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テーマ:イタリアワイン大好き!(738)
カテゴリ:トスカーナ州のワイン
イタリアワインスクール「ヴィーテ」の上級編3回シリーズ
「トスカーナワイン」 の最後を飾るのは 「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」 です。 最初に同じワイナリーの異なったヴィンテージでテイスティングを するいわゆる「縦型テイスティング」「ヴァーティカルテイスティング」 を行いました。 ![]() コッレルチェート社03年。 女性オーナーが手がける超小規模ワイナリーですね。外来資本が 多くなる中、200年間葡萄を耕作し続けた生粋のモンタルチーノ人 が手がけるブルネッロです。 熟成5年が規定ですから、現在の最新ヴィンテージが2003年と ということになります。 色はルビー色でオレンジの反射が軽く見られます。 香りはプラムから赤い果実。甘さはありますが「煮詰めたもの」 まで行かず、心地よい甘さを感じさせる香りです。 バニラ、そして花の香り、ミネラル→磯の香りがしますが 「磯自慢」までは行きません。 味わいは、酸がやや強く感じられますが、ブルネッロの最新 ヴィンテージにしては丸みがある印象です。タンニンは 細やかで非常に素晴らしい。シルクのようなタンニン。 酸、タンニン、アルコール・・・この三位一体のバランスと 一体感にはまだ物足りなさを感じます。余韻に戻って来る 香りもフルーツ一本で、深みに欠けます。 後味に「バナナの香り」という意見が出たくらいで、やや シンプルな感じのブルネッロです。 次は00年です。 ![]() 凝縮したルビーでオレンジの反射。 03という灼熱のヴィンテージで非常に優しい色合いを 持っていたので「おや?」と思ったのですが、00年の 凝縮感を見て、溜飲を下げました(^^;)いえ、これも ワイナリーのスタイルなんでしょう。 ちなみに00と03はヴィンテージチャートとしては 「並」の評価が与えられた年です。 ですが、その「並」にも雨の多かった年なのか、太陽が 強すぎた年なのか、豊作だから「良」の年なのか、量を 取らなかったから「良」をキープできた年なのか、あるいは その他どういうニュアンスがあったヴィンテージなのかと いう詳しい表記は、普通知ることができません。 そういうニュアンスを知らずして、チャートを鵜呑みに するのは馬鹿げたことです。 2000年のモンタルチーノ村は、春に雨多く、6月から7月 上旬まで高い気温が続き、8月中旬までは涼しい気候、 8月中旬から灼熱の気候が続いて、降雨量は少な目。 葡萄にはややストレスが過ぎた年。チャートでは3つ☆。 2003年は、冬が厳しく長かったために発芽が遅れ 新芽を4月8日の大雨でやられ被害が多く、その上、 その後収穫後まで雨が一滴も降らなかったという年・・・。 文字通り雨の不足した極めてバランスの悪い年・・・。3つ☆。 同じ三ッ星でも中身がぜんぜん違います。 さて、この00年。 色は非常に凝縮していて、ガーネットのニュアンスが出て います。 03に比べて深みのある色、凝縮感がしっかりと出ている。 やや殺虫剤的な香りが全体を覆っていて霧が晴れるまで 時間がかかると思いました。 (約一時間後、驚くほど甘く、ジャムのような果実香に 昇華 していましたが) 味わいにも凝縮感があり、ここにもモダンなスタイルが 窺い知れます。酸がややへたった感じがあり、その上 タンニンの力強さにもいまひとつパワーがないので味わいの 放物線の下降線に入ったワインかと思いました。 問題ありか、と思いました。 次の2本は、95年ヴィンテージの水平テイスティング。 すなわち、同じ年代の生産者違いのものです。とはいえ ノーマルとリセルヴァになるので厳密には「水平」とは いえませんが。 ![]() 200近いブルネッロの生産社の中にあって、その全生産量の 10分の1はこのワイナリーが作っている(^^;) アメリカ系ワイナリー「バンフィ」。厳密に言えば イタロ・アメリカーノ・・・・イタリア移民系のアメリカ人 ワイン商の興した会社ですね。 なので、スタイルはインターナショナル&モダン!バシバシの バリック!と思いきや、バンフィはそのような安っぽい ワイナリーなどではありません。 フレンチオークと大樽の使い分けをきちっとするという イメージがありますが、ヴィンテージは95!いわば 「モダン=フレンチオーク=流行の最先端=イケイケ!!」 の年代に作られたワインですから、スタイル的にはもっとも 先鋭的なモダンスタイルが滲み出るだろうと思っていたの ですが・・・ 結果は・・・やや熟成状態に難があったと思わざるを得ない。 色は完全にガーネット、かなり凝縮した色合いです。 香りは圧倒的な酸化香です。奈良漬と梅干の紫蘇。 