自治振興セミナー (23年11月22日)
昨日、自治振興セミナーに参加してきました。セミナー講演者は次の方々、西尾勝(東京市政調査会理事長)磯崎初仁(中央大学教授)石垣正夫(岡山県新見市長)地方分権推進委員会の中心であり、公務員試験の種本として有名な『行政学』の著者でもある、西尾先生の講演から印象に残ったところを抽出します。講演の全体をとおしたメッセージは、「分権改革によって開かれた制度を自治体はもっと意識的に活用すべき」ということだと感じました。分権改革の中でも際立つのは、1999年地方分権一括法の制定により、機関委任事務が廃止されたことです。それまで、国は地方を「下部機関」とみなし、地方に国の業務を行わせてきました。機関委任事務は、あくまで国の業務でしたから地方が条例によって機関委任事務について何かを規定することはできませんでした。機関委任事務が廃止されたことに伴う成果は主に次の2点です。1 条例制定権の範囲が若干拡大したこと2 すべての通達通知が「技術的助言」に変えられ法的な拘束力を失ったこと1の条例制定権の拡大に「若干」と付されているのは、通達通知が拘束力を失いましたが、法令には従う必要があり、その法令が現状では事細かに規定しているからです。ただ、若干の拡大ではあっても、それをもっと有効に活用すべきだと西尾先生はおっしゃいます。そして、法令の解釈を独自になすため、自治体は法務能力を高めるべきだと。まだまだ自治体が法令解釈に消極的であるのは、国との解釈に齟齬をきたした場合に、その判定をする国地方係争処理委員会へ、これまで、わずか1件の事案しか持ち込まれていないことからわかります。また、西尾先生が注意喚起していたのは、「法令の解釈に自信がもてないからといって、都道府県の担当課や各府省の担当課にお伺いを立てるような悪習はやめなければならない」ということ。市で分からないことを県に聞き、それを県が国に聞く、国は明らかではない事案には、消極的な回答しかしないから、全体として結局何も変わらないということは避けなければならないのです。講演を聞いて感じたことは、いくら制度的な改革が進んで自治体の裁量余地が広がったとしても、自治体側に「自ら変えよう」という意志や想いがなくては、どんな改革も意味を持たないということです。ですから、制度改革と同時に自治体の意識改革も確実に行わなくてはなりません。そしてまた、西尾先生がおっしゃるように意志を反映させるに足るだけの、法務能力を自治体は高めなくてはならないのです。このように考えると、やはり人材も権限や財源と同様に重要です。三位一体改革しかり、分権改革の場において人材に対する議論が少ないことが懸念です。【送料無料】行政学新版価格:3,255円(税込、送料別)