パワーあふれるストロボの使い方講座その2"その速さは旨味がない"
はい。お待たせをいたしました。(それなりに)長期企画"パワーあふれるストロボの使い方講座"ふれしの「どんどんぱふぱふ」今回はその2であります。前回はそもそも…シャロン「自然光っておわかり?」というネタでした。みほさん「強気の台詞要員になってない?^^;」シャロン「そうじゃないの?コウだと迫力ないし」無念至極。これでストロボを売ったという人がいたらいいなあ〜wと考えるほどの切れ味でぶった斬ったつもりなんで,その2に辿り着いた方はかなりちゃんと生き残った人たちであると理解しています。今回はその想定で話をするので,そうじゃない方は最初からやり直すか脱走をお勧めいたします。シャロン「言うわね〜」そりゃそうですよ。我らが愛すべきストロボに対し思い切りのない人間を振り分けるべくやってるんですから。シャロン「ここはパリスアイランドじゃないわよ」まあとにかく濃度ができる限り濃くなるようにお送りしていきますん♪みほさん「胸焼け注意かな^^;」さて,ここに集いし精鋭諸君の方々ならば自然光の露出は理解していることでしょう。もう理解していると言う前提なので,ざっとあげます。・絞り・シャッタースピード・ISO感度これです。この3つを全てマニュアル露出,つまり自分自身の匙加減で1日中扱えないとダメだとお話をしたわけです。ですが,ストロボを使うとここに2つ要素が加わります。・ストロボのパワー・ストロボの距離これら2つが加わります。ここまでは教科書通りのご説明です。シャロン「ん?」みほ「何かありそうだね」ありますとも。私はですねえ,ここにもう一つ加えたいわけでございますよ。・減光そう。ストロボには明るさが原則減るだけの概念があると言うことを付け加えたいのです。そして今までお話しした5+1の露出概念の中で,ストロボをパワー不足に貶めやすい要素は3つ。・シャッタースピード・ISO感度・減光この3つです。シャロン「一番多いのはISO感度ね」みほ「減光も多いよね」ところがぎっちょん。実は最近,シャッタースピードが原因である場合が増えているという情報が…。みほシャロ「え?なんで?」なので今回はシャッタースピードの話をします。長くなってますがお付き合いを。まずストロボが1回光る際のスピードってご存じでしょうか?これ非常に大事です。シャッタースピードで言うと1/15000〜1/30000秒です。とてつもない速さです。カメラのシャッタースピードの最速は1/4000〜8000秒程度。なのでストロボの光をシャッターで遮ることは不可能で,全ての速度域ですり抜けてしまいます。裏を返すとシャッタースピードは自然光のみを露出調整できる唯一の手段となります。自然光露出3要素のうち,絞り・ISO感度は自然光&ストロボ光を一緒くたに調整してしまいます。少し整理しましょう。・絞り:自然光&ストロボ光の一緒くた調整・ISO感度:絞りと同じ・シャッタースピード:自然光のみこれがシャッタースピードの特殊な特性です。例えば人やドールをメインに撮っていて,ストロボ1灯だけをメインの被写体に当てている場合を考えてください。背景だけ明るくしたいとなったとします。どうすればいいかは簡単でシャッタースピードを遅くすればいいのです。なので一見するとストロボのパワーには関係ないんじゃあないか?という疑問が浮かぶと思います。私もそう考えていました。シャロンやみほさんが驚くのも無理はありません。シャロン「それで磨かれているからねえ。ただ,確かにビギナーだと一つだけ罠があるわね」みほ「ああ〜…もしかしてー…^^;」はい。なんでシャッタースピードでストロボ光のパワーを落としてしまうか。原因は…ハイスピードシンクロです。これはいけません。確かにある機能ですが,ストロボの特殊性を思う存分生かすのには毒しかないものです。でも機能は存在します。しかも設定しないとカメラ側で自動移行してしまいます。だから気づかない間に陥ってしまうという場合がありうるのです。ではこのハイスピードシンクロというのはなんなんでしょうか?先ほど申し上げた通り,ストロボ光は超速度でカメラへ進入し,シャッターを通過していきます。実はシャッターって常に全開にしてから閉じているわけではありません。カメラはシャッタースピードを稼ぐためにある速度域からスリット露光という動作をします。少し難しいですが,この動画でご理解をいただきたいなあと。このスリット露光をしている速度域で,もしもストロボが通常の動作で発光してしまうと,あの超速の光がこのスリットを瞬時に通過していってしまいます。結果どうなるかというと,とあるところが縦方向に一筋だけ明るいという謎の写真が爆誕してしまいます。これを防ぐため,このスリット露光をしない限界のシャッタースピードがカメラごとに決められています。これがシンクロスピードと言いまして,カメラによりますがだいたい1/200秒前後に設定されています。これではシャッタースピード遅すぎじゃね?それ解消できないのん?という声に答えた機能がハイスピードシンクロとなります。これはなんなのかというとストロボの発光時間を無理やり変えて,スリット露光進行中の間はずっとストロボが光り続けるようにするというものです。あの1/15000秒の光を無理やり引き伸ばして1/250秒よりも長く光らせるのです。これでどんなシャッタースピードでも使えて安心!万事解決……んなわけなかろうが。そうです。ハイスピードシンクロには致命的な弱点があります。まずストロボにとてつもない負担がかかります。電池切れは早くなり,動作中の温度も高温になるためオーバーヒートして発光不能に陥り,挙句の果てには発光菅か回路が破裂音をあげながら故障することもあります。またスリット露光に対応するための光り方そのものが致命的なんです。手書きの図で申し訳ないんですが…左の通常の光り方はこのように一瞬だけパッ!と光ります。このパッ!が1/15000秒なんですねえ。パワーも最大限使えます。ですが右側のハイスピードシンクロは長く光らせなくてはなりませんから,省エネしながら無理やり長く光らせる分,パワーが極端に低下します。そう,これがパワー不足に陥る原因なんです。シャロン「ようやく本題に来たわね」みほ「でもこれくらいまで理解しないといけないというのはあるね」それにですねえ。このハイスピードシンクロをやってしまうと,ストロボのパワーに対してシャッタースピードが邪魔してきてしまうんですよ。ハイスピードシンクロだとシャッタースピード次第で自然光もストロボ光も影響を受けてしまう。しかもストロボに負担がかかる…あれ?マリーさん「それってストロボで撮る必要あるのかしら〜?」そうです。そんなんだったら高出力LEDライトを使って写真撮った方が遥かに賢い選択となるのです。つまり何を言いたいか?ハイスピードシンクロ使っている時点でストロボを使う意味は無ぁああああいいい!!!ということです。裏を返すと…ストロボをパワフルに使いたいのであればシンクロスピードの範囲内で使えば大丈夫だよ♪ということでもあるのです。ちなみにハイスピードシンクロを止める設定はカメラごとに必ず存在します。説明書をお読みになった上で使わない設定を選択してください。さすれば不安なくストロボをシンクロスピードの範囲内で使えるようになります。ここまでの話でハッ!とした方は是非ともご参考にしていただきたいと思います。長くなってしまいました。ですが,我々は諸悪の一匹目をようやく倒したにすぎません。残るは2匹,次は自然光上がりの方々がどうしてもできないあの操作への覚悟をしていただこうと思います。この操作への極度な抵抗感は理解しますが,それができなければストロボは使えないと断言していい。次回はみなさん,恐怖に打ち勝ちましょうぞ。というわけで今回はこれで読み終わり。次回もご期待の程を。