栃木県立高校入試問題(数学)
最近はこちらから声をかけなくても試験の帰りに塾によって問題を置いていってくれる生徒がいる。非常にありがたいことだ。普通に仕事があったので今日は数学しか問題を解いていないが、とりあえず感想を数学だけ書いておくことにする。最近では午後5時からとちぎテレビで解答速報をやっているようだ。だが、それを見る時間も私には無いから、模範解答はまだ知らない。もしも計算などを間違えていたら後で訂正することにしよう(笑)。一言でいうと、今年の数学はやりづらかった。特別難しいというわけではないのだが、明らかに昨年・一昨年よりもやりづらいと思う。小問すべてが素直な問題だったのは大問1だけではないだろうか。まず大問2の作図が気付くまでに時間がかかる。作図で焦ってしまった生徒がかなりいたと思う。点Aを中心に円周の反対側に円弧を描き、円周との交点を結んで弦を作る。その垂直二等分線と円周との交点が求める点Pになるのだろうが、もちろん、弦を任意の場所に2つ描き、それぞれの垂直二等分線を交わらせて円の中心を求める描き方でも正解である。だが、いずれにしろ正解者はさほど多くないと思われる。また、大問2の3も少しいやらしかった。「大問2の3が難しいときはスルーして次へ行け!」は口が酸っぱくなるほど生徒に指導した栃木の数学を解く際の鉄則である。ところが、次の大問3の1もまたいやらしいのだ。決して難しくはないのだが、見慣れないスタイルのためにどうやってとりかかったらいいかわからなかった生徒が多いと思う。さらに、大問3の2もそれほど簡単ではない。そもそも、空間図形の辺を延長するという問題には県立入試ではあまりお目にかかれない。大問3を終えた頃、「これはまずい」と感じた受検生が相当数いたと思われる。ただ、大問4の証明は素直だった。落ち着きを保てていれば、解けた生徒が多かっただろう。例年、最も恐ろしいのが大問4の2である。ここが難しかいために沈んでしまう数学のエキスパートが多々存在する。それでも、今年は「難しすぎず易しすぎず」というレベルだったのがありがたい。大問5。これも落ち着いて解けば難問というわけではない。特に、今年も1次関数の式を求める問題を出してくれたのは本当に助かった。私が教えた生徒は解答欄の最初におまじないの言葉を書く(笑)。そこから導かれる解き方もマスターしているので、間違いなくここの6~7点は取れる。小問2は新しい選択形式だった。ややまごついた生徒もいると思うが、定義域全体に対して面積のyをxの1次関数で表せていれば何とか解ける問題だ。問題は大問6である。ここは例年小問1と2は根性があれば誰にでも解ける問題だった。ところが今年は違う。問題文にある説明では、【操作】の仕方を正しく理解できない生徒が多いと思われる。私も一度読んだだけではわからなかった(笑)。困るのは、問題文の右に用意された図が理解の邪魔をすることだ。もともと大問6に来たときには残り時間は10分を切っている生徒が多いはずだ。焦っている生徒が多いので、操作法を図で直感的に判断する。はさみが紙の右側に3つも書かれていることから、「右の小さい正方形の方から切り始める」と判断する生徒がおそらく多いと思われる。実際、私に問題用紙を提供してくれた生徒が書き残した図を見ると、そう考えているように見えるのだ。小問1と小問2で5点なのか6点なのかはわからないが、ここでの無得点は非常に痛い。しかも、操作をきちんと理解していれば次の小問3は極めて易しい問題なのである。これは明らかに小問4のヒントを出すために置かれているのだろうが、いずれにしてもこの6点が取れないのは悔しい。その小問4は去年・一昨年と比べるとレベルが上がっていて、少し昔に戻った気がする。ただ、合計が5枚なので、正方形の大きい順に並べると(1,1,3)(1,2,2)(2,1,2)のいずれかの枚数の組み合わせになる。(2,2,1)などは当然ながらあり得ない。それぞれの組み合わせにおいてaの1次方程式が成り立ち、珍しくすっきり解ける。平成21年度の問題などでは最後に「x=15ー6n」という形になり、そこから自然数xとnの組み合わせを探さなければならなかったが、今年の場合はそれぞれの方程式を解けば、a=32cm, 40cm, 21cmになるはずだ。計算が違っていたら、明日訂正する(笑)。大問6を読んでいて感じたのは、3年後の大学入試に向けてすでに問題が改革され始めているのではないかということだ。「問題を正しく読み取れない生徒には小問1も解かせない」という厳しさを感じる。問題の意味を読み取るのもコミュニケーション能力だから、この方向性は間違ってはいない。それにしても、数学においてもこれからそういう傾向が強まっていくのなら、塾のテストなども在り方を変えなければならないだろう。我々にとっては面白いが、生徒達にとってはやりづらいテストがどんどん増えそうだ。※幸い計算は違っていなかったが、大問2の作図を勘違いしていた。 点Aとの距離が最も「短い」点を見つける問題かと思っていたのだが、 正しくは最も「長い」点だった(笑)。最も長い点であれば、 直径を思いつく生徒はけっこう多いだろうから、さほど難しいとは言えなくなる。 問題をきちんと読まないというのは本当に恐ろしいことである(笑)。