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2021年10月25日
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カテゴリ:クラシック
ミューザ川崎シンフォニーホール 14:00〜
 4階左手

 デュティユー:交響曲第1番
 モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
 リゲティ:ルクス・エテルナ (レクイエム Communioの前に)

 ソプラノ:三宅理恵
 メゾソプラノ:小泉詠子
 テノール:櫻田亮
 バス・バリトン:ニール・デイヴィス
 新国立劇場合唱団
 東京交響楽団
 指揮:ジョナサン・ノット

 グルベローヴァが亡くなったので喪中ではあるのですが、今日の予定が無くなって、まぁ、家に居てグルベローヴァでも聞こうか....と思っていたのだけれど、昨日の夜チェックしたら、ラファウ・ブレハッチのサントリーホールの公演、この東響のミューザ川崎の公演、どちらもホールのWEBチケットだと前夜まで買えるのですね。空きがあって、フラフラと買ってしまいました。ラファウ・ブレハッチも、休日公演が無いと思っていたからそっちにもかなり揺れたのだけれど、都心よりこっちがいいかなという理由と、プログラム的にブレハッチの方はなんとなく踏ん切りが付かなかったので。悪くないプログラムではあったんだけれども......

 東響は、フェスタサマーミューザ以来です。結構聞いてるな.........
 名曲全集は、東響の川崎定期とは別に、比較的人口に膾炙した曲を中心にプログラムを組むシリーズなのですが、デュティユー.............どうなってんの............いや、悪かないけれど、いいのか...........いいけどさ.........
 昨日のN響も満席に近かったですが、こちらもそこまでは行かないものの普段のコンサートの入りとほぼ同じレベル。ピット席がガラガラだったのは、多分、元は売ってなかったんじゃないかなと。合唱が入りますからね。結局合唱は舞台に乗ったので、後から売りに出したのかな。

 前半はデュティユーの交響曲第1番。多分初めて聞く曲です。少なくとも生演奏では聞いたことはない。最近はこういうこともあまりないのですが、例によって予習はしない主義.....
 このところのN響を続けて聞いているのもあって、響きは当然気になるのですが、率直に言ってかなり響いてはいました。ただ、それは、すり鉢どころかビアジョッキみたいなホールであるミューザ川崎だからであってのことだろうなとは思うのですね。無論、ここをレジデンスにしている東響だからというのもあるにせよ、だからN響はダメで東響はいい、というわけではないと思います。
 加えてどういう曲かというのは大きいと思います。デュティユーの交響曲第1番。既に述べた通り、初めて聞く曲ではありますが、時期的には戦後に書かれた無調の曲ではあるけれど、むしろ先祖返りしたような曲。ドラマもロマンもあるけれど、響きでいえばシェーンベルクの「浄夜」あたりのイメージかなぁと。ロマン派の延長線上だと、この時期なら、もう最も「保守的」であってもR.シュトラウスまで行ってしまいますし、ベルクやウェーベルンだって後期ロマン派の延長線上ですからね。そう、R.シュトラウスなら、「メタモルフォーゼン」あたりの感じなのかな。まぁ、そういう定義の仕方もいい加減過ぎて申し訳ないのではありますが、その程度には違和感なく、面白く聞けた、と言っていいのでしょうか。
 オーケストラに関して言えば、このデュティユーの方が良かったかなと。

 後半はモーツァルトのレクイエム。まぁ、これがほぼ目当てなのではありますが、これが色々仕込みが。
 まず、基本ジェスマイヤー補筆版、つまり概ね一般に演奏されるもの、と言いながら、ラクリモサだけはイギリスの作曲家マイケル・フィニッシーなる人の版を使うと。更に、終曲コンムニオの前に、リゲティが同じテキストで作曲した合唱曲のルクス・エテルナを挿入すると。で、どうなったか?
 率直に言うと、合唱はリゲティをメインに据えてただろ?と言う感じ。リゲティは見事でした。調性ももはやなく、声部も恐らくはもう4声でないような、和声という概念ではなくて各人の声を響き合わせて響きを作り上げていく。もう何歌ってるかなんて定かではない。風呂場どころか風呂桶に蓋した中に潜り込んで聞いてるような響き過ぎのミューザ(....悪口ですよ?)には確かに向いている曲です。なるほどまぁ面白い。このリゲティは成功だったと思います。
 では、レクイエムは?ちょっとね。

