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カテゴリ:本
ちいさいおうち、というのは現在の私の心のオアシスであるところの家庭文庫の名前である。今のところは大先輩のNさんにおんぶにだっこ、好きなことだけ任せてもらい後はのんきに遊ばせていただいている。子どもたちがそれぞれ熱心に本を読んでいるその横で、お母さんたちがぺちゃくちゃ本の話をしている文庫、というのが9月の講座で私が紹介して以来ここのキャッチフレーズになってるらしいのだが、実際には本以外の話もいろいろしているので、ますますもって賑やか。
そんな文庫で3月以来話題に上らないことがないのが放射能。今いちばんホットなのもこんな2冊。うち1冊は先週レンタルが開始された庭球OVAを借りに行ったツタヤ(タッチの差で借りられてしまった。その後もまだ見られない)のセル本コーナーで目に入って即購入したもの。
9月末に出たばかり、『今ある放射能を消す食事』。店頭ではあまりにストレートなそのタイトルに奥さま雑誌系のムックかな、とパラ見で済ませようとしたところ、辰巳雅子さんの名前が目にとまる。最近見つけたベラルーシの部屋ブログ(こちら)の筆者の方ではないか。実は辰巳さんが翻訳したベラルーシの放射能対策本を楽天で注文中だったのだ。これは組み合わせて読むべき本に違いない。数日を待たずして2冊手元に揃い、ひと通り読んでこれは使えると文庫へ早速持って行ったのだった。 前者ではなんといっても即役立つのが最初の1章。キャベツは何枚剥く、人参は根もとから何センチ切り落とせばいい、といった主婦にとってもしかしたら今いちばん深刻な問題をイラスト入りでしっかり解説してくれている。本でネットで新聞でテレビで情報を集め、何が起こったか起こっているかは大まかにわかってきたけれど、じゃあ具体的にどう対処するの、というところで必要なのがこういう本だ。中部大学の武田教授のブログは直観的にはいいところを突いてくれているのだけれど、勢いあまって未確認情報やまた聞きで書いてしまったり、情報が精確でなかったりするところが多いので、それなりな読み方をしなければならないし、部屋の床を拭く以外の日常的な家事については奥さんにまかせっぱなしのためか基本記述が無い。この主婦と生活社の本は、そこのところがありがたいのだ。 不安と緊張の毎日が続く中、もう頭の一部が疲労で麻痺しかかっている日々の食事担当者に、こうすれば放射能をとりこまずに済みます、こうすれば体内の放射能を排出できます、とピンポイントで指示をくれる本なので、とりあえずこれだけはやってみようかともう1度台所に立つ気力が出て来る。元気が出る本とまではいかないが、不健康から1歩でも2歩でも離れようという気にはなれる。だってキャベツの外側を何枚か剥くだけで、残留放射能が7割も8割も除去できるんだから。 アマゾンのレビューで「作り手に放射能の専門家が1人もいないじゃないか」と星1つをつけている人がいたが、辰巳さんが提供したデータは、チェルノブイリで凄惨な被害を受けたベラルーシにおける最新の研究に基づくものだ。国立核エネルギー研究所長だった人が、事故後の実態調査に関して国から圧力を受けた為(岩波書店刊の証言集『チェルノブイリの祈り』参照)、民間に転じて作った研究所の25年分の成果だ。原発事故後の放射能の人体への影響について、これ以上の専門家と言える人たちがあとどれほどいるというのか(後はもう1国深刻な被害を受けたウクライナになら)。そのデータをベースに、病気の人のための食事の専門家の金谷節子さんが日本人向きの食事を提案してくれているわけだから、アマゾンのレビューにおける非難はちょっと当たらない。
辰巳さんが翻訳した本がこちら。『自分と子どもを放射能から守るには』。著者は上にも書いたベルラド放射能安全研究所のバベンコ氏。放射能と長年戦ってきたベラルーシの人々から、これから放射能と戦っていかねばならない日本人への贈り物のような本。こちらも併せて読むことで、科学的理解もさることながら、放射能と共に生きていくことへの静かな覚悟ができるように思う。とりあえずまず上の本を見て、それから気持ちに余裕ができたところで下の本を読むという順序がいいだろう。重版されたので大丈夫、手に入ります。 あ、1点だけ。どちらの本もしつこいぐらいにキノコ類は茹でて茹でて茹でこぼしてと書いてありますが、これは森できのこ狩をしてきた場合の注意です。屋内栽培をしている日本の食用キノコならあそこまでする必要はないと思います。 【11月11日追記:コメントを受け、11日付で新たな記事を書いています。まだまだ認識が甘かったです。Ciao*Bellaさん、ありがとうございました。】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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どちらも役に立ちそうな本ですね。
息子はもうだいぶ被曝したようなので排出する食事に関心があります。 図書館で予約しようと思ったら、すごい順番待ちでした。 私は小出裕章さんの本ばかり読んでいて、こういう実用的な部分が手薄になってました。 キノコ類に関してはハウスものも含めて3桁のベクレルが出ているので、私は九州産も含めて全部避けています。 給食も食べさせていませんし。 (2011.11.11 08:55:01) |