医療もビジネスであり、利益がでないと潰れます。
医療機関は収入のほとんどを保険医療で得ていますので、事実上は診療報酬を決めている厚生労働省が経営者です。
医療財政が破綻レベルなのは、制度的に疲弊しているわけですが、自己負担アップ、診療報酬ダウンと根本的な対策を先送りしていますので、病院の7割が赤字だそうです。
何とか赤字を少なくするために過剰な検査をしているのでしょうか。
予防に勝る治療なしですので、病気予防に勤しみましょう。
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◆人間ドックの検査結果を手に話すA子さん。今も年1回の検査を受けているが、すい臓ののう胞に変化はない
「つい2か月前に同じ検査をしました。なぜ必要か教えていただけませんか」
一昨年2月初め、埼玉県の主婦A子さん(60)は、大学病院の検査室に入る寸前、勇気を出して看護師に聞いた。
前年の夏、人間ドックで超音波検査をし、「すい臓に、1センチののう胞(水の入った袋)がある」と言われた。詳しく調べるため、8月、同じ病院で、胸から腹にかけてCT(コンピューター断層撮影法)検査を受けた。検査後、「(がんなど)悪いものではありません」と説明された。
その3か月後の11月末にも同じ検査をした。今回受ければ、半年で3回目になる。CTによる度重なる被ばくで、健康への悪影響はないか。しかも毎回、MRI(磁気共鳴画像)検査もしている。なぜそんなに検査が必要なのか。
看護師への質問が医師に伝わり、A子さんは診察室に呼び戻された。医師は一言「CT検査はやめましょう」とだけ言った。
すい臓ののう胞は、まれに大きくなり手術が必要になるが、1センチほどなら通常は年1回の検査で十分で、放射線を使わない超音波かMRIで変化がわかるという。医師がいとも簡単に検査を撤回したため、A子さんは「やらなくてもいい検査だったのでしょうか」と割り切れない気持ちだ。
日本で75歳までに、がんになる人のうち、3・2%は放射線検査による被ばくが原因と推定される――。今年1月、英国の医学雑誌に掲載された報告は、大きな反響を呼んだ。
日本や米英など15か国の放射線検査の件数や、臓器ごとの推定被ばく量などから、発がん率を推定したところ、日本は他の14か国(0・6―1・8%)に比べ突出して高かった。
放射線で遺伝子が傷つくことで、一部の細胞が、がん化するといわれる。この報告での推定値は、微量の放射線にも発がんの危険がある、との仮説を基に算出された。ただ、一定量以上の放射線を浴びた広島・長崎の被爆者に、がんが増えたとのデータはあるが、診断で浴びる微量の放射線で発がんするかどうかは、科学的には未解明だ。
大阪大大学院放射線医学教授の中村仁信(ひろのぶ)さんは「重要なのは推定値ではなく、日本の放射線検査件数と被ばく量が飛び抜けて多いことだ。医療現場では不必要と思われる検査もあり、検査のあり方に警鐘を鳴らした」と指摘する。
日本医学放射線学会は、中村さんを中心に、過剰な検査を防ぐための対策に乗り出した。
◆現代医療に欠かせない放射線診断や治療。普及に伴い増え続ける患者の被ばくについて考える。
CT:様々な角度からエックス線をあてて輪切りの画像を作る装置。国内では約1万台が稼働し、人口あたりの台数、検査件数とも世界一。2000年の国内のCT検査数は推定3655万件で、約10年前の3倍に増えた。1回あたりの被ばく量は、胸部では通常のエックス線撮影の400枚分に相当する。
(出典:読売新聞)
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