そこにブラックベリー、ブラックチェリー、レザー、肉 滴る血・・・レアに焼いたステーキ。スモーク、シガーの ニュアンス・・・ こう書くと随分良い匂いに感じられますが、実はほとんど 全体が酸化香にやられた感じがしました。ん~~~残念! 口の中でもアロマの酸化香が気になります。でも、甘み 酸、タンニンのプロットは崩れています。色で見せて 香りでやや衰えて、味わいで完全に下降していく。 デクレッシェンドなワインです。 僕はバンフィのブルネッロ、もともと好きなだけに期待して いましたけど、非常に残念でした。 ともあれ1995年、13年前のワイン・・・こういうことも 起こります。 ![]() バンフィとは対照的に活き活きとしたルビーを呈しています。 明るさがあり、ガーネットのニュアンスも見え隠れしますが 全体的にはまだまだ若々しい。いっぱしのブルネッロが まともな熟成状態を経ていれば、13年前とはいえ、これぐらいで 驚いたりはしません。 香りは赤い果実。とてもフルーティーでスパイスも感じるも 全体がフルーツでまとまっています。リセルヴァとしても 95というヴィンテージからもやや物足りなさを感じますが まだまだ時間を楽しまなければ。 味わいはふくよかで酸、タンニンともにパワフルにして 洗練されています。ここにもバンフィの時の味の凝縮は なく、非常にエレガント。 でも、時間とともにもっとも楽しい変化をしたのは、この ポッジョ・アル・ヴェントとコッレルチェート00でした。 次の2本は85年の水平テイスティングです! ![]() 凝縮感のないガーネット色。オレンジの幅が広く少し レンガ色のよう。 香りはドライフルーツ、プラムやアーモンド。そして 奈良漬。マデイラ香は顕著ですが、まだ強いレベルの ニュアンスにとどまっています。 口の中に入ったとたん、魔法にかかったのではないかと いうぐらに味わいの美しさにびっくりするというか うっとりするというか、恍惚感に囚われました。 酸とタンニンの剥がれ落ちた弱さを持ちながらも 依然として凛とした姿。同じく弾力を失いかけながらも ストラクチャーとの一体感を失うことなく保っている 美しいテクスチャー。 パワフルかつ奥深さと深遠なる宇宙を感じさせるブルネッロ 的世界の中で、このワインはすでに異次元に存在している ようにも見えました。 それは太陽に対する地球から、地球に対する月のような 存在に変化したような、ディメンションは小さくなり ながらもその美しさもまったく落とすことなく、保持し ながら、小宇宙にメタモルフォーズしたような不思議な 感覚でした。こういう体験は初めてでした。 最後のワインはこれです。 ![]() 小規模生産の家族ワイナリー「カプリーリ」。コル・ドルチャや バンフィなどの大規模生産者と違う点は、昔ながらの ブルネッロを手がけ続けているという点です。 つまり大樽のみの熟成です。 色は薄いガーネット色。コル・ドルチ85との色の差は ほとんどないように思われました。 香りは、まず不思議な野菜の香り。アスパラやなんらかの 混載を最初に感じました。 そこにタール、レザー、シガー 香りの複雑性とその個性ではコル・ドルチャ85を凌駕して おりました。 味わいも同じく、大らかでダイナミックな味わいというより は、小さくまとまったイメージのほうが強かったですが パワフルなワインが23年後にこれほどまでにまろやかに そして複雑に、日常の香りの世界からあまりにも遠い トリップに誘ってくれるのです。 ワイン世界の楽しさのもっとも尊く、貴重で、高貴なもの を体験できた充実感に浸りました。 参加くださった皆様、そしてロスコの笹山さんに感謝 いたします。 ![]() それと、このテイスティングの後、番外編で講座参加者の Yさんより差し入れのスペシャルワインを皆でご馳走に なりました。Yさん、いつも本当にありがとう!! なんとそれはこのワインのヴィンテージ95なんです! ![]() ビオンディ・サンティ(テヌータ・グレッポ) ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ [2001] 赤 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生みの親のワインです。 価格も尋常ではありません(^^;) 状態も良く、さすがビオンディ・サンティ!!と思えるほどに フレッシュ感がまだ濃厚に詰まった感じがしました。 スタートラインは同じモンタルチーノ村。 そこに時間と熟成が加わることによって、まったく違った世界を 見せてくれたワインたちでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/12/15 11:38:34 AM
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