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カテゴリ:音楽・テレビ・映画・小説
久しぶりに骨太の新書を読んだ気がします. 都市社会学ですが,地理学の成果もかなり引用されていて非常に読みやすかったです. 特にカステルの成果に言及した部分は印象的です. カステルは都市を資本主義の社会構造の中に明確に位置づけることができると考えた. 労働者は消費活動を通じて再生産されるが,消費活動には個人的消費と集合的消費の二種類がある. 個人的消費とは,人々が主に家庭で,自分の所有する消費手段を消費することである. これに対して集合的消費とは,大規模な住宅地や集合住宅,道路や鉄道,学校・病院,文化施設など,公共的な性格を持つ消費手段,つまり集合的消費手段を消費することである. 産業の発展によって,大量の労働力が必要になると,もはや労働力の再生産を,個人的消費だけで賄うことはできなくなる. こうして集合的消費の必要性は高まり,大量の集合的消費手段が用意されるようになる. この供給量や利用のしやすさで都市に格差が生まれるというものです. こうした理論的背景を軸にして,実際に東京23区を中心とした下町と山の手の格差について実証していきます. ここで山の手とは標高20m以上の閑静な場所が多い台地を示し,下町とは神田,日本橋,京橋,下谷,浅草等の商人たちが集まったエリアです. 社会的地位や風俗なども明確に分かれており,戦後山の手と下町との格差はますます広がったといいます. さらに興味深いのは両者の地域間格差のみならず,地域内の格差にも焦点を当てていることです. 両者の格差ともに拡大していることが統計調査により明らかにされます. 都心四区は,旧下町地域を中心にジェントリフィケーションが進行し,旧中間階級とマニュアル労働者層が駆逐されて,富裕層が住む地域としての性格を強めてきた. 下町は,都心に近い部分と臨海部でジェントリフィケーションが進行し,新中間階級の比率を高める一方,貧困層の集積が進んでいる. 山の手は,古くからの住宅地を中心に多数の豊かな新中間階級世帯を含むが,労働者階級の構成比が急増していることから,その内部にはかなり大きな格差が存在している. このように都心四区,下町,山の手はそれぞれ,内部に大きな格差を含み,また格差の構造を変化させているが,相互の間の格差構造には基本的に変化がなく,むしろ拡大傾向にある. こうした地域内格差と地域間格差の積み重ねによって,東京は分極化を進行させてきたのである. その後の章では世田谷の下町と山の手(三軒茶屋から下北沢)を歩いたりしています. かつて住んでいた場所に近いと格差を実際に感じます. 大田区も同様です.蒲田・大森と田園調布が同じ大田区というのが信じられません. 川崎市も東西に細長いので沿岸部から丘陵地まで見てみると景観上の違いが一目でわかります. このように階級都市という観点から多様な東京のすがたをあぶりだした本書は,今後講義をする上でも大変参考になりました. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.08 00:47:04
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