
LEV3だと15万マイル(約24万km)の耐久走行距離が必要なハズで
CAA/Clean Air Act(大気清浄化法)に基づいたEPAの軽車両コンプライアンスプログラム
だと、EPAは自動車メーカーの型式認証申請を検討し、自動車メーカーは型式認証を得る
為に排ガス検査を行い検査結果をEPAに報告し、EPAは発売前の生産中の車から数%程度を
無作為に抽出し検査を行い自動車メーカーの検査結果と照合する確認検査を行い
問題がなければ型式認証しているハズで
昔は、規格外の車が市場にあるとEPAが判断した場合、抜打ちでラインオフした車を検査する
SEA/Selective enforcement audit(選択執行監査)があったと思いますが
最近は、In-Use Testing Program(使用過程車検査プログラム)に変更されたハズで
自動車メーカーは、IUVP/In-Use Verification Program(使用過程車検証プログラム)で
1万マイル(約1.6万km)と5万マイル(約8万km)の使用過程車を検査しEPAに報告する
必要があって、EPAは自動車メーカーの検査結果と照合する確認検査が行う為に使用過程車の
ユーザーを役所のデータベースから無作為に選び(サーベライズ制度・新車販売の4%程度)
ユーザーに、車を実験施設に持込んでもらい検査します
ユーザーの協力は任意で、1日あたり20ドルと代車又は代車の代わりに1日あたり50ドル程度
貰えたと思います
また
自動車メーカーは、IUVPで検査基準より悪い結果が出た場合、さらに厳しい
IUCP/In-Use Confirmatory Program(使用過程車確認プログラム)を行う必要があり
、IUCPの失敗はリコールになるハズです
また
(元)会社のベンツ CLK 320(C209)の触媒は
4万km程度で劣化・・・でなくて破損(涙)
しましたが
欧州委員会(EC)が排ガス基準を設定している欧州でも
Euro(ユーロ)3の8万km/5年(どちらか早い方)から触媒耐久性の強化が定められ
ユーロ4以降では、10万km/5年(どちらか早い方)の耐久走行距離が設定され
ユーロ5以降では、WVTA/Whole Vehicle Type Approval (車両型式認証)の耐久試験が
16万kmになり、欧州の場合は発売前に自動車メーカーがEC認定の実験施設に車を送って
検査してもらうだけでWVTA後の再検査はなかったハズですが
独では、ユーザーが車検(TUV 検査)時にTP/Technischen Prufstelle(指定技術検査所)
などで簡単なAU/Abgasuntersuchung(排ガス検査)をしてもらっていたと思います
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