小雨のなか櫛渕八幡神社を出発します。
空が明るくなってきました。
途中のバス停でカッパを脱ぎ、再び歩き始めます。
旧道から新道に合流した辺りで、一台の車が私の前に止まります。
中から、おじいさんが下りてきて
「お接待させてください」
車の後ろを空けて缶コーヒーとパンをいただきます。
「いや~私は徳島県人なんで・・・」
と断ったほうがよかったのか?
お接待は遠くから来ている人にするものという意識があります。だから
「がんばってください」
といわれると複雑な気持ちがします。
「実は今日20番まで打って家に帰るんですよ」
と言ったら驚くのでしょうか?
貰ってはいけないものを黙って貰ったような気がして
なんか詐欺師のような気分です。
本当なら、お接待を受けたら、感謝の気持ちに納め札を渡すのが
作法なんですが、生憎雨によって納め札は背負子の中に
しまいこんでいます。
痛恨のミスです。
ところで、吉報です。
葦原のバスの転回上を発見しました!
立江から鶴林寺方面、3,5キロぐらいまで
小松島市営バスで行けます。
しかし、ここから先約二キロはバスがありません。
しかも、一部狭いところがあり、車がスレスレを走り
結構怖い道です。
本当ならバスでパスしたい道です。
休むところもなくトボトボ歩きます。
ふくらはぎが痛んできました。
程なく、勝浦川沿いの道に出ました。
15年前、ここで台風並みの強風と豪雨に見舞われました。
真っ直ぐ歩くことすら困難な風雨。
その中を20番鶴林寺へ向いました。
鶴林寺は標高500メートル、山の中腹にあり、
登り口の標高30メートルから3キロで
470メートルを登ります。
狂ったように荒れ狂い怒れる山は、私に容赦なく襲い掛かります。
合羽の中は汗だくとなり暑さで蒸れ、どんどん体力を消耗していきます。
立ち止まることすら恐怖に思える林の中で、私は道に迷い
ぶつかり擦れあう木々におびえました。
立江を午前7時頃出た私が鶴林寺に着いたのはお昼頃。
先を進むことは断念し、当時営業していた鶴林寺の宿坊に
宿を乞いました。
その日、鶴林寺へ徒歩で登ったのは私だけ。
立江から向ったお遍路さんは、あまりの風雨に麓で
泊まったそうです。
今までの遍路経験で最も厳しかったのがその時の鶴林寺。
しかし、再び鶴林寺が私の前に立ちはだかります。
勝浦川沿いに出たとき、道案内がありました。
鶴林寺まで7キロ。立江寺まで6キロ。
立江からたった6キロ???
見間違いではないようです。
もう一時を過ぎています。
予定なら鶴林寺に登り始めていなければなりません。
足の痛みと疲労がピークに達しています。
20番札所、鶴林寺に登ることを諦めます。
ただ、せめて、鶴林寺の登り口まで行きたい。
無情にも再び天から雨粒が落ちてきます。
再び合羽の行軍となりました。
粘りましたが、もう歩けない。
鶴林寺の登り口まであと2キロ。
鶴林寺まであと5キロ以上ある地点で先へ進むことを断念。
西岡上のバス停から徳島駅前行きのバスに乗車しました。
6月3日 二ヶ寺 一社 参拝 歩行距離 17キロ
15年の歳月が想像以上に重くのしかかります。
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