フィリピン1日目
1日目は午後2時頃にマニラ空港に到着後、すぐにプリラン市へ向かった。マニラは車の数が本当に多い国で、常に交通渋滞が発生する。空港からプリランは距離にすると60km弱なのに、直行しても3時間以上かかるのである。日本では、お盆や正月休みの帰省ラッシュ以外には信じられない話だ。途中休憩も挟んだので、結局プリラン市のホテルに着いたときには午後5時半を回っていた。そこからプリラン・ダイヤモンドロータリークラブの初代会長宅へ赴く。少々休み時間があり、ホテルで寝入ってしまった人がいたため、約束の時間に10分以上遅れることになった(笑)。私としてはほとんど将来の友好関係を築く準備をするためだけにプリランダイヤモンドRCを訪問するつもりだった。自己紹介後、会長が挨拶をしたらその話題に入ろうと思っていた。ところがそれぞれの簡単な自己紹介の後、何やらレジュメのような物が私たちの前に配られる。そして相手方の会長が、いきなり2つの小学校の修繕工事の話をし始めた。2つのレジュメの最後の部分にはそれぞれの修繕費の見積書まで添付してある。つまり、やるべきことはすでに事細かに調べていて、いくらかかるかまで計算していたのだ。これには面食らってしまった。そこまで具体的な話ができているなどとは露とも知らなかった。そのため、どう対応したらよいかを考えるのにかなり時間がかかった。ただ、二つの学校の修繕費の総額は41,794フィリピンペソである。これは日本円にすると約88,600円にしかならない。ところがプリランダイヤモンドRCは、学校だけでなくリハビリセンターなど、大人用・老人用の施設にもすでに出費していた。特に緊急に必要な修理などを優先し、そちらに集められるだけのお金をつぎ込んでしまったので、すでに資金が尽きているのである。一つ一つは少額だが、積もり積もってかなりの金額になっていたわけだ。この「残りの」金額を見た我々は正直、簡単に出せると感じた。なにせ、フィリピンを訪れた会員5人がそれぞれ善意で18,000円弱を置いてくれば、その場で賄える金額なのである。ところが、そんな勝手なことをしてしまっては我々のロータリークラブが許さない。会長も同行しているのだが、会長の一存で物事を決められるような単純な組織ではないのだ。我々のクラブでは、あくまでも毎月第一週の木曜日に行われる理事会の承認を得なければ、物事を決められない仕組みになっている。もっとも、理事会とはいっても、会員54人中20人が出席義務がある会議である。会員の多数意見がその場に表れると言ってもよい。日本円でいいのなら今すぐにでも出してやりたい金額だが、そうはいかない。その気持ちをぐっと堪え、先方の会員に見られているまま、もちろん彼女らが理解できない日本語でだが、数分間5人で話し合った。「出してやってから理事会にかければいいくらいの金額ではないか?」「有志を募る形でも、これくらいの金額は絶対に集まるから、 有志を募っていいかどうかを理事会にかければ良い」「どうしても集まらなければ我々がそれをかぶればいいだけの話だ」寄付に肯定的な意見がすべてだったので、1分もかからずに決まりそうである。ところが、「友好クラブや姉妹クラブの話題も出さないほうがよい」というくらいの慎重派の会員もいる。いざ友好関係を結ぶと、出費が増える可能性があるからだ。そんな理由もあり、勢い付く他の4人の意見に対して、私がブレーキをかける役目に回った(笑)。ただ、最後に会長と元会長が声をそろえて「有志の応募が理事会を通らないことはおそらく無い。 応募が理事会さえ通れば、足りない分は私たちが負担すればいいだけだ。 今ここで、期待に答えられるという返事をしてもOKである」という内容の意見を言った。そこで私は、簡単でありながら尚かつかっこいい英語のセリフを使うことにした。The president said, and the past president also said, “We promise you.”youの後にthisなどの直接目的語を置くのが普通だが、あえて置かなかったのはpromiseの意味をほんの少しでも強調するためである(笑)。理事会は来月の7日まで待たないと開かれない。この金額でそこまで相手を待たせるのも本当は気が引けるが、当クラブのルールなので仕方がないことである。若干心残りではあったが、その後パソコンや自転車を寄付できる可能性がどの程度あるかなどを話し合い、両クラブ間での正式な会議を終えた。その後、彼らが用意してくれた非常に美味しい夕食を戴く。それらを食べた瞬間、「フィリピン料理は日本人の口に合う」と私は感じた。とりあえずの結論が出たことと食事の美味しさのお陰で幸せな心持ちになった(笑)。こうして、満足感を味わいながらプリランダイヤモンドRC訪問の初日を終えることができた。