東京ドイツワイン協会新年会 和食とドイツワインの最適な実験の場となりました
東京ドイツワイン協会の新年会はここ数年は和食の店でやっています。今年は去年と同じ新宿三丁目のやまと楽で日曜の昼間に行われました。今年は39人の参加と例年より多く、当初組んでいたワインのラインナップを変更しなくてはならなくなったのですがそのおかげでもう一種類増やすことができましたし結果的にトータルとしてすばらしいラインナップとなりました。料理の写真を撮っていないこともありますしワインと印象に残った料理との相性を中心に書いていきます。 1 Selbach-Oster (Mosel) ゼルバッハ・オスター (飯田)リースリング ゼクトbA ブリュット Zeltinger Himmelreich 20072 Keller (Rheinhessen) ケラー (伏見)グリュナー・シルヴァーナ QbA トロッケン 2008 3 Christmann (Pfalz) クリストマン (八田)シュペートブルグンダー ブランドノワール トロッケン 20104 Philipp Kuhn (Pfalz) フィリップ クーン (日本未輸入)グラウブルグンダー トロッケン 20105 Pfeffingen (Pfalz) プフェッフィンゲン (ワイナックス)リースリング Ungsteiner Weilberg グローセス・ゲヴェックス 2009 6 J.J.Prüm JJプリュム (八田)リースリング Wehlener Sonnenuhr シュペートレーゼ 2009 7 Selbach-Oster ゼルバッハ オスター (飯田)リースリング Zeltinger Schlossberg シュペートレーゼ 2006このゼクトは試飲会で気にいっていつか使いたいと思っていたものです。コストパフォーマンスがよいですしやわらかい味わいでマイナスの部分をほとんど感じなくて和食系との相性は万能でとても使いやすいスパークリングワインだと思います。きりっとしているのが好きな人には物足りなく感じるかもしれませんが。ケラーのワインは、ほとんどの人が聞いた事がないジルヴァーナーの亜種で(この名前にしていなくて単にジルヴァーナーとしているところもあるようです)、ジルヴァーナーより硬めで辛口の味わいです。竹の子や菜の花などが入った和えものとの相性が良かったです。クリストマンのブランドノワールは赤の品種ピノ・ノワールなのですが皮などを使っていなく実のみなので色素がでないので白ワインになっています。シャンパンなどではよくみられる製法です。ほのかに甘みもあり酸もあり非常に飲みやすくおいしく飲めました。赤ワインぽいボリュームというか熟したかんじもあります。このワインはけっこうおすすめです。2010年という事で若いからこそ良いのかなというのも感じました。湯葉や茶碗蒸し(ブロッコリーのすり流し入り)など少し甘みがありやや味の濃いものにあいました。とはいえ赤ワインのように濃いめのソースなどにはあまりあわない気はします。刺身にもあうかなーと思っていたのですが、イカ刺しは相性抜群でした。しかし他は全然だめでした。脂ののったトロなどなら赤のピノノワールとあうと思うのですが、それが同じピノノワールでも赤と白の場合で全く異なることがわかりました。ドイツVDP会長ご自慢のビオディナミ・ピノ・ノワール!ブラン・ド・ノワール・シュペートブルグンダーQbAトロッケン[2010]750ml(クリストマン)クーンのグラウブルグンダーは去年6月のフェストで使ったものです。じっくりと飲むとまた違った魅力を感じることができます。参加者でこのワインを気に入った方が多くいらっしゃいました。日本におけるドイツワインの今までのイメージにはないタイプの辛口ワインで、日本ではこういうのはほとんど手に入らないのですが今のドイツの主流であるタイプなのです。気品と複雑さをかね揃えたしっかりとした味わいの辛口ワインです。ドイツのリースリングの辛口は日本でもやっと認知されてきましたがグラウブルグンダー(ピノグリ)、ヴァイスブルグンダー(ピノブラン)など他の白の品種でも質の良い辛口ワインは多く造られています。まぐろの赤身と鯛の刺身、餡がけの生麩の揚げ出しにあいました。このタイプのワインはわりと和食に関しては何とかなる要素が多いような気がしました。ただ次に出てきたブリ大根柚子味噌がけにはグラウブルグンダーは全くあいませんでした。そこで他のよりは本数は少ないけれど用意をしていたシェーファー・フレーリッヒ リースリング ハルプトロッケン 2006をここで登場させました。これが驚くほどブリ大根とぴったりとはまりました。前から把握はしていたのですが、甘みのある和食(味噌、しょうゆを使った料理、玉子焼き、蕎麦など)には糖分の残っているリースリングがとてもあうのです。