反町康治という最高の選択
今年の松本山雅FCの監督は、反町康治監督だそうで。これは、松本山雅にとってすごくいいニュースなんじゃないかな。松本山雅の最大のウィークポイントは、監督。川崎フロンターレも、監督に問題があるのは同じなんだけれど。山雅の場合は、もっと深刻で。なにしろ昨年監督をやった加藤善之GMは、S級ライセンスを持っていない。J2昇格を果たしたものの、どこかから監督を迎えるしかなかったわけ。そういった状況の中で、反町さんを監督に迎えることができたのはベストの選択だったと思う。 反町さんといえば、北京オリンピックの時のU-23日本代表の監督。あのときの反町さんの采配ぶりには、自分としてはいまだに納得していない。あのときのU-23日本代表監督が反町さんでなければ、日本は北京オリンピックでもっといい成績を収めることができたはず。 次から次へと新しい選手を呼んで。軸となる選手を固めないまま、オリンピックの本番を迎えてしまった。あのときのU-23日本代表は、チームとしての体をなしていなかった。戦術もころころ変わって。最後は選手から造反まで起きる始末。代表チームの監督というのは、クラブチームの監督と違って。いろいろな選手をテストできるために、ついついこういうことが起きてしまう。 確かに北京オリンピックでは、チーム作りに失敗したけれど。反町さんは、アルビレックス新潟、湘南ベルマーレと、過去に2つのJ2チームをJ1に昇格させている。J2昇格初年度の松本山雅としては、最高の監督を迎えたんじゃないかな。それにしても、よく反町さんが松本山雅の監督を引き受けたものだと思う。何もJFLからJ2に昇格したばかりのチームじゃなくても、もっと他からのオファーもあったんじゃないかと思うんだけれど。 松本山雅には、アルウィンという立派なスタジアムがあって。毎試合、7,000人を超える熱いサポーターがスタジアムに押し寄せる。でも、自慢できることと言えばそれくらいしかない。アルウィンの天然芝はボコボコで、Jリーグからお叱りを受けるほど。現在は芝の養生中で、スタジアムを使うこともできない。専用の練習場もなければ、クラブハウスもない。クラブの運営規模は6億円で、J2では平均以下。外国人の補強の予定もない。 それでも、反町さんが山雅の監督を引き受ける気になったのは、なぜだろう。練習着だって、自分で洗わなければいけない。亡くなった松田直樹ですら、自分のユニフォームは自分で選択していたというのだから驚き。かつて日本代表だった選手が、かつてU-23日本代表監督だった人が、自分で洗濯をしなければならないチーム。それが松本山雅FC。そんな環境でもこのチームには、反町さんに監督をやりたいと思わせる「何か」があったということなんだろう。 「今は世界中がバルセロナのサッカーをまねする傾向が強い。だけど、あれはバルセロナしかできない。同じことをしていたらチームは崩壊する。自分たちの身の丈に合ったサッカーをしきゃいけないんだよ」「かといって、守備一辺倒のチームを作る気は一切ない。守備も攻撃もやらなきゃ面白くないし、今のサッカーは両方できないとダメ」「自分たちから点を取りに行くような攻撃的姿勢を常に持っていなきゃいけないと思うよ」。こんな発言を聞くと、反町監督がどんなチームを作るのか、とても楽しみになってくる。 今年の山雅は、とてもじゃないけど上位を狙えるチームじゃない。下手するとJFLへ逆戻りという可能性だってある。当然、ボールポゼッション率は低い。そういうチームを、どう戦う集団に変えていくのか。「しっかりと地に足をつけて、チームの土台をつくっていきたい」と語る反町監督。「やるからには、ここに骨を埋めるくらいのつもりでやっていくよ」という言葉に期待したい。