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カテゴリ:ハーバード経済日誌
論文・ペーパーの書き方
英語の速読法に続いて、英語の論文・ペーパーの書き方についても触れておこう。 一番陥りやすい悪い論文・ペーパーの例は、イントロダクションでこれから書くことについて書き、本論に入ってイントロで触れたことについて書き、結論部分ではこれまで書いたことをまとめる、といったパターンだ。これでは何も言っていないに等しい。 一言でイントロといっても、ただ漠然とこれから書くことを紹介すればいいというものではない。まずイントロでは、なぜこのテーマを撰んだのかといったテーマの意義付けのほか、必ずその論文の主題を書くことになっている。論文の主題はイントロの最後に来る場合が多い(昨日の速読法2を参照してください)。 具体的に言うと、たとえばブッシュ大統領の問題点を論文のテーマに取り上げた場合、ブッシュの愚かな言動がいかに世界に影響を与えるかと言った意義付けを最初のパラグラフで書く。そしてイントロの締めとしては「ブッシュは史上最悪・最低の米大統領である」とか「ブッシュほど頭の悪い大統領は今後人類には誕生しないだろう」とかいった主題が必要になるのだ。 主題は主張のあるセンテンス(文章)でなければならない。「ブッシュの大統領としての器について書く」とか「ブッシュとキリスト教原理主義について書く」といったような主張のない文章ではいけない。だから何なのかまで踏み込まないと主題のセンテンスを書いたことにはならない。たとえば「ブッシュの狭量さが、人類を危険な世界へと導いている」とか「ブッシュの狂信的な言動の源は、キリスト教原理主義から来ている」といった趣旨の主張を明確にするわけだ(必ずしも断定的に書く必要はない)。 ボディの部分(つまりイントロ後の本論の部分)では、イントロで挙げた主題に向かって、具体的な論述を展開する。ブッシュがいかに無能で邪悪であるか、いかに地球にとって危険な人物であるかを具体的な例を挙げて説明するのは、そう難しいことではないだろう。ブッシュの無能、邪悪ぶりを分析・分類しながら話を進める手もある。ブッシュの無能、邪悪ぶりを生い立ちなど歴史的観点から論ずるのもいいだろう。 しかし、ここで気をつけなければいけないのは、一方的にブッシュを批判するだけでは論文は成り立たないということだ。必ず、カウンター・アーギュメント(つまり反論)を想定した部分が求められる。自分の主張とは異なる意見を紹介し、それについて論駁することが求められるのだ。たとえば、ブッシュはまれにみるバカだが、そのバカさ加減がなければ、リビアのカダフィ大佐は核開発計画を放棄しなかっただろう、とか、ブッシュの戦争主義のおかげで中東に民主化が進むのだといった自分とは異なる意見を紹介したうえで、それがいかに事実と違った評価であるかを、実例を挙げながら論駁していくのだ。 こうしてボディ部分が終われば、いよいよ結論部分である。これはあくまでも一例だが、イントロで示した主題がいかに正当な主張であったかを別の観点から論じる。たとえば「このように地球にとって危険な人物をこのまま放置しておくと、テロは根絶どころかますます増え、温暖化はますます進み、地球の住民は恐怖におののくことになるだろう」といった今後の展開について触れるのもいい。歴史を遡り、ブッシュのようなやり方がいかに悲劇を招くかなどに言及するのもいい。最後に、自分が選んだ主題の広がりを示して終わる。 英語で書く論文の大体の構成は以上のとおりだ。では私自身は、いい論文を書いていたのかと聞かれれば、時々できの悪い論文・ペーパーを書いていたことは認めざるをえない。ケネディ・スクールではAは一度しか取れなかった。それも報道記者出身のマービン・カルブ教授のメディア論だけ。つまり、新聞記者を14年も経験した学生ならAを取るのは当たり前といえば当たり前のテーマだった。他の授業に関して言えば、Aマイナスが多く、Bプラスのペーパーもあった。 明日はその成績について書きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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