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カテゴリ:医療
最近は癌の終末期を自宅で過ごされる患者さんも増えているようです。このような患者さんは、生前から近くの診療所の医師に看取りの依頼をし、臨終の際にはその医師を呼ぶのだと思っていました。ところが、このような患者さんが実際に亡くなるときには、具合が悪くなったことに驚いた家族が救急車を呼んでしまうことがあります。
呼ばれた救命士にとっては、癌末期の患者であろうと、心肺停止の重症患者として扱わなければなりません。また、運び込まれた救急病院にとっても、ただ死亡確認というわけにも行かないでしょう。 元々日本の救急医療は医師たちのボランティア精神で支えられた、きわめて脆弱な基盤で成り立っています。不要不急の症例はできるだけ救急医療を利用しないように心がけなければなりません。 癌やその他の死病の終末期の患者が心肺停止に陥ったとしたら、それは寿命が尽きたということなのです。救急医療の対象にはなりません。決して救急車を呼んだりしないでください。 中には、DNR(蘇生不要)の意思表示をしている患者の家族が救急車を呼んだ事例もあります。救命士としては、呼ばれた以上は蘇生術をしないわけにも行かず、人工呼吸と心臓マッサージをしながら病院に搬送しました。そのときの救命士の困惑ぶりは、メディカルコントロール協議会の検証票の記録として残っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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家族の教育や心のケアも必要だということでしょうか?それとも、本人の意思を理解し覚悟できていたつもりでも、いざその時が訪れると家族だけに…、と言ったお話なのでしょうか?
後者の場合が多いのであれば、事前に意思表示している患者さんに対しては、治療を拒否できるよう法的な整備が必要かも知れませんね。プロに諭されれば、冷静さを取り戻す家族も多いかも。ま、救急救命士の仕事ではないかもしれませんけど。 (2011.03.04 20:59:28)
wadjaさん、コメントありがとうございます。
こういう問題は当事者の意識だけでなく、社会的なコンセンサスが必要なのだと思います。 もう、老人医療にどれだけ社会的コストを払うのかという議論が必要な時代に来ているのでしょう。 行政がそんな議論をしようとすると、「姥捨て山か」なんていう人が出てくるのでしょうが。 何で急にこんなエントリを上げたのかと言いますと、心肺停止症例に対する救急隊員の活動の今月分の検証をしてみたら、そのほとんどが90歳前後の重篤な基礎疾患のある患者でした。当然助かる人は居ません。 これって、マンパワーを含めたコストの無駄遣いじゃないかと思いました。メディカルコントロール協議会を発足させた目的は「避けうる死」を減らそうと言うことですが、その主なターゲットは心筋梗塞です。今月分の数十症例の中に、そのような「避けうる死」の症例は皆無でした。 もう、大往生と言える死は、そのまま受け入れるという社会で良いと思います。 (2011.03.05 16:10:41) |