このハルプトロッケンはそこまで甘みはあまり感じず糖分があることがわかるくらいなのですが、それでもその糖分が良い作用を及ぼしている気がしました。そして、玉子焼きなどはハルプトロッケンよりは甘口のカビネットのほうがよくあうのですが、魚の場合はハルプトロッケンやファインヘルプ(ハルプトロッケンと同等の甘さとされていますが残糖規定がないのでより甘く感じるものもあります)のほうが相性が良い気がしました。辛口の目玉はプフェッフィンゲン(ワイン街道のミッテルハールトの北の町デュルクハイムよりもう少し北の畑を所有)のGGです。以前試飲させてもらった時の印象だと酸がけっこう強くて幅を利かせているという印象があって少し不安だったのですが、今回飲んだらそんなに酸は強く感じなくてやわらかい味わいの中に酸が溶け込んでいるといったかんじでした。硬いというよりはやさしいタイプだったのがちょっと意外でしたが酸がしっかりあるので弱くは感じなくてGGらしい飲みごたえのある満足できる辛口ワインでした。辛口の中ではこれが一番人気で、会員の中にはドイツワインを知識としてはあまり詳しくない方もいらっしゃるのですがみなさん経験は豊富なのでさすが舌は肥えているなと思いました。ぶりやその後のご飯と味噌汁との相性は悪くはなかったと思います。(ワインに集中して相性はそこまで意識はしてませんでした)。GGはトロッケンなので糖分は残ってないのですが糖度の高い葡萄から造られているのでボリューミーでフルーティなものが多く、なおかつこのワインはやわらかいので和食との相性は悪くはないのです。そして締めは甘口シュペートレーゼ2種です。プリュムのシュペートレーゼは先に決めていたのですが、どうせなら同じ等級で飲み比べると面白いと思ってゼルバッハを使いました。ヴェーレンでもゾンネンウーア(ツェルティンゲンの)でもなくシュロスベルクの畑のにしたのは以前04を飲んで好印象だったからです。それにヴェーレンの同じ畑だと明らかに負けて劣ってしまうと感じて相乗効果が得られないような気がしたというのもあります。シュペートレーゼは通常は食後に出すのがポピュラーですが、今回はあえてご飯と味噌汁が残っている状態で提供してみました。けっこう冒険で怖かったのですがこれがぴたりとはまりました。梅が入っていて少しすっぱいご飯(みょうが入り)と鉱物的で複雑みあふれる甘口シュペートレーゼはなんの違和感もなくとけこみました。ご飯をワインの存在感が包み込んだといったかんじです。僕は漬物が嫌いなので試していないのですが、漬物とこのプリュムとの相性も良かったそうです。この2009はおととしの9月にモーゼルでのVDPの新酒試飲会で飲んでかなり好印象だったものなのですが、だいぶ落ち着いてきたのか少しまったりとしていてそれでぼやけたかんじになっていました。フレッシュな状態だったからこそ糖分、土壌による複雑さなどのバランスがすごくよかったということです。もう後は5年くらい以降が飲み頃になると思います。プリュムのような長熟の甘口ワインは1年以内に飲むかかなり待ってから飲まなければいけないというのがよくわかりました(等級が上になればなるほど)。ゼルバッハのほうは糖度は高く感じなかったので今が飲み頃だと思いました。プリュムのに比べると複雑さはないのですがそれがマイナスかというとそういうわけではなく、すっきりとした味筋とほどよい甘みのバランスがちょうどよくおいしく飲めました。僕はどちらが良かったか選べと言われたら現時点ではゼルバッハを選びます。この二種からいえることは、銘醸、名穣だからといっていつも上なわけではなく年数の飲むタイミングによってその時々のベストのワインがある、ということです。なので有名な造り手や畑だからということだけで選ぶのではなく、少しランクが下の造り手や畑でも飲み頃の年数経過のワインを選んだほうが正解ということも多々あるのです。これは醸造所のポテンシャルや年ごとの技量の浮き沈みは除いての考え方です。醸造所ごとの年の当たりはずれなども加味しなくてはいけないのですがそれはまた別の話しです。ということで食事との相性もトータルでのワインの満足度もかなり高い会になったと思います。不安要素もいくつかあったのですが結果的には大成功でした。和食というか日本人の食卓に一番あわせやすいのはリースリングのファインヘルプだと僕は考えているのですが、そういうワインだけではなく和食とあわせるのはけっこう怖かったのですが、あわせてみてわかったことが多々あったのでとても良い経験となりました。相性に関しては僕は専門分野ではないので伝わりやすい表現ができていないことが申し訳ないのですがニュアンスだけでも感じとっていただき、自らも実験してみようと思っていただければ幸いです。終わった後に撮ったこの一枚しかなくてすみません。刺身、ぶり、デザートなども写ってます。