実は、旅行に出る前から台風12号が変な動きをしていて、関東・東海に上陸した後、近畿・瀬戸内・九州へ抜けるのではないかと言われていた。本州を東から西へ縦断するというとんでもないコースだが、その話で行くと、今日の夕方辺りから北関東(群馬県・栃木県)に雨雲がかかる可能性が大である。宿に早めに入って、天候を見て明日の動きを決めようと、今日泊まるホテルニュー伊香保に電話を入れ、バス停まで迎えに来て貰った。
伊香保温泉は、草津温泉と並んで群馬県を代表する名湯。発見はかなり古く、『万葉集』巻14に9首ほど、伊香保の名が登場する。
伊香保ろに 天雲い継ぎ かぬまづく 人とおたはふ いざ寝しめとら(巻14-3409)
伊香保ろに 沿ひの榛原 ねもころに 奥をなかねそ まさかしよかば(巻14-3410)
伊香保ろの 夜左可のゐでに 立つ虹の 現はろまでも さ寝をさ寝てば(巻14-3414)
上つ毛野 伊香保の沼に 植ゑ小水葱 かく恋ひむとや 種求めけむ(巻14-3415)
伊香保せよ 奈可中次下 思ひどろ くまこそしつと 忘れせなふも(巻14-3419)
伊香保嶺に 雷な鳴りそね 我が上には 故はなけども 子らによりてぞ(巻14-3421)
伊香保風 吹く日吹かぬ日 ありと言へど 我が恋のみし 時なかりけり(巻14-3422)
上つ毛野 伊香保の嶺ろに 降ろ雪の 行き過ぎかてぬ 妹が家のあたり(巻14-3423)
伊香保ろの 沿ひの榛原 我が衣に 着きよらしもよ ひたへと思へば(巻14-3435)
ちなみに「伊香保ろ」とは、榛名山のことである。
これらの歌碑が、伊香保温泉のそちこちにあるので、捜しながら周ってみるのも一興か。