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カテゴリ:舌戦又はのち、のろけ
きょうからしばらく、私と彼女のことを書こうと予定していたが、雲行きというのか風向きというべきか、言葉遣いがわからないが、ともかく向こうの状況に変化が起きて来た。かねて私は、彼女に見合いせよ、東部へ戻れなどと勧めて、なるべく私へは近づくなと、暗に遠ざける意思を告げて来たが、その時は相手は聞く耳持たなかった。
だが、夏至の太陽の如くか、私の告げた言葉はじわじわと効いて来た。これが私のうぬぼれならば、相手の心に変化が起きたということでも良い。いずれにせよ、私は深入りは避けて、情交さえ控えた。いざという時、やましいところがないよう、慎重に事に臨む意図だった。夕子と仮名をつけたけれど、この名前を登場させるのもあと何回になるか。 結論めいたことを言えば、私たち二人は同居出来ないと思う。それより先に、向こうに変化が現われたから、もはや同居出来る出来ないなぞということも、どうでも良いことになるかも知れない。とりあえず、下書きにとどめた文章があるから、いよいよという時までつづってみる。 この夏7月21日に、彼女がバイクで来た。あいにくのにわか雨の土砂降りにあって、急きょ近くのモーテルに飛び込んだ。ぬれねずみになって一時的に冷えた体を暖めるために、二人で風呂に入ったが、これも交代だった。湯上りの一服のあいだ、穏やかな会話を交わして、お互い用意したTシャツに着替えて、そのまま部屋を出て別れた。その翌日早朝の電話の話だ。 「きのうのきょうなのに、どうして正反対のことを言うの ! ? 」と半分寝ている頭に轟くような怒りの言葉がぶつけられた。 答えた、「せっかく高速をはるばる来るというのに、その場でいやな気分にさせること言えないだろ。風呂だって、今朝言うつもりの本心があったから、調子に乗って二人で入るなんてことしなかったんだよ」 少し電話の向こうで考えているようだったが、「・・・わたし、事と次第によっては思い切った行動にも出るし短気なの ! ! 」と地震で言うと次にいきなり激震が襲うようなナゾめいた前ぶれを告げた。 「単刀直入に言うわ。わたしがあなたに近づくことに、ためらいがあるのね ! 」 その通り。私はこれでも女不信が根っこにある。彼女の人格を信用出来ぬわけではないが、女との付き合いや同居に、曰く言いがたい不信の念をぬぐえぬ。 「つかず離れずの継続は限界か?」と問うた。 「去年以来の形を続けたいと言うのね」と彼女。その通り。 「俺も思い切って言うけど、一旦深い仲になって、その仲がこじれて、しまいには金銭絡みになると、今の時代、男が損する風潮だ。去年暮れ、茶飲み友達でいいと言ったのはそっちだったな」と私。 「今度仲がこじれるおそれを、あなた、まだ感じているの ? わたし、そんなに信用ならない何かを感じさせるの ? わたしにはわからないわ。例えばどんなとこ ? 」と答えを迫る。 「それがわかれば悩まない。逆の例で言ってみるよ。確か日記には書かなかったかも知れないけど・・、お前今年の二月半ばごろ、しばらく一人でよく考えてみたいってメール寄こしてやっぱり三月半ばくらいまで音信を絶ったことがあったよな。あの時の俺の気持ちがどんなだったか、少しは考えたことあったか? 」と、言いにくいことをぶつけた。 「・・・」返答なし。私は続けた。「一ヶ月待つ身の心細さを想像したか? 」 「・・・」返答なし。私は続けた。「俺の何が悪かったか、何がお前自ら進んで孤独になりたい気にさせたか、あれこれ考えあぐねたんだ。俺に言わせればな、どのみちお互いの生活は孤独だろ。だったら、メール交換ぐらいしてくれてもいいと思ったんだ。それが一ヶ月、なしのつぶてだった。女は、いや、お前はなぜメールさえ途絶させたんだ? 」 ようやく話し始めた。「一ヶ月後にメールで謝ったでしょ・・・あなたもそれで許してくれたでしょ」 「今後、再び三たびお前の心境に変化が起きて、そのたびに音信を絶たれるおそれを感じるんだよ。だから、深い考えもなしに、お前が次第に俺の住まいに近づくのは、やっぱり時期尚早(しょうそう)じゃないかという心配をぬぐえないんだ」と私。 とにかく結論を急ごうとするのが彼女の欠点だと思う。「そう言えば、電話はほとんどわたしからってことに決めてるわね。メールもわたしからが多いし・・・あなた、もしかして、わたしにそれほど執着がないんじゃない ? 」 私は結論を急ぎたくない。「執着はやがて未練になる。俺はそれが恐ろしいんだ、本当は・・」 彼女はポツリ言った。「まだ見合いの話が来てるの。わたし、やっぱり義理だけでも見合いしてみようかしら・・」ふてくされたようだが、この言葉を待っていた。 