どこまで本当か
ジャーナリストの櫻井よしこ女史は大の中国嫌いである(笑)。女史は、週刊ダイヤモンドの「オピニオン・縦横無尽」を毎週書いているが、何週かに一度は中国批判が登場する。2月4日号のテーマは、「人間としての情を封殺する中国共産党の支配体制」だった。私は全く知らなかったのだが、去年の10月に広東省の仏山市で2歳の女児が引き逃げされるという事件があったらしい。ひき逃げ自体は日本でも起こることだ。だが、恐ろしいのは、瀕死の女児に気づきながら何と18人が無視して通り過ぎたという点である。なぜそんなことが起こるのか。理由を探るため、櫻井氏はおよそ5年前の「老女事件」についても言及している。バス停で倒れていた老女を若者が助けたところ、「お前が私を突き倒した」と言って医療費を請求されたという事件である。若者はもちろん納得しなかったため、事は裁判に発展し、結局治療費の4割を払わされることになった。その事件を調査した福島香織という日本人のフリー記者によると、若者の裁判の中では「無実である」という目撃証言まであったのにもかかわらず、「罪の意識もないのに無関係の人を助けるわけがない」という理由で4割の支払いが決まったというのである。こんなニュースが中国全土に広まれば、だれもが「他人など助けるものではない」と考えてしまうのは当然だろう。福島記者の文章を読んで、「中国では善意を善意として受け止める精神風土がない。純粋な善意など彼らは信じない。善意の裏には魂胆や企み、贖罪意識があると、彼らは考えて疑わない」と櫻井氏は結論づけている。福島記者も「中国社会では善意や良心を持っていたら生き残れない。それくらい厳しい社会なのです」と語っている。これは、どこまで信用していい話なのだろうか。事件が起こったことまでか、裁判までか、あるいは書かれている内容すべてが本当なのか。福島記者の報告全体がまちがいなく真実だとすれば、極めて恐ろしいことだ。私は海外といえば豪国にしか行ったことがないのだが、将来旅行をする余裕ができたとしても、すぐ近くにある中国を避けたくなってしまう。しかしながら、自分としては信じたくない気持ちの方が強い。いや、特に中国嫌いでない日本人なら皆そう感じるだろう。「ふざけた話である。中国の人たちはもっと素直でいい人ばかりだ」と憤慨する中国通の方がここをお読みなら、是非とも反論コメントを付けて戴きたいところである。