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藻緯羅@ Re:焼き菓子(12/25) 教え子からの声かけは、教師冥利。
2015.04.16
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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。

【目次】(「BOOK」データベースより)
ニューギニア人ヤリの問いかけるもの/第1部 勝者と敗者をめぐる謎(一万三〇〇〇年前のスタートライン/平和の民と戦う民の分かれ道/スペイン人とインカ帝国の激突)/第2部 食料生産にまつわる謎(食料生産と征服戦争/持てるものと持たざるものの歴史/農耕を始めた人と始めなかった人/毒のないアーモンドのつくり方/リンゴのせいか、インディアンのせいか/なぜシマウマは家畜にならなかったのか/大地の広がる方向と住民の運命)/第3部 銃・病原菌・鉄の謎(家畜がくれた死の贈り物)



【内容情報】(「BOOK」データベースより)
世界史の勢力地図は、侵略と淘汰が繰り返されるなかで幾度となく塗り替えられてきた。歴史の勝者と敗者を分けた要因とは、銃器や金属器技術の有無、農耕収穫物や家畜の種類、運搬・移動手段の差異、情報を伝達し保持する文字の存在など多岐にわたっている。だが、地域によるその差を生み出した真の要因とは何だったのか?文系・理系の枠を超えて最新の研究成果を編み上げ、まったく新しい人類史・文明史の視点を提示した知的興奮の書。ピュリッツァー賞・コスモス国際賞受賞作。朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第3部 銃・病原菌・鉄の謎(承前)(文字をつくった人と借りた人/発明は必要の母である/平等な社会から集権的な社会へ)/第4部 世界に横たわる謎(オーストラリアとニューギニアのミステリー/中国はいかにして中国になったのか/太平洋に広がっていった人びと/旧世界と新世界の遭遇/アフリカはいかにして黒人の世界になったか)/科学としての人類史




1万3000年にわたる人類史の謎を解いています。
上下の2巻を読み切るのはなかなかに大変でしたが,書いてある内容はかなり平易でした。

本書を一文で要約すると,
「歴史は,異なる人々によって異なる経路をたどったが,それは,人々の置かれた環境の際によるものであって,人々の生物学的な差異によるものではない」
おもに地理的要因が歴史にどれほど影響を与えたかに注目しています。
筆者は進化生物学者としてフィールドワークを行い,さまざまな人間社会に接してきたといいます。

たとえば,ポリネシア社会の多様性については,6種類の環境要因を指摘しています。
島ごとに異なるそれらの要因とは,気候,地質,海洋資源,面積,地形,隔絶度である。

また,ニューギニアの人々が独自に誕生させた食料生産システムの展開が制約された原因を,この地域の人々の特性に合ったわけではなく,この地域の生物相や環境要因にあったと結論付けています。

ユーラシア大陸の人々は,たまたま他の大陸の人々よりも家畜化可能な大型の草食性哺乳類を数多く受け継いできた。
このことは,やがてユーラシア大陸の人々を人類史上いろいろな面で有利な立場に立たせることになるが,この大陸に家畜化可能な大型の草食性哺乳類が多数生息していたのは,哺乳類の地理的分布,進化,そして生態系という三つの基本的要素がそろって存在していた結果という。

上巻の最後には,病原菌が人類史上で果たした役割に言及している。
少数のヨーロッパ人が,圧倒的な数の先住民が暮らしていた南北アメリカ大陸やその他の地域に進出していき,彼らにとってかわったのは,ヨーロッパ人が,家畜との長い信仰から免疫を持つようになった病原菌を,とんでもない贈り物として,進出地域の先住民に渡したからと締めくくっています。

アメリカ大陸に関して,食料生産をスタートするタイミング自体が遅かったこと,そして家畜化できたり栽培化できたりする野生動物の種類が限られていたことに加えて,地理的要因や生態的要因が大きな妨げとなって,南北アメリカ大陸では主要な発明や,技術や,作物や,家畜といったものが迅速に拡散しなかった。
それに対して,東西方向に横長な陸塊であるユーラシア大陸では,緯度や生態系の違いをまたぐことなく,さまざまなものが各地に拡散していけた。ところが,南北方向に縦長で,とりわけパナマのあたりでぎゅっとくびれている南北アメリカ大陸は,砂漠やジャングルによっても地理的に分断されていた。そのため,食料の生産に適した地域や,人が密集して生活できる地域がユーラシア大陸のように広く続いていなかった。

ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できた要因として,白人の人種主義者が考えるように,ヨーロッパ人とアフリカ人に人種的な差があったからではない。
それは地理的偶然と生態的偶然のたまものに過ぎない。
しいていえば,それは,ユーラシア大陸とアフリカ大陸の広さの違い,東西に長いか南北に長いかの違い,そして栽培化や家畜化可能な野生祖先種の分布状況の違いによるものである。
つまり,究極的には,ヨーロッパ人とアフリカ人は,異なる大陸で暮らしていたので,異なる歴史をたどったということなのである。

エピローグには,人間社会の展開に影響を与えうる環境上の要因を4つ指摘しています。
第一に,栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況の違い
第二に,伝播や拡散の速度の違い
第三に,異なる大陸間での伝播に影響を与えたもの
第四に,それぞれの大陸の大きさや総人口の違い
地理的な要因としては,技術の発達は,地理的な結びつきからプラスの影響とマイナスの影響を受けている。その結果,時間的に長い尺度で評価した場合,技術は,地理的な結びつきが強すぎたところでもなく,弱すぎたところでもなく,中程度のところで最も進化のスピードが速かったとしています。
過去1000年の技術の発達でいえば,中国は地理的な結びつきが最も強かったところの例であり,ヨーロッパは中程度だったところの例であり,インド亜大陸はもっとも弱かったところの例だということだろう。

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一言でいえば,人類の進化の地域差の要因は,環境決定論に帰結するということです.
本書ではよく,たまたまとか偶然という言葉で要因を説明することがあります.
物事には原因と結果の関係が存在するといいますが,偶然性でしか説明のつかない事象もまだ多いのだということだと感じます.
そこには,長い歴史の中における地域間の関係や気候変動など,時間や空間のスケールをどのようにとるかでいかようにも人間の進化に影響を与えうる要因が複雑に絡み合っているのではないかと思います.
その多様性を考慮しすぎると,要因間の関係が複雑すぎて説明がしづらくなります.
多様性をそぎ落とすと,ある要因だけをことさら強調してしまいがちになります.
このバランスをいかに考えるかですが,特に日本の地理学者にとっては,あまりに空間と時間のスケールが大きすぎて,本書のように物事を単純化して描ききることはできないという印象がぬぐえないのだと思います.
強調された出来事は,ある面では的を射ているかもしれませんが,ある民族の拡散を促す必要条件であって十分条件ではないように思えます.
もっと他に考慮されるべき要因があるのではないかと思わせるある種明快な論理が貫かれています.





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最終更新日  2015.04.16 00:19:57
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