「いいか、お前には充分これからでも結婚する資格はある。でも今の俺にはその資格がない。二人がいくらその気でも、世間は通らないんだ。まずお前の両親が許さない。九月復帰までにはまだたっぷり時間がある。見合いして、少しでも悪くない話と思ったら、相手と付き合ってみろ。今、お前が見ている俺は幻影だ。ろくな仕事もないのに生活に余裕があるように見えるのも、50過ぎてパラサイトシングル同然の俺が、悠々自適の隠居生活してるように錯覚してるだけだぞ」と、かなりみっともないことだが言った。 私は続けた、「いいか、九月までのあいだに真剣に見合いして、付き合ってみろ。それでも気持ちが変わらなかったら、改めて俺との付き合いを考え直してみても遅くはない。 だからな、下宿は前と近い場所をさがせ」 彼女がまたポツリと言った。「一つ聞かせて。あなた、今わたしのこと、どう思ってる ? 」 その場しのぎの言葉を伝えても無意味と思ったから、これも真面目に答えた。「今後俺に新しい縁が訪れるとはこれっぽっちも思ってない。去年再会してつらいのは、俺だよ。思い出してみろよ。俺はフラれたことはあっても、俺から義絶を言い渡した相手は一人もいないだろ? もっと気持ちに余裕を持てと言いたいんだよ」 「どういう意味 ? 」察しが悪い。逆効果になるおそれを感じたが言葉をついだ。 「俺はいつでも待つ立場ということだよ。お前が目が回る持病を起こした時も、冬の朝早くナナハンですっ飛んで行って、急いで入院させたろ。お前にとって俺は常に待機状態なの。昔はやった何とか君だよ」 やや安心したように返した、「わたしが来てと言ったら来てくれる ? 」 「そうだよ。その代わりもう来ないでと言ったら行かない。だから、最悪の事態を考えて、富士市には来るなと言ったんだ、今度はわかるか? 」と、そろそろ呑み込めとの思いで告げた。 「せっかくですけど、その考え、こんなふうに修正させてもらってもいいわよね。つまり、とりあえず富士市にアパートさがす。それで万一仲がこじれる時が来たら、わたしは前と近いところに引っ越す。どう ? 」と、別案で攻めて来た。なるほどね。 「まあ、それなら、やめろという資格は俺にはないな」と答えるしかない。 「バカっ ! ! 」と来た。えっ? いきなり何だこの展開は・・? 「わたし、16の時からあなたと付き合って来たつもりよ。だから、きょうここでプライドなんか捨てて、ハッキリ言うわ。わたしはあなたと離婚した25の時から15年間、誰とも付き合ったことないの。わたしのわがままで一旦は別れたけど、いい ? 聞いてる ?」と、何だか凄みを帯びて来た。聞いてるよと言った。 「わたしは今更ほかの男の人に・・、言いにくいけど、抱かれたりいちゃいちゃさせられたりなんて、もういやなの。あなたが、口で言うほどいやらしくもなければ、べたべたなんかしない人だということも、すっかりわかって安心出来る男の人だから、わたしもきょうまであなたと仲良くして来られたの。わかる ? 」と、攻守交代してしまった。 彼女は言葉をついだ、「ん、もお鈍いわねぇ ! わたしにはもうあなたしかいないんです ! ! ううっ・・、うっうっ・・! もう、お願いだからわたしをいじめないで・・!」と、泣き出した。 ほお・・。このつらで俺がそんなに想われてるかねぇと、ひとごとみたいに思った。鏡でも見ようかいと思ったがやめた。これだけはすべからず。 「ごめんなさい・・。スクロール・ボックス、縮んじゃったでしょ」と彼女。 「うん、4 : 3の画面みたいになっちゃった」と私。 「きょうのテーマ、書けそう? 」と申し訳なさそう。 「なに、これがテーマだよ。さすがにこの話のあとに怪談テーマじゃ合わないから、この下書き、九月以降にまわす」 何か、こいつもずいぶん孤独なんだということを感じてしまって、つい口を滑らせた。怪談テーマこれからという時のことだ。 「よし、天気良かったらきょうにでもこっちへ来い。アパートさがししようぜ」 「ホントっ ! ! 良かったーっ。・・うっ、うえーん・・! ! 」ありゃ、幼児みたいに泣き出しちゃった。やっぱり鏡見て、自己嫌悪に陥ろうか。 7月のこのころは、まだこんな雰囲気だった。九月に入ったばかりで既に何かの変化が起きている。 パソコンメールも来ない。キーボードを打ちたくないのか、打てぬ状況なのかわからない。 父親が昨日来たことは確かだ。私は常に待つ身だが、この立場にもそろそろ疲れた。 もはや、一日も早くいずれなりとも決着に至ってもらいたい気持ちだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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