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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン& オペラとクラシックコンサート通いのblog

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2024年01月14日
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カテゴリ:クラシック


みなとみらいホール 14:00〜
 1階右側

 ベリオ:水のクラヴィーア
 ショパン:24の前奏曲 op.28
 シューマン:クライスレリアーナ op.16
 バルトーク:戸外にて Sz.81/BB 89
 <アンコール>
 バルトーク:3つのチーク県の民謡
 ガーシュイン(ワイルド編):アイ・ガット・リズム

 ピアノ:阪田知樹

 順序は前後するけれど、ニューイヤー系のコンサートの前にこちらも。

 率直に言って、最近の日本人若手ピアニスト、反田恭平を筆頭にその辺の連中にはあまり付き合う気が起きません。ようつべとかで盛んに「発信」したりして、ビッグマウスなので露出は多いようだけれど、別にこちらが時間を割いて付き合う程の面白さはなさそうだし。
 なので、基本的にあまり聞きに行く気は起きないのですが、にも関わらず足を運んだのは、まずもって暇だったところに、そこそこの割引チケットが出ていた。そして演目です。バルトークの「戸外にて」が一番のお目当て。ベリオはともかく、どれもそれほど珍しくはないといえば珍しくないけれど、この中で昨今割とプログラムに組まれるのはクライスレリアーナくらいじゃないでしょうか。24の前奏曲は勿論よく知られているけれど、リサイタルで組まれるのはあまり多くない。そして、戸外にては、知られてはいるだろうけれど、そんなには聞けない。正直、日本の若手ピアニストが組む演目としては、渋い。

 実際行ってみると、客の入りはあまりよくなくて、3階席とか多分ガラガラだったでしょう。2階席もどうだったんだろう。全体としても半分入ってたかな、どうだろう、という感じ。1階は空席は結構あるとはいえそれなりに埋まっていましたが。まぁ、それだから割引チケットも出たのでしょうけれども。

 で、演奏はというと、これが思いの外よかった。この人がどういう露出の仕方をしているのかはよく知りませんが、少なくともプロフィールにはやれようつべがどうしたのインスタがどうのなんて書いてないので、そこを主戦場と思っている訳ではないのでしょう。やってるかどうかは知りませんが。演奏で勝負する、まぁ、古いタイプといえば古いのかも知れませんが、そういうことなのかも。だからいい、って言ってる訳ではないですよ。

 前半はベリオとショパン。ベリオの曲はよく知らなくて、ふーん、と思って聞いているうちにあっけなく終わってしまって、あら?という感じ。なのでよく分かってません。音は綺麗でしたね。曲としても、演奏としても。
 で、そのまま席を立たずに24の前奏曲。
 24の前奏曲としてリサイタルで聞くのは、いつ以来だろう。小山実稚恵がオーチャードのシリーズの中でやっていたと思いますが、そのほかではあまり聞かない。正直、あまり「映え」ないんですよね。全曲、みたいにしてやるなら、練習曲なんかの方がむしろ賑やかだし。オール・ショパン・プログラムとしても、前奏曲集は知られている割に地味だし。いろんな要素が入っていて、面白くはあるけれど、あまりリサイタルではやらないんですよね。
 でも実際にこうやって聞いてみると、いわばショパンのショーウィンドウのようなもので、色々な相貌が次々と立ち現れるので面白い。この日の演奏もそれぞれの性格を表して、かつ全体としては端正な演奏で、飽きることがない。

 後半はクライスレリアーナと戸外にて。まぁ、クライスレリアーナは、曲としては好きな人は好きなのだろうけれど、私はそれほど好きではないので....いい演奏ではあったと思います。
 戸外にて。これが個人的にはお目当て。殊に第4曲の「夜の音楽」は、嘗て吉田秀和が「私の好きな曲」という連載で紹介した文章があって、これが素晴らしい内容なので是非一読願いたい、というのはまぁ私じゃうまく説明出来ないので、というところなのだけれども、他の4曲が人間の音で作られているのに対して、これは夜の戸外で聞こえてくる音、人間ならざるものたちの音 - といっても妖怪の類ではなくて自然界の音なのですけれども - をピアノ曲にしたようなもの、と言えばわかるでしょうか。まぁ、一度誰かの演奏で聞いて下さい。といっても録音も決して多くない。まして生演奏ではなかなか。なのでこれを楽しみにしていたのですが、これがとても良かった。
 人間ならざるものの音、自然界の音、と言ったけれども、そもそもそういう環境というのは本当になくなってしまった。私が子供の頃、もう40年以上前ですけれども、その頃は田舎に行けば夜はTVを消せばかなり自然の音が聞けたけれども、今はもう難しいかも知れない。いや、聞けるところはまだ沢山あるんだと思うのですけれども、それなりに頑張らないとそういう環境には身を置けないのでは。そういう情景を鮮やかに描き出した曲なのですが、それをまた見事に具現化してみせた。実際にそういう場に身を置いて、耳を研ぎ澄まして聞き入った経験があるのではないかと思わせる、そういう演奏でした。
 アンコール前のMCでも話していましたが、バルトークが好きらしく、なるほど。
 敢えて何か言うとすれば、アンコール、アイ・ガット・リズムは、演奏は悪くないですけれども、うーん。どうせならもっと他のもの聞きたかったかな。まぁ、好きなもの弾くのがアンコールってものですからね、いいんですけれどもね。
 正直、期待せずに出掛けただけに、大いに満足して帰って来たのでした。





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最終更新日  2024年01月14日 23時23分15秒
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