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カテゴリ:小説・日本
不思議な力を持つ“常野(とこの)”一族の者達を描いた短編集です。
『エンド・ゲーム』を読もうと思ったら、これが“常野シリーズ”の三作目だと分かりまして・・・。 “三月シリーズ”で、これだけで楽しめますと言う風には出来てなくて、順番通り読まないと「えっと・・・?。」になると言う事は経験済みなので、この『光の帝国』から読むことにしましした。 集英社さんが常野だよりと言うHPを作っているのは親切。 恩田先生はたぷんジャンルなどというものは意識しないで書かれている作家さんなんじゃないかと思います。 私は『ネバーランド』『夜のピクニック』『蛇行する川のほとり』みたいな作品が好きなんですが、何となくホラーの雰囲気が紛れ込んでいる。 逆に一般的にSF、ホラーと呼ばれるジャンルの作品には、上であげた作品が持つ雰囲気があります。 この境界線がないところが、恩田作品の魅力の一つだと思います。 もう一つ、例えばSF、ホラーかな?と言うジャンルを書かれてる場合、そこに出てくるアイディア自体は目新しいものではないし、凄いと感じるものじゃない。 けれどそこから“恩田ワールド”と言う物を描き出している。 他の作品とは明らかに違う、この“恩田ワールド”にひたることこそ、恩田作品を読む楽しさだと思います。 例えばこの『光の帝国』では膨大な書物を覚える事を“しまう”、それが頭の中で意味ある物として浮かぶ様を“響く”、しまいこんだ情報を整理して引き出しやすくする為に眠ることを“虫干し”と言う言葉を使って世界を作り出してます。(「大きな引き出し」から) 常野と言う一族の、それぞれ違った能力をもった人たちを描いた短編連作です。 実にバラエティーに富んだ能力の出方をする人たちだなぁと思います。 その能力を使って表舞台に出ようと言うのではなく、あくまで一般の人々の中で生きていこう、と言うのが良いなぁ。 亜希子と言う常野一族の女性がいるんですが、彼女は赤ちゃんの時に両親を失い一般の人に引き取られたので、能力が封印されているんですね。 その彼女が自分の能力に目覚めて行くシーンの描写が良いです。(「黒の塔」) 亜希子と紀実子(亜希子に寄り添って能力が目覚めるのをそれとなく手助けした女性)の長編が読みたいなぁ。 「オセロ・ゲーム」が『エンド・ゲーム』の元になる作品のようですが、これはSF、ホラー色の濃い作品。 『月の裏側』を思い出しました、こうゾワゾワっとする感じが。 表題にもなっている「光の帝国」は哀しい物語ですが、それを受けての最後の「国道を降りて・・・」が未来を感じさせて好きです。 やっぱりハッピーエンドが良いなぁ・・・なんて。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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