 最大の問題は合唱かなと。合唱は明らかにリゲティに力入れていたと思います。まぁ、気持ちはわかる。だけれども、それかあらぬか、レクイエムの方は、どうも。いつもの悪い癖の「歌い切らない」のが出てるんですよね。なんでこうなってしまうのか。誰も指摘しないんでしょうか。
 一つ問題としてあるだろうなと思うのは、古楽器演奏スタイルの悪い癖とその間違った理解のされ方が蔓延ってるというのがあると思うのですね。未だに。やたらとレガートにしない。音をはっきり切る。こういうスタイルが古楽器演奏として蔓延して、未だにそれをそういうものだと思っている人も多いのかも知れません。そして、声楽も同じ様にすればいいのだ、というような。でも、「レガートでない」というのは「音符を音価通り全部演奏せずに終わらせる」ではないのです。で、そうすることで、はっきりさせているように音的には聞こえるから、なんとなくそんな感じでやってるんじゃないかと思うのです。そう言うと、いやそんな風には思ってない、と言われるかも知れませんが、やはり、音価通り歌い切ってないと思うのですよ。はっきり切れてしまう。こういうの凄く気持ち悪いんですけれどね。この辺はオーケストラでも同じなんですけれども。ただ、オケの場合は、ミューザのようなホールだと誤魔化しが効く。否、むしろ、よく鳴らすことが出来るのであれば、若干抑え気味にすることで、響き過ぎて濁るのを回避する、という言い訳は出来ます。でも、そもそも音価通りやり切らない方がおかしいんですよ。そして、今日の総勢2〜30人くらいの合唱なら、そんな心配しなくてもいい。ちゃんと歌え。まぁ、リゲティに注力し過ぎちゃったのかなとは思いますが、でも、これ、基本的なことなのでね。なんでこんな当たり前のことちゃんと言わないんだろうね、みんな.........というか聞き取れてないのかな。

 もう一つは、ラクリモサ。前述の通り、これはジェスマイヤー版ではないそうなのですが、気のせいか、聞いていて、微妙にテンポが揺れるというか、「なんか変」なのですね。普通にジェスマイヤー版をきちんとやってる場合、このラクリモサはテンポを揺らすことはなく、粛々と演奏されると思います。それでなくても、作曲の経緯も含めて劇的な曲ですから、余計なことをしない方がいい。のに、なんというか、ルバートしてるような感じなのですね。流石に演奏が変というより、そういう風に編まれてるんじゃないかと思うのですが、どうなんだろう。
 独唱は4人中3人までが代役ということで、とはいえ割と早くから準備している - 少なくともプログラムに書ける程度には - ので、あまり点を甘くする必要もないとは思いますが、まぁ、こんなものでしょう。あまりいいなと思った部分はないですが、正直、合唱が気持ち悪くて、それどころではなかったのでね。
 オケも同じく。なんか気持ち悪いなぁというのが先に立って、細かいことは、でも、言えば、デュティユーの方が良かったかな、やっぱり。編成もそちらに比べれば縮小しているし、それほど違和感はなかったけれど、ね。

 なんというか、メインの筈の音楽がむしろ後景に退いてしまって、デュティユーとリゲティを聞いてきたような気分です。そうじゃねえよなぁ、とは思うんだけれども、まぁ、こういうことも、あるよね。





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最終更新日  2021年10月25日 00時09分26